2012/02/14 特集

できるスタッフがグングン育つ!3ステップ人材育成法

アルバイトが一気に入れ替わる時期は、お店にとっては頭の痛い季節。だが発想を転換すれば新たにできるスタッフを育て、店舗力を高める絶好のチャンスとも言える。信頼し得る戦力になってもらうには、何が必要なのか?

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更新日:2022.8.3

目次
【STEP1】店側の準備を整える ~迎え入れる店側の理想的体制とは?~
【飲食店アンケート】人材採用・育成の実態(1)
【STEP2】やる気を引き出す ~モチベーションを上げるための教育法とは?~
【飲食店アンケート】人材採用・育成の実態(2)
【STEP3】チーム戦略を練る ~個人の力を最大限に生かす組織とは?~
【飲食店アンケート】人材採用・育成の実態(3)
【成功事例】サービスと評価の見える化が人を育てる
  ~株式会社サウスオーシャンズのスタッフ育成法~

 アルバイトが一気に入れ替わる時期は、お店にとっては頭の痛い季節。だが発想を転換すれば、新たにできるスタッフを育て、店舗力を高める絶好のチャンスとも言える。アルバイトスタッフに責任感を持たせ、信頼し得る戦力になってもらうには、何が必要なのか? まずは人材育成の達人であるコンサルタントにその基本を伺った。

株式会社アンドワークス 代表取締役社長 加藤雅彦 氏
1971年生まれ。中央学院大学卒。株式会社グローバルダイニング勤務を経て、2002 年、飲食店コンサルティング会社・株式会社アンドワークスを設立。現場経験を活かした「人の心」を育てる指導に定評があり、全国の飲食店を相手に意識・組織改革に取り組む。主な著書に「飲食店完全バイブル・接客の法則50」(日経BP社)などがある。

【STEP1】店側の準備を整える ~迎え入れる店側の理想的体制とは?~

①ウェルカムの姿勢

新人の能力を引き出すには初日の印象が何より大切!

 新人アルバイトさんを「仕事のできるスタッフ」に育てられるかどうか。その成否は初日にかかっています。大切なのは、お店側の受け入れ体制をしっかり整えておくこと。初めて職場に出勤する日は、誰でも緊張するものです。そこですかさず、「私たちは新しい仲間を歓迎しています!」というウェルカムのメッセージを発信する。まず、求められているという安心感を抱いてもらうことで、仕事へのモチベーションも高まり、いろいろな事柄をのびのび吸収する素地が作られます。問題はお店側のウェルカム姿勢をどう表現するかです。

 まず注意すべきは、「今日から新しいスタッフが入る」という情報を、店長やチーフクラスだけでなく、店舗全体で共有することでしょう。その人が出勤したら誰のところに行けばいいのか、前もってきちんと決めておく。よく、新人アルバイトが「あの人に聞いてみて」とたらい回しにされるパターンがありますが、それでは最初から不信感を与えてしまいますし、「ここの仕事はいい加減でOK」という悪い刷り込みにもなりかねません。

 そして、歓迎の気持ちを示すため、あらかじめ準備しておくべきものもチェックします。きちんと名前が書いてあるネームプレートや、清潔でサイズのあったユニフォーム、タイムカード、ロッカー、着替えの場所。これらをそろえておくだけで、スタートラインがまったく違ってきます。また、話をする際にこちらからメモ帳を渡してあげるのもいいでしょう。親切な印象を与えるのに加え、店側の真剣さをさりげなく伝える効果もあります。

②ハウスルールを作る

最も基本的な「約束事」を新人・ベテランの間で共有

 学校や職場ではそれぞれ校則、社則が定められているように、本来は飲食店も従業員が働く上で最低限守るべき指針を作っておくべきです。

 例えば、「礼儀・挨拶」「掃除の心得」など、サービス業の基本的な心構えから、「ユニフォームの着方」「ヘアスタイルや髪の長さ・爪」のような身だしなみ、「労働時間の設定」「ミーティングのルール」「まかない」「備品・食材の取り扱い」などの決まりごとまで。1つひとつは当たり前のことですが、これらをわかりやすく箇条書きにしておけば、何かあった場合にはスタッフはすぐ原則へと立ち返ることができます。とりわけ、右も左もわからない新人にとって、基本方針が示されている効果は小さくありません。

 私自身、コンサルティング業務の中でこの種の「ハウスルール」が新人育成に役立っている場面を何度も見てきました。重要なのはシンプルなものを目指すこと。すべての心得を盛り込もうとすると、膨大なマニュアルが出来上がってしまい、結局、読まれずに終わってしまうものです。また、規則で縛りすぎるとスタッフのやる気を削ぐ結果にもなりがちです。

 必ず入れるべき要素は、
(1)経営理念に関わる「この店で働く目的」
(2)職場における「具体的な心がけ」
(3)お客様の前での「身だしなみ」
(4)業務上の禁止事項
の4つ。それぞれについて10項目前後にまとめるのがコツです。ベテランから新人アルバイトまで、本当に大切な考え方を店全体で共有できるのが、ハウスルールの大きな利点。下は、弊社が経営している焼肉店「牛の蔵」の、ハウスルール「ホールスタッフの心がけ」11カ条です。どの項目もいわゆるスキルではなく、あくまで「意識」レベルでの約束事なのがおわかりいただけると思います。

「牛の蔵」ホールスタッフの心がけ11カ条

  1. すべての人に「笑顔、元気、愛嬌」を持って接しろ
  2. 常に感謝を忘れるな(注文時のありがとうございます、入店時のいらっしゃいませ、お帰りの際のありがとうございます)
  3. 蔵元を知り、蔵元の案内を必ず行え
  4. お客様とすれ違う時は、立ち止まって道を譲り、会釈をしろ
  5. お客様に聞かれる前にトイレの前までご案内してあげろ
  6. 常にお客様のテーブルの状況を意識し、お客様の表情に目を配り、商品提供のスピードを意識しろ
  7. お絞りは必ず交換しろ。食事のお茶、お冷、黒糖は必ず提供しろ
  8. 網の交換は言われる前に必ず行なえ
  9. 入口でのお客様のお出迎え、お見送りを徹底しろ(入口3歩、出口7歩)
  10. 多くのお客様の名前を覚え、フレンドリーに名前で呼びかけろ
  11. 自分の店を好きになれ

③オリエンテーションを実施

時間と手間を惜しまないで最初に向き合うことが重要

 スタッフをうまく育てられない店舗の共通点。その1つに、言葉は悪いですが、アルバイトさんを「消耗品」と見なしていることが挙げられます。

 よく見られるのが、出勤初日から何の説明もなく、すぐに仕事を振ってしまうというパターン。「わからないところは遠慮なく聞いてね」が決まり文句ですが、初出勤の人からすれば「何がわからないのかすら、わからない」というのが正直な気持ちでしょう。その状態で怒られると、お店側とのマインドギャップがどんどん広がり、文字どおり悪循環です。

 それを避けるためにも、最初の段階できちんと「オリエンテーション」を行なうことが重要。仕事内容を説明することで、新人の不安感も取り除けますし、「一緒に頑張ろう」というお店側の思いを伝える絶好のチャンスにもなります。

 では、具体的にはどんなプログラムを用意すべきか? 重要なのは全体を2つに分けて考えることです。まずは上で紹介した「ハウスルール」の説明。ここでは店の基本姿勢、何に重きを置いているかなど、スタッフが共有すべき目標を必ず伝えます。その上で日々の業務に必要な「オペレーションルール」の説明を行ないましょう。ホールやキッチンにおける仕事の流れを頭に入れてもらえれば、洗い物やバッシングなど、単純作業を任されても身の入り方が違ってきます。

 理想を言えば、初日と2日目に1時間ずつ。仕事に慣れてきた半月後くらいにもう2時間。最後に確認の意味も込めて、1カ月後に1~2時間。計5~6時間は費やしたいところです。教育係を務める店長やチーフにとって時間の捻出は大変かもしれませんが、最初に一人ひとりときちんと向き合っておけば、アルバイトの定着率や意識は驚くほど向上します。

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【飲食店アンケート】人材採用・育成の実態(1)

やはり、学生アルバイトの入れ替わり時期である1~3月が最多。10~12月は繁忙期を前にしたスタッフ増員の意味があるようだ。さらに、恒常的にスタッフ不足の飲食店が多いことも見て取れる。
経験やスキルよりも人柄を重視する人が圧倒的。欲しい曜日・時間に入れることも大事な要素のようだ。
スタッフの求人や教育について問題を感じている人は、実に50%以上。人材育成は、やはり飲食店にとって大きな問題であることがわかる。

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【STEP2】やる気を引き出す ~モチベーションを上げるための教育法とは?~

①逃さずほめる

小さな達成を見つけたらすかさずほめて伸ばそう

 お店のコンセプトや、基本的な仕事の流れを理解してもらった段階で、さらにやる気を引き出すにはどうすればよいのか。シンプルですが効果的なのは、やはりタイミングを逃さず、ほめてあげることです。内容は些細なことで構わない。自分の仕事を評価されて嬉しくない人はいません。例えば、笑顔で接客できている新人には、「うちはお客様が気持ちよく過ごしていただくことを一番大事にしているんだ。ありがとう」と声をかけてあげる。その人は1日目から成功体験が得られて、「もっと頑張ろう」という気持ちになるはずです。

 上手にほめるコツは、見つけたその場ですぐ口に出すこと。それも1度ではなく、何度も繰り返すのが重要です。どこをほめればいいかわからない場合は前項で挙げたハウスルールの「心がけ」を読み返してみましょう。新人でも必ず評価できるポイントが見えてくるはずです。

②明確な評価制度

誰の目にもはっきり見えるステップアップ制度を作る

 ほめるのと同時に、忘れてはいけない要素があります。それは目に見える形で成果を実感できる評価制度を作っておくことです。直接的なコミュニケーションはもちろん重要ですが、店長やチーフが新人スタッフの仕事を全部フォローすることは不可能。また、社員によってほめるポイントが違うと、かえって不満を抱くアルバイトも出てきます。そのためにも、「このお店ではこういう仕事ぶりを評価する」という誰にでもわかる基準を用意しておくことが大切です。

 人が働く動機には、「精神的な達成感」と「金銭的な報酬」という2つがあります。前者は、自分がこなせる仕事が増えて、職場でのポジションが上がること。後者は時給が上がることで満たされます。

 例えばホール担当の場合。最初はまず、バッシング(食器を下げる) から始めて、ランナー(料理・飲み物を運ぶ)、バー(ドリンクを作る)、そしてオーダー&サーブ(実際にお客様を受け持つ)などという風に、その人のスキルに応じてより高度な仕事を任せる仕組みを作っておく。その際、「空いたお皿やグラスを遅延なく下げられるようになったらバッシング完了」などの要領で、各ステップごとに明確な目標を設定することが不可欠です。マラソンと同じで、人はゴールが見えているからこそがんばれる。それを具体的に示すことで、スタッフの中に「早く認められて次のポジションへと進みたい!」という気持ちが芽生えます。

 さらに、ポジションと連動して時給も上がる仕組みを作れればベストでしょう。たとえ上げ幅が小さくても、「メンタルの満足感」と「金銭的な評価」をうまく連動させることで、新人スタッフのモチベーションをさらに高めることができます。

③定期的なミーティング・ロールプレイング

スタッフの問題点をいち早く発見、繰り返し練習でスキルを高める

 お店を繁盛させる秘訣の1つに、毎日ミーティングの時間を設けることがあります。朝礼・終礼など、やり方は何でも構いません。店が抱えている課題や目標などをスタッフ全員で共有し、そのために自分が何をすべきかを考える場を設けることが大切なのです。

 私の経験から見ても、ミーティングを定期的に行なうとスタッフの間に前向きな雰囲気が生まれ、お店にも自然と活気が出てきます。特に新人アルバイトの場合、チームへの参加意識を高められるうえに、先輩から足りないスキルをいち早く指摘してもらえる利点もあります。ランチ後のアイドルタイムや開店直前を使って、あらかじめ伝えるべき要点をコンパクトにまとめておけば、時間もさほどかかりません。新人の仕事意識を高めるうえでも、きわめて有効な時間です。

 そのなかで具体的な問題点が見えたら、今度は「ロールプレイング」を行ないます。社員同士で役割を分担し、実際の場面を再現してみるわけです。新人スタッフのスキルを高めるには、結局は繰り返しの練習が一番効果的。このとき、一連の作業ごとに大まかな所要時間を決めておくといいでしょう。ミーティングの流れでそのままロールプレイングを続けてもいいし、お客様の少ない開店直後にトレーニングモードで働いてもらう手もあります。気になる時にすぐ、サッと行なうのが、ロープレを根付かせるコツです。

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【飲食店アンケート】人材採用・育成の実態(2)

求人・採用に関して困っているお店が1位、2位を占めたが、採用してからの教育についての悩みも多いようだ。
スタッフ育成に悩んでいるお店は多いが、基本的な約束事が書かれたマニュアルがある店は40%にも満たない。

データはすべて2012年1月ぐるなび調べ(n=回答者数)

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【STEP3】チーム戦略を練る ~個人の力を最大限に生かす組織とは?~

①個人の力量を把握する

各自の能力がわかってこそ適材適所のチームが作れる

 アルバイトも含めたチーム作りというのは、ある意味、サッカーに似ています。経験豊富なベテラン選手もいれば、入団直後の新人選手もいる。全員が超一流のスキルを持っているとは限りませんが、適材適所のフォーメーションを組めれば、大きなパワーを発揮できます。

 そのとき、監督に当たる店長に求められるのは、何より個々の選手(スタッフ)の力量を正確に把握することです。例えばホール係であれば、「卓数はいくつまで受け持てるか」「忙しい際にキッチンのフォローはできるか」「バー(ドリンク)は任せられるか」など、個々人のレベルを細かく頭に入れておく。「明確な評価制度」を活用し、スタッフの権限(やっていい仕事/だめな仕事)が一目でわかるリストなどを作っておけば、新人アルバイトがチームに加わった際の混乱も、最小限に抑えられるはずです。

②完全担当制

ポジションを明確化すれば各自のスキルと意識も向上

 もう少し、サッカーの例えを続けます。強いチームの絶対条件は、各ポジションの選手が高いプロ意識を保ちつつ、自分の役割を果たすこと。任されたポジションを意味なく離れたり、戦術と異なる動きを繰り返すことはありえません。

 飲食業も基本的には同じ。もしホールとキッチンを大ざっぱに分けただけで、あとの動きは個人任せにしてしまったら、全体にムダが生じるのは明らかでしょう。チーム力を高めるなら、ホールをいくつかのブロックに分割し、それぞれ専任担当者を置く発想が不可欠。仕事の領域と優先順位をはっきり決めることで、サービスの質は必ず向上します。

 このような「完全担当制」を用いると自分以外の仕事を手伝わなくなるのではないかと、心配になる人もいるでしょう。それを防ぐために、例えば「接客の手が空いている時はキッチンのフォロー」というように、サポートする仕事の順番も前もって決めておきます。もちろん、優先順位を無視して仲間の仕事を手伝うのはNG。まず、自分の役目を全うするという姿勢を徹底させます。そうすれば、新人スタッフがよかれと思って仲間の仕事をヘルプして、肝心のお客様をお待たせするような失態もなくなります。

 フォーメーションが決まれば、各ポジションの難易度に合わせてシフトも組みやすいはず。各自の能力を最大限に発揮できるので、人材も早く育つはずです。

③店舗主導のシフト編成

最高のサービスを維持するためにもシフトは店主導で

 有能なスタッフを早く育てるためには、実はシフト編成も重要なファクターです。前述したように、個人の能力というのは、店にとってベストなフォーメーションのもとで最大限に引き出されるもの。そのためにも、適材適所のポジショニングを常にキープする必要があります。

 しかし現実には、それができていないケースが少なくありません。特に古株のアルバイトさんがシフトも任されているお店の場合、どうしても出勤日に偏りが生じてしまいがちです。

 アルバイトスタッフが出勤日を調整している限りは、そのお店はずっとシフトで苦しみ続けるでしょう。それを避けるためにも、シフト権のイニシアティブは、店長が握るのが鉄則なのです。

 では、どうすればスタッフのヤル気を削ぐことなく、店舗主導でシフト編成ができるのでしょうか。もっともよいのは初めの雇用契約時に、出勤できる曜日と時間をすべてしっかりきめておくこと。その上でサインをもらっておけば、「じゃあ、まずは火曜と金曜から始めて、そこから少しずつ増やしていこうか」というように、自然に話を持っていけます。

 そうやってスタッフ全員の「勤務可能時間リスト」を作っておけば、ベストなフォーメーションも手軽に組めるようになるはず。最初に「平日のこの時間には○人、週末のこの時間には○人」という枠を考えて、その時間に働けるスタッフを当てはめていけばいいわけです。

 コツは、シフト作成を担当する社員の休みを先に決めてしまうこと。その上で、必要人数に満たない場合は、早めに出てくれるアルバイトを探すようにします。反対に、フォーメーションに必要な人員よりも出勤可能なスタッフが多い場合は、交代で出勤してもらってもよいでしょう。

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【飲食店アンケート】人材採用・育成の実態(3)

気になったときに指導するお店が最多。定期的に勉強会やトレーニングなどを行なう人は予想以上に少ない。
アルバイトの評価基準や待遇制度を明確にしているお店は約20%。モチベーション喚起の面から見ても、あまりにも少ない結果だ。

データはすべて2012年1月ぐるなび調べ(n=回答者数)

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【成功事例】サービスと評価の見える化が人を育てる ~株式会社サウスオーシャンズのスタッフ育成法~

目指すゴールが一目瞭然の6つの小さなハンドブック

 「頭の回転が速く優秀な人ほど、アルバイトの仕事に対して『単なる仕事以上の学び』を求めているもの。そんな意識の高いスタッフを確保するためにも、彼ら自身がはっきり成長を実感できる仕組み作りが大切だと考えています」。

 ユニークな人材育成システムで、成果を挙げている株式会社サウスオーシャンズ。代表取締役の南海亮介氏は、その核にある発想を「社員・アルバイトを問わず、すべてのシステムを徹底的に"見える化"すること」だと話す。

 「当社では、接客に欧米型のウェイターシステムを採り入れています。これは、ホールで働く人の役割分担をあらかじめきっちり決めておくという考え方。お客様からオーダーを伺ってサーブできるのは、経験豊富なヘッドウェイターのみで、料理を運ぶアシスタントウェイターや、食器類を下げるバスボーイはサポートに徹します。このやり方だと、忙しい時もサービスの質が落ちません。と同時に、下のスタッフが『自分もあんな風にかっこよくサービスしてみたい』とモチベーションを抱ける効果も大きいんです」。

 同社では現在、「アジアンシーズン」「カリブリゾート」というブランドで計5店舗を展開しているが、実は店を任されている店長全員がアルバイトスタッフ出身だ。そして、このように現場のヤル気を引き出す鍵と言えるツールが、6冊セットの小さなハンドブック(写真右上)。目指すべき理想のサービスから、昇進に必要なスキルまで──スタッフが知るべきことのすべてが簡潔にまとめられている。「いわゆる先進国が一定の教育水準を維持できているのは、どこの学校でもちゃんと教科書を使っているから。それと同じで、社内の全員が共有できるスタンダードを作ることで、目指すべきゴールも明確にできます。チャンスを平等にすることを、何より重視したいんです」。

ステップアップに必要なことはこの冊子の中に

社内の「教科書」に当たるハンドブック。経営理念や勤務規定、禁止事項などのハウスルールが記入された「パーフェクトBOOK」に加え、「1つ星:研修生」から「5つ星:店長」まで、各ポジションごとに必要な研修やスキルが、計6冊で簡潔にまとめられている
ハンドブック冒頭では店における役割分担がイラスト入りでわかりやすく解説されている

頑張るほど時給も上がる独自の社内試験制度を導入

 意欲のあるスタッフを平等に評価するために作られた社内ハンドブック。「昔はもっと分厚い1つの冊子でしたが、より便利で使いやすいように、2011年末から6つの冊子のスタイルに作り変えました。現場スタッフの意見も採り入れつつ、常に改善するように意識しています」。

 新人のスタッフがまず手渡されるのは、全社員共通のハウスルールが記入された通称「パーフェクトBOOK」と、入社案内を兼ねた「研修生&1つ星」用冊子。「心構え」「基本的な仕事内容」など、その流れに沿って店長の指導を受け、認められればランクアップ試験が受けられる。「新人さんは、本社で開かれる基礎研修を自分で予約し、受講後にテストを受けます。80点以上を取れば正式採用になり、時給が100円上がるという流れですね。セミナーや試験といっても堅苦しいものではなく、大半の方は1カ月ちょっとで見習いから1つ星(バスボーイ)に進みます。2つ星以上のポジションも、基本的な流れは変わりません」。

 また入社すると、社員・アルバイトを問わず、本社で「ウェルカムセミナー」に出席。そこで、社長自らが熱い思いを伝えるのも、同社のユニークな特色だ。「お茶会のようなカジュアルな雰囲気で、丸1日かけていろいろな話をしています。私自身もそうでしたが、若い人にとってアルバイトは人生を変える貴重な経験にもなり得ると思います。だからこそ、フェアで風通しのいい環境を提供したい。その思いが伝われば、人材は自然に育ってくれるはずだと考えています」。

人をもてなす「ホスピタリティ」の精神はマニュアル化できない。だからこそ技術に還元できる「サービス」はきっちり定めておくのが、南海氏の流儀だ
開店前には必ず15分前後のミーティングを実施。連絡事項を記入した日誌をあらかじめプリントアウト、スタッフはそれに目を通し、サインした上で参加する。終了するときは一番大事な笑顔の練習も忘れない

【POINT1】モチベーションが上がる!

新人スタッフのために、南海氏自らが毎月必ずウェルカムセミナーを主催している。「私自身の人生を変えたアルバイト経験について語ったり、尊敬する『レストランひらまつ』の平松宏之シェフを特集したドキュメンタリー番組の録画を一緒に見たり、肩の凝らない入社式みたいなものです。私の仕事は、いわば若い子たちの導火線に着火すること。最初に同じ方向を見てもらえれば、後は各店長がしっかり能力を伸ばしてくれるはず。とにかく飾らずに、思いを伝えるようにしています」。
また、試験に通ってランクが上がれば、時給がいくらになるか、冊子にリスト形式で掲載。メンタル・待遇の両面における風通しの良さが「みんなで頑張ろう」というムードの原動力だ。

スキルを身に付けるのに不可欠なのが、ロールプレイング形式の練習。「お出迎え」「ご案内」など主要なシチュエーションがシナリオ化されており、これも試験の対象となる

【POINT2】チーム力が上がる!

店長から新人スタッフまでそれぞれの役割が明確に決められ、しかもハンドブックを見れば自分の習得すべき技術もすぐわかる──これが強いチーム力をキープできる秘訣だ。
「新しいアルバイトさんに皿洗いをお願いする際も、当社では『新入りはとりあえずここ』的な押し付け方は決してしません。ハンドブックに基づいて店の考え方なども全部説明し、全体のプロセスを理解してもらった上で『君に求めたいのはこの役割』というアプローチを採ります。基準が明確なので、教える側にとっても覚える側にとっても楽ですね」(富永祐太店長)。
朝礼などでもハウスルールの冊子を日々活用。業務のトピックスに合わせて繰り返し共有することで、サービスの安定感がより高まっていく。

【POINT3】スタッフが辞めない!

仕事の権限と連動したランクアップシステムの良さは、次の人材が自然に育っていくこと。やりがいを感じ、そのまま就職する人材も多い。また、ベテランのスタッフが入れ替わりがちな3 月にも、次のポジションにいる人に仮の権限を与えれば比較的スムーズに対処できるという。「そもそも、ヘッドウェイターを務めるほどのアルバイトさんは学生でも相当意識が高いので、突発的に辞めたりする心配はほとんどありません。必ず下の世代を育ててくれているので、そういう意味でも安心ですね」(富永店長)。

株式会社サウスオーシャンズ 代表取締役 南海 亮介氏(左)カリブリゾート津田沼本店 店長 富永 祐太氏(右)
南海氏の店作りと人材育成への想いを理解し、現場で形にしているのが「カリブリゾート津田沼本店」の富永氏をはじめとする各店の店長たち。富永店長自身も、アルバイトスタッフとして南海氏とともに働き、そのまま同社に就職した経歴を持つ。
シーフード&ビストロ
カリブリゾート 津田沼本店

千葉県船橋市前原西2-13-23 フラッピ津田沼5F
http://r.gnavi.co.jp/a247704/
その名の通り、カリブ海のリゾートを旅行する豪華客船のダイニングがコンセプト。毎日、市場から仕入れる新鮮なシーフードとワインが人気で、パーティ需要も多い

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