2020/02/12 特集

若手スタッフの育成&コミュニケーション~小さな成功の積み重ねとフォローが成長と定着につながる!~

新しいスタッフを迎い入れる春がはもうすぐそこ。10代後半~20代の人を迎える場合、どうコミュニケーションを取り、育成していけばよいのか。人材育成のプロに、若い世代の考え方や効果的な育成方法について聞いた。

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更新日:2022.10.20

目次
若者の価値観が変化。やりがいや自己成長を追求
上司である自分の意識を変える!
育成担当者を決めるとともに、スタッフ全員でサポート
成功体験を積ませ、成長へ導く
職場のルールを守ってもらうには、責任者の一貫性が重要!

 10代後半~ 20代のスタッフを迎える場合、リーダーである店長や責任者はどうコミュニケーションを取り、育成していけばよいのかと悩むこともあるはず。そこで、人材育成や組織コンサルティングを手がける株式会社シェイクの三浦悠介氏に、若い世代の考え方や行動の傾向と効果的な育成方法について聞いた。三浦氏は、10代後半~ 20代の人は「一方的な押し付けは嫌がるが、関心のあることには自分から積極的に関わる」ため、「仕事へのやりがいを求めたり、成長したいという気持ちは強い。指導者は行動の意味をしっかり教えることが重要」と語る。

株式会社シェイク Human Resource Consulting部門 マネジャー 三浦 悠介氏
株式会社シェイクは、個人の「リーダーシップ開発」を軸に、企業の人材育成や組織作りを手がける。三浦氏は、2015年新卒で入社。内定者向けから管理職層向けまで、幅広い研修プログラムの開発に従事し、年間50社以上の組織・人材開発を支援している。新人・若手向けの企業研修を行うファシリテーター(講師)としても活動する。

若者の価値観が変化。やりがいや自己成長を追求

 若手スタッフの育成やコミュニケーションを考えるにあたって、まずは10代後半~20代に多く見られる行動や考え方、傾向について把握しておきたい。三浦氏は、新人・若手社員向けの企業研修に携わるなかで、若者像の変化を感じているという。

 「いま新入社員として社会に出る世代は、1990年代後半~2000年生まれの、『Z世代』と呼ばれる世代に含まれます。この世代の大きな傾向でまず挙げられるのは、働くことへの価値観の変化です。仕事とプライベートはどちらも大切だという“ワークライフバランス”の考え方を、社会人のスタート時点から持っていることが特徴です。そのため、『仕事が第一』という考え方が社会の主流だった40代以上の世代とは、価値観の違いが生まれやすくなっています」と三浦氏は解説する。また、情報化社会で育ってきた「デジタルネイティブ世代」であることも、行動や考え方に影響を与えているという。「様々なモノや情報が溢れているなかで、自分がほしい情報を選び、居心地のよい空間に身を置くことが大切だと考えており、関心のあることには自分から積極的に情報を取りにいく傾向が見られます。InstagramやYouTubeなどで情報を集めており、例えば関心のある会社があれば、自分からその会社の社長のインタビュー動画を探すといったこともしています」(三浦氏)。

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 自分にとって大事なものや興味を持つものに対しては非常に敏感である一方で、相手が求めているものや社会から寄せられる期待には意識が向きにくい面もあるという。「自分から動くのはよいが、一方的な指示は嫌がる傾向もあります。とりわけ組織論理に沿って動くことには抵抗を感じがち」と三浦氏は指摘する。例えば、社内やグループ内での「昇進・昇格の魅力」を伝えても響きにくく、それよりも「この仕事の意義は何か」や、「この仕事がどう自分の成長につながるのか」など、“行動の意味”を重視する。「仕事へのやりがいを求めたり、成長したいという気持ちは強いので、“この行動はどんな意味があるのか”をしっかり教えることが重要です」(三浦氏)。

 このような特徴を挙げると、接しにくいと思う人もいるかもしれないが、「『まじめで素直な人が多い』という評価も企業の人事担当者からよく聞きます。言われたことを実行するまじめさは、この世代の長所と言えるでしょう。上司からすると『言われたことをやるだけでなく、自分で考えて動いてほしい』と感じ、物足りない面もあるかもしれませんが、ていねいにコミュニケーションをとって、行動を導いていけば成長につながります」と三浦氏は語る。まじめさや素直さ、仕事にやりがいを求める姿勢は、成長への伸びしろの大きさとも捉えることができ、指導者は長所を引き出すような関わり方を意識することが大切だ。では、具体的な育成方法やコミュニケーションのポイントを見ていこう。

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上司である自分の意識を変える!

自らの“常識”を問い直し、話しやすい関係性を築く

 まず、準備として大事なのが、「上司である店長や責任者が自身の常識を問い直し、意識を変えること」と、三浦氏は語る。「例えば、飲食店にとって挨拶はできて当たり前なことでも、若い人のなかには『知らない人に挨拶してはいけない』と、挨拶や声かけがよいことだと教わってこなかった人もいます。モラルやマナーの基準は時代で移り変わっているのです。『これぐらい知っていて当たり前』と考えず、入店後の1カ月ほどは、相手がどの程度モラルやマナーを身に付けているのかを確かめるつもりで接するとよいでしょう」(三浦氏)。また、採用時の面談で「言葉使いなどを注意するかもしれないけれど、どこに行っても必要なマナーだから必ず役に立つよ」などと伝えておくことも有効。事前に指導する内容や目的を共有しておけば、前向きに取り組んでもらえるはずだ。

 もう1つ重要なこととして三浦氏は、「日ごろの信頼関係があって初めて、指導は成立するもの」と強調する。上司は、スタッフに個人的なことを聞くのはよくないと考えて距離を置きがちだが、必要なのは上司自らが心をオープンにして接すること。自身の失敗談やプライベートのことなども話題にし、話しやすい雰囲気や距離感を作っておくことが大切だという。「業務中に15分ほどの面談を定期的に設けることも、関係性を深めるには有効です」(三浦氏)。まずは、話しやすい職場になっているか見直したい。

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育成担当者を決めるとともに、スタッフ全員でサポート

全員が成長に関わる体制を構築することが大切

 若手スタッフが育つ理想的な組織のあり方として三浦氏は、「1対1対nの育成」を挙げる。これは下の図のように、若手スタッフと育成担当者の「1対1」の関係に加えて、店長である店舗責任者やほかのスタッフも「n(複数名)」の立場から、全員で育成をサポートする組織を指す。

 ここでのポイントは、店長が若手スタッフの育成に直接関わるのではなく、できれば育成担当者を別に1名置くこと。「店長は売上管理や顧客対応、労務管理など、常に目を配らなければいけない範囲が広く、加えて若手スタッフの育成も担うとなると手が回らず、指導が後回しになってしまうこともあるでしょう。そこで、現場で一緒に働く先輩スタッフを育成担当者とすることで、若手スタッフへの細やかな目配りやフォローが可能になり、また若手スタッフにとっても、店長よりも年齢や立場が自分に比較的近い先輩が指導してくれることで、安心感や居心地のよさにつながり、指導への納得感が高まるメリットがあります」と三浦氏は解説する。

 そして、「n」であるほかのスタッフのサポートも重要だ。若手スタッフと育成担当者の「1対1」の関係性のみでは、仮に若手スタッフが指導された内容に対して何か疑問に思うことがあったとしても、ほかに相談する相手を見つけられず、わだかまりが残ったままになりやすい。また逆に、特定の育成担当者を決めない「1対n(複数名)」の関係性だけでも、若手スタッフが困りごとや疑問を誰に聞けばよいのかがわかりにくく、指導する人によって言うことが違うといった問題も生じがちで、結果的に十分な育成指導ができない状況になりやすい。だからこそ、若手スタッフと育成担当者の「1対1」を基本としながらも、店舗のスタッフ全員が育成に関わる「1対1対n」の体制を作り上げることが重要になる。「育成担当者には、現場のエース社員や次期店長候補、スタッフのリーダーなどを選ぶとよいでしょう。役割を任せる際には、若手を育成する経験が育成担当者自身の学びや成長につながることや、職場全体でバックアップすることをしっかりと伝えることも大事。そして店長は、育成担当者を信頼して指導を任せるとともに、常に状況を把握してサポート役に徹することが大切です」(三浦氏)。

 さらに、若手スタッフ本人がどう成長したいのか、何を求めてこの職場を選んだのかといった意向や目的を、店長、もしくは責任者が最初の面接で聞き出し、育成担当者へ情報を共有することも大切だ。その目的に対して、行動を紐付けて指導すれば、効果的に成長につながっていくという。例えば、「お金を貯めて旅行がしたい」という目的であれば、「うちのお店でお金を稼ぐには、テーブルセッティングを覚えたり、お出迎えができるようにならないとね」などと、目的を実現するためにやるべきことを伝えると、行動につながりやすい。逆に、最初から「店の売上に貢献してほしい」「成果を出すように」と話しても、理解されないことが多い。提示される目標が大きすぎるため、そこに自分がどう関わったらよいのかイメージができず、モチベーションに結び付きにくい。

 「これまでのようなトップダウンの指導ではなく、若手スタッフが悩んでいることや考えていることを引き出しながら、店全体でていねいに育成サポートしていくことが不可欠です」と三浦氏は助言する。

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成功体験を積ませ、成長へ導く

プロセスもきちんと評価し、成長を認識させる声かけを

 若手の育成において、従来は「失敗から学ばせる」という考え方が主流だったが、これはもはや時代に適さない。「前述した『Z世代』の傾向として、一度失敗すると長く引きずってしまい、その結果、職場が自分にとって居心地の悪い空間になり、別の場所を求めて辞めてしまう、という選択をしがちです」(三浦氏)。

 株式会社シェイクでは毎年、新入社員研修の受講者約2,000人にアンケートを実施し、分析結果をレポートとして発表。そのレポートで、2018年度の新入社員の特徴と職場での関わりをまとめたのが上図だ。これらの特徴を踏まえ、三浦氏が育成においてすすめるのが「小さな成功体験を積ませる」ことだ。「ここでいう『成功』とは、結果だけを指すものではありません。例えば、本人が工夫して実践したことなどプロセスにも目を向け、こまめに声をかけて褒めることが大切です。すると、『努力の過程を見てくれている』という安心感や自己肯定感が得られ、成長につながります」(三浦氏)。ほかにも、本人が意識せずに行っていることや、来店客やスタッフにとってプラスになっている行動があれば、言葉で示して気づかせることも効果的だ。こうした小さな成功体験を重ね、着実に自分が成長しているという実感を持てるようなサポートが求められる。

 もちろん、育成においては褒めるばかりでなく、ミスや適切ではない行動があれば、注意しなくてはならない場面も出てくる。このときも、まずは行動の意図を聞き出し、それを尊重することが大切だ。例えば、来店した人がいるのに、近くにいる若手スタッフが声をかけず、黙々と片づけている場合、「その作業は後でいいから、お客様を案内して」と指導するだけでは、成長にはつながりにくい。「育成担当者の視点では不適切な行動に見えたとしても、そこには本人なりの基準や考えがあるのです」と三浦氏。「なぜ片づけをしていたのか」、の意図を聞けば、「以前、お客様が帰ったらすぐ片付けてと言われたから」と答える可能性もある。育成担当者がその行動の背景を理解したうえで、そのときの状況をあらためて一緒に振り返れば、優先して対応すべきだったのは何だったのかが理解でき、状況に応じて仕事の優先順位を判断することや、周りに目を配る大切さを認識できるようになる。

 また、指導を行う際には「ここができていない」と指摘するのではなく、「こんなふうに変えれば成長のステップになる」と、前向きに伝えることも重要だ。「指導者から見て『できていない』と思うのは、期待する姿とギャップがあるため。しかし、それは一方的な期待の押しつけでもあります。ギャップがあるのは当然のことであり、そこを埋めるステップをいかに具体的に、わかりやすく伝えるかが大切です」(三浦氏)。相手の意図を尊重しつつ、ミスやできていないことをネガティブに捉えずに接することで、若手スタッフは自分を否定されたという感覚を持つことなく、納得してアドバイスを受け入れやすくなる。

 「『背中を見て学べ』という環境で育った世代からすると、ここまでていねいな指導には違和感があるかもしれませんが、こうしたステップを踏んで成長を実感させることが、職場への信頼感に結びつき、定着にもつながります」と三浦氏。ていねいな育成や密なコミュニケーションが職場の居心地のよさとなり、それが接客や店舗力の向上につながっていくことを認識したい。

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職場のルールを守ってもらうには、責任者の一貫性が重要!

 勤怠など職場におけるルールや行動規範はどの店舗にもあるが、守ってもらえないケースも。若手スタッフには、最初に明確に説明することが大切だ。その際、「こんな店や会社を目指していくために、このルールがある」と、背景や理由も含めて伝えると納得感が高まる。マニュアルについてもどんな目的で作られたのかをしっかりと伝えるようにしたい。

 ルールを運用するうえでもっとも大切なのが、責任者の一貫性だ。「人によって対応や態度を変えることは絶対にNGです。例えば、Aさんの遅刻は大目に見て、Bさんには厳しく指導するといった一貫性のない対応は、スタッフの不満や不信感にもつながります」と三浦氏。ルールの改訂や個別の対応が必要になった場合は、スタッフ全員で意見交換し、総意で決めていくと受け入れやすくなるので、ぜひ取り組んでほしい。

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