2020/06/29 特集

飲食店のトラブル&クレーム対応、炎上を防ぐ3ステップ

過度な要求をする「パニッククレーマー」。不当なクレームに飲食店はどのように対処したらよいか、クレームする人の心理を専門家が解説。炎上を防ぐための3つのポイントを聞きました。

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炎上を防ぐ、3ステップ

更新日:2023.12.27

「不安」や「不満」などのストレスから、ささいなことで感情をぶつけてしまう“パニッククレーマー”。その矛先が飲食店の場合も少なくありません。トラブルやハードクレームに対応してきた株式会社エンゴシステム・代表取締役の援川聡氏は、「来店客のマナーやスタッフの対応に関するクレーム」が起こりえると話します。

適切に対応するために、クレームに対する店の方針を決めるとともに、まずはクレームに対し傾聴の姿勢で気持ちに寄り添う対応を提案。一方で、店が要望に対応できる・できないを明確にし、できない場合は「断る勇気」を持つことが大事です。

株式会社エンゴシステム 代表取締役 援川聡 氏
1956年広島県生まれ。1979年警察官となり、大阪府にて勤務。1995年大手流通業に転職し、警察官の経験を生かしてトラブルやハードクレームの対応にあたる。2002年に株式会社エンゴシステムを設立。豊富な現場経験と独自のノウハウをもとに企業、医療機関、公共機関などをサポートし、これまでアドバイスした件数は5,000を超える。著書に「クレーム対応『完全撃退』マニュアル」(ダイヤモンド社)などがある。

目次
来店客のマナーに関するクレームが起きる可能性も
【STEP1】店の方針と対策を立てる
【STEP2】初期対応を身に付ける
【STEP3】断る勇気を持つ
クレーム予防も大事!

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来店客のマナーに関するクレームが起きる可能性も

コロナ禍は一旦落ち着きはしましたが、飲食店においてどんなクレームが予想されるでしょうか。「まず考えられるのが、来店客のマナーに対するクレーム」(援川氏)。例えば「隣席で大きな声で会話をしている」「咳やくしゃみが気になる」などです。以前は気にならなかったことに現在は敏感に反応する人もおり、店がそれをやめさせないことに対し、クレームを入れるケースもあります。また、「異物混入のクレームも、大きなクレームになりやすい」と援川氏は語ります。

「いずれにしても、根底にあるのは、“外食はしたいが感染はしたくない”という心理」と援川氏は指摘。この心理が強固に残っているため、「店は“徹底した感染対策をして当然”という正論にこだわり、妥協できない人はいます。対策が徹底されていないことでクレームが激化し、スタッフを“バイ菌扱い”したり、とことん追い詰めて土下座を要求するなど、カスタマーハラスメントに至ってしまうことも。さらに、『自分は正しいことを言っている』と思っているため、パニッククレーマーになっているという自覚もありません」と分析します。

パニッククレーマーは、“正論”を拠りどころにしてモンスター化してしまう傾向が強いといいます。援川氏は「クレーマーには、店のために意見を言ってくれる“ホワイト”と、恐喝まがいの“ブラック”がいますが、パニッククレーマーの多くは“グレー”」と話します。主張している内容は“正論”であり“ホワイト”のはずなのに、パニック状態にあるため、ブラックまがいの要求と態度になってしまいやすくなるのです。

こういったクレームを受けるスタッフにも負担は大きくのしかかります。罵声をあびせられたり、土下座を強いられたりするようなカスタマーハラスメントは、精神的な苦痛につながります。さらには、「これまでは“ただの大声”だったのが、今は“大声で飛ばされる飛沫でコロナに感染するかもしれない”という心理的にも身体的にもリスクが伴います」(援川氏)。

「スタッフの身を守るためにも、クレームに対して店舗や企業でどのように対応するかあらかじめ決めておくことが重要」と援川氏は説きます。パニッククレーマーへ効果的に対応できる力をしっかり付けることが、リスク回避につながるのです。「クレーム対応は、護身術の一つ。スタッフを守るために会社(店)が対応を決め、スタッフにはクレームの初期対応を身に付けてほしい」と援川氏。それでは、次の項目から実際のクレーム対策を見ていきましょう。

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【STEP1】店の方針と対策を立てる

「スタッフを守る」という経営者のメッセージも大切

パニッククレーマーに適切な対応するために、飲食店には何が必要でしょうか。援川氏は「まず、経営者自身がクレーマーによる最悪の事態を予測し、店とスタッフを守るために方針と対策を明確にすること。クレーム対応を現場任せにしては絶対にいけません」と力説します。

なぜなら、増加するクレーマーへの対応が、店の経営を左右しかねないからです。例えば、スタッフがクレーム対応に時間を取られると、ほかの来店客への接客が行き届かず、顧客満足度を低下させてしまいます。また、内容によってはスタッフが精神的苦痛を抱え込んでしまうケースもあり、疲弊して離職につながってしまうことも。さらに、的確な対応ができなければ、SNSに悪評が書き込まれ、拡散する危険性もあります。「パニッククレーマーが少数のときは何とかできても、増加が予想される今後は、対応を明確にする必要があります。店とスタッフを守る経営者としての真価が問われていると言えるでしょう」と援川氏は力を込めます。

経営者や幹部、店長を含め、店のクレーム対応の方針を決めよう

まずは、店長や幹部などを交え、クレームに対する店(会社)の方針と、個別のクレームへの対応方法をまとめたマニュアルやガイドラインを作成しましょう。ここには、どの場面でどう振る舞うかを具体的に示した“台本”の要素を盛り込むと、現場のスタッフも取り組みやすくなります。「これがクレームに対するリスクマネジメントになります。植物に例えると“根っこ”の部分」と援川氏は位置付けます。さらに「最終的には経営者が責任を持ち、スタッフを守る、というメッセージを発信しましょう。これが植物の幹や茎にあたり、“根”のリスクマネジメントと“幹”であるメッセージがうまく機能することで、スタッフの対応力が向上し、最終的には顧客満足という“花”を咲かせることができるのです」と援川氏は語ります。

クレームは、ほとんどが現場のできごと。店長だけでなくスタッフにも対応が求められます。「『上からの指示だから』というのでは、スタッフは動いてくれません。その必要性を自覚し、納得してこそ行動に移せるもの。的確な行動ができるよう、対応への納得感と店や会社への信頼感を高めることが大切」(援川氏)。スタッフを支えるためにも、方針と対策をしっかり立て、力強いメッセージを発しましょう。

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【STEP2】初期対応を身に付ける

「でも」「だって」はNG。傾聴の姿勢で気持ちに寄り添う

クレーム対応で最も重要なのは、「現場の初期対応」と援川氏。もつれたクレーム案件の大半は初期対応の失敗で、「対応したスタッフの余計な一言が、お客様の怒りの火に油を注いでしまうことはよくあります」と言います。逆に、初期対応に成功すれば、「対応が良い店」と認識され、顧客満足につながることも。この点でも、スタッフに適切な初期対応ができるよう指導することは、組織として重要な課題になります。

では、クレームの初期対応の基本とは? 援川氏は「どんな人に対しても、まずは、大事なお客様として顧客満足の観点から寄り添うこと」と提言します。「何に怒っているのか」「どうしてそう思うのか」をその人の目線で考え、気持ちを受け止める姿勢を見せることが大事です。「悪意のないクレームの場合、寄り添う姿勢が伝われば、多くは炎上せずに収めることができます」と援川氏。特にコロナ感染に対する不安から生まれるクレームは、傾聴することで沈静化することもあります。

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ですが、対応に不慣れなスタッフが突然クレームを言われて、とっさに気持ちに寄り添えるとは限りません。そこで、ぜひ覚えてほしいのが、援川氏が提唱する「S言葉」(下記参照)です。これは「さようでございますか」「失礼しました」「承知しました」「すみません」「そんなことがあったのですね」など、「さ」行で始まる言葉。これらを使うと、寄り添おうとする気持ちが相手に伝わりやすくなります。反対に、避けるべきワードを、援川氏は「D言葉」と呼びます。「ですから」「だって」「でも」など、「だ」行の接続詞で、それぞれ相手が「上から目線」「反抗的」「逃げ腰」という印象を受けやすいといいます。

上が寄り添う気持ちを表す「S言葉」。下は避けるべき「D言葉」を「S言葉」に変えた例。対応がスムーズになるので、それぞれ覚えておきたい

「S言葉は台本であり、護身術でもあります」と援川氏。クレーム対応を言葉で定型化し、単純化することで、スタッフはとっさの場合でも初期対応を“演じる”ことができます。演じていれば、クレーム時のきつい言葉や態度を俯瞰して冷静に捉えることも可能です。初期対応のノウハウを身に付けることは、クレームから自分の心を守ることでもあります。

加えて援川氏は「早く終わらせよう、説得しようと焦らないこと。傾聴の姿勢が伝われば、相手は『わかってもらえた』『聞いてもらえた』と感じ、それだけで済むケースが多い」と話します。また、シーンによっては、「2人で対応することも有効」(援川氏)。1人がメモを取って記録係になり、もう1人が聞き役に徹すると、傾聴する姿勢が伝わりやすくなります。

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【STEP3】断る勇気を持つ

相手の土俵に乗らずに、3〜5分で話を切り上げる。上手なギブアップも大事

初期対応でクレームが収まらなければ、「上手に断る勇気を持とう」と援川氏は呼びかけます。もともと“ブラック”なクレーマーはもちろんのこと、たとえ出発点のクレーム内容が正当な要求だったとしても、態度や要求がヒートアップして、モンスターと化したときは、「受け入れられない要求は断ってよい」(援川氏)とアドバイス。「初期対応の目安は、通常でも5分。感染予防の観点から見れば短時間も大事なポイントですから、3分でもよいでしょう」と援川氏は語ります。

そこで、「上手に断る極意」として援川氏が提唱するのが「3だん話法」という考え方。「3だん」とは「段・暖・断」の3つ。「段」は「段階」。前項の「STEP2」でも述べたように、いきなり断るのではなく、まずはその人に寄り添い、不安・不満を受け止める段階を踏みます。次の「暖」は「あたたかい」。どんなクレームでも来店客に対しては、あくまであたたかい姿勢で臨むことが大事。最後の「断」は、もちろん「断る」。丁寧にしながらも、要求は断固として応じられないことを伝え、その場のやり取りを終わらせ、断ち切ることが大切です。

例えば、「混雑して、密じゃないか!」というクレームに対しては、「お客様はそのように感じていらっしゃるのですね」と、まずは初期対応として不安な気持ちに寄り添う。可能であれば、「窓に近いあちらの席はいかがでしょうか」など、別の席を提案してもよいだろう。それができなければ、傾聴の態度で接しつつ、「当店では感染予防を徹底し、保健所の指導に沿って対応しております。ご理解いただければと存じます」と、丁寧かつきっぱりとクレームを遮断しましょう。あるいは、「お客様のご意見を、今後の運営に生かしますので、よろしければアンケートにご協力ください」と、その場でのやり取りを切り上げることも有効です。まれに「家に謝りに来い」と言われることもありますが、「感染予防の観点から断ってよいでしょう」と援川氏は言います。

対応できない要求であれば、丁寧に断ってクレームを終わらせよう

それでも収まらなければ、「上手にギブアップしましょう」と援川氏。「私どもではこれ以上、ご要望にお応えすることができません」と伝え、まだ怒りが抑えられないようであれば、組織的な対応に移ることを考えてもよいでしょう。

大事なのは、「提供できるサービスはきちんと提供し、できないサービスはしっかり断ることと、相手の土俵に乗らないこと」(援川氏)。相手の土俵に乗って、こちらが感情的になったり、言われるがままになってはいけません。さらに、「対応の公平性も大切」(援川氏)。サービスが過度なものになっていないか、店や会社の方針に沿っているのかを改めて確認したいところです。例えばクレームを受け、料理に関わるクレームではないのに割引券を渡した場合、「クレームを言えば、割引券がもらえる」と思われる可能性もあります。それが引き金となり、系列店でも同じクレームを入れ、「あっちの店は、割引券をくれた」と言われかねません。また、店長が相手によって態度を変え、一貫性や公平性を保っていないと、スタッフも言動を定められないばかりか、店や店長への信頼にも影響します。こうした悪循環を避けるためにも、店とスタッフが一丸となって、効果的に「断る」スキルを身に付けることが大切です。

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クレーム予防も大事!

店の方針を明文化してアピール! スタッフ間の意識統一にも効果的

クレームが起きたときの対応策はもちろん重要だが、「クレームが発生しにくい店づくり」という“予防”の視点を持つことも大切です。「そのためには、店(会社)の取り組みや方針を明文化し、お客様の目に触れるようにするとよいでしょう」と援川氏。

例えば、コロナ関連のクレーム予防策としては、店内やホームページ、SNSなどに店(会社)としてどのような感染対策を行っているか告知しておくと、安心感を与えることができます。また、的確な感染対策を行っていると掲示することも効果的。こうして明文化することは、スタッフにとっても有効で、意識や行動が統一でき、徹底した感染対策につながるでしょう。

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また、クレームの予防には、お客様への氣配り・目配り・心配りが不可欠です。「クレームのサインを見逃さず、未然に防ぐレベルの高い接客が求められます」(援川氏)。

もちろん、接客力や対応力のアップをスタッフ任せにしてはいけません。「STEP1」で述べたように、店(会社)のクレーム対応の方針を作るとともに、店長やスタッフが連携して迅速に対応できる仕組みが求められます。「例えば、対応の要点やコツを名刺大のカードに記してスタッフに配布すれば、現場でもさっと使えます」(援川氏)。さらに、スタッフがクレーム対応で心が折れないよう「店全体でチームとして取り組む姿勢を明確にしてほしい」と援川氏。1人がクレームを受けていたら、すぐにもう1人が駆け付けたり、チームとしてサポートするなど、負担を分かち合うことも大切です。「そういう雰囲気があれば、スタッフが安心して自信を持って働くことができ、クレームを受けても精神的苦痛は最小限に止められるでしょう」(援川氏)。

不安がつきまとうこれからの時代こそ、経営者や店長はもちろん、スタッフの連携を強め、クレームに負けない強い店を目指しましょう。

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