2014/01/14 特集

食材を知れば幅が広がる!馬肉でキラーメニュー作り

2014年の注目食材として干支でもある「馬肉」が挙げられる。今回は馬肉の魅力を掘り下げるとともに、3名のシェフが店のキラーメニューとなる馬肉料理を考案。食材を知り、ヒットメニューを作り出そう!

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昨今、馬肉メニューを提供する店が増えており、2014年の注目食材として干支でもある「馬肉」が挙げられる。そこで、今回は馬肉の魅力を掘り下げるとともに、3名のシェフに店のキラーメニューとなる馬肉料理を考案いただいた。食材を知り、ヒットメニューを作り出そう!

馬肉は低カロリー、高タンパクな食材。魅力を活かして新メニューを開発!

社団法人 日本馬肉協会代表理事 小泉 広記 氏全国の蔵元をめぐって地酒を仕入れ、日本酒の魅力を伝える酒屋「いずみや」(千葉・鎌ヶ谷)の2代目として活躍するかたわら、馬肉をメインにした「馬バルBAKUROU」(東京・御徒町)、沖縄料理店「神田基地TOKYO」(神田)を経営。日本馬肉協会発足と同時に現職となり、馬肉の普及や指導に力を注ぐ。

安全性とおいしさが知られ様々な馬肉メニューが誕生

「馬肉の最大の魅力は、生食の安全性が高いことです」と、社団法人 日本馬肉協会代表理事の小泉広記氏は、開口一番こう語った。牛肉や豚肉の生食による食中毒が発生し、消費者から生肉食への警戒感がふくらみ、2012年には行政による規制も強化された。そんなかで馬肉は、牛肉やほかの肉に比べ生食の安全性が高い肉として注目を集めた。

馬肉の安全性について、その理由を、小泉氏は次のように解説する。

①馬はもともと菌の保有数が極めて少ない動物である
②構造的に内臓が取り出しやすく、解体時に内臓液が肉部分を汚染しにくい
③牛のような反芻動物(一度胃に入れたものを、口腔内に逆流させ、繰り返し食べる動物)ではなく、菌が発生しにくい。

これらによって、馬肉による食中毒は他の肉に比べて極端に少ないそうだ。さらに小泉氏は、昨今の馬肉人気の背景として、「加熱調理した馬肉のおいしさも知られるようになり、料理のバリエーションが広がったこと」を挙げる。リーズナブルな専門店が増加するとともに、全国的に馬肉料理をメニューに加える飲食店も増えているのだ。「馬肉料理が広がってきている今だからこそ、飲食店の方々に正しい知識を知っていただき、様々な料理に挑戦していただきたいですね」と小泉氏は語る。

現代人向きの優れた栄養価。午年のキラーメニューに

馬肉のもうひとつの魅力は、低カロリー・高タンパクという、優れた栄養価にある。例えば、100g当たりのカロリーは和牛リブロースの約3分の1、和牛モモ肉の約3分の2で、皮なし鶏ムネ肉とほぼ同じだ(栄養成分値は文部科学省『五訂増補食日本食品標準成分表』より算出。以下同)。脂質も和牛リブロースの10分の1以下、和牛モモ肉の約5分の1。その一方で、タンパク質は和牛リブロースの約1.2倍、和牛モモ肉とほぼ同量を含んでいる。鉄分も多く、牛肉の約2倍、鶏ムネ肉の20倍以上あり、鉄分不足で貧血になりやすい女性にはうれしい食材だ。

「しかも、馬肉の脂肪は牛肉と違って、人間の体温では固まりません。つまり脂肪として蓄積されにくく、高コレステロールや肥満になりにくいのです」と小泉氏。さらに、消化がよく、疲労回復効果が高いグリコーゲンを豊富に含んでいることから、アスリートにも愛好者が少なくない。ダイエット中の人や健康志向の現代人、そして高齢者にも向いている「健康食材」と言うことができる。

では、部位や味にはどんな特徴があるのだろうか。「味は牛肉に似ていて、すき焼きやステーキなどでは牛肉と同等のうま味を味わえます。味がのりやすく、臭みが少ないのも馬肉の特徴のひとつ。部位の種類も豊富で、部位ごとに違った食味があり、牛・豚と同様、頭に近くなるほど味が濃くなるので、首に近い肩ロースやリブロース、肩バラなどは、火を入れることで脂の味が際立ってきます」と小泉氏。ただし、加熱しすぎると肉質が締まって硬くなりやすいので、注意が必要。また、鉄分が多いため、空気に触れると酸化して濃く発色するので、切り置きは極力避けたい。保存や管理では、牛・豚肉などの場合と同様に、徹底した衛生管理と調理器具の消毒、温度管理が不可欠だ。

それでは、流通・仕入れについて、気になる価格はどうだろうか。「国内での馬肉の供給ルートは主に、①カナダから生体を輸入し、国内で肥育・と殺、②カナダで日本用に肥育・と殺し、正肉として輸入、③国産でかつ日本で肥育し、と殺する純国産もの、の3つがあります」(小泉氏)。①は霜降り肉がとれる高級食材で生食が主、②は馬の種類は①と同等だが、経費を低く抑えた分、リーズナブルな価格帯での仕入れが可能。③は霜降り肉はとれないが、赤身の味が際立つ肉質で比較的安価、という特徴がある。「総合すると、和牛肉と国産豚肉との中間くらいの価格帯で販売されることが多いです」と小泉氏。購入時には産地と用途(加熱用、生食用)の表示をしっかり確認するとともに、「と殺証明書」や「産地証明書」は仕入先に言えば入手可能なので、必要に応じて手配し、店内に掲示して安全性をアピールするといいだろう。

知れば知るほど魅力的な食材、馬肉。次ページからは3名のシェフが作る馬肉メニューを紹介する。ぜひ、メニュー開発の参考にしていただきたい。

社団法人 日本馬肉協会
http://www.banikukyoukai.com/日本の各地に古くから伝わる「馬肉食(生食を含む)」の文化を守り、発展させるために、馬肉の啓蒙・普及、安全性と信頼性の維持・向上を図ることを目指して、2012年7月に設立。HACCP(危害分析重要管理点)に基づく衛生管理の指導、馬肉料理の試食会、馬肉に関する検定の実施、法律・技術などに関わる総合的な支援をはじめ、共同購入制度の導入、オリジナルメニューの提案、開業支援・コンサルティングなどを行っている。

『馬肉新書 知られざる馬肉のすべて』 発行/旭屋出版、監修/社団法人 日本馬肉協会日本馬肉協会が監修を行なった、プロの調理人、飲食店経営者向けの馬肉の専門書。全国に広がる馬肉の文化や郷土料理などを紹介するとともに、馬肉の栄養価や安全性、品種、生産に関する詳しい情報を掲載。馬肉料理の王道とも言える馬刺しや馬肉鍋の調理・提供方法を提案するほか、“新・馬肉料理”として、馬肉を使った冷菜、温菜、もつ料理、ご飯ものまで、レシピのアイデアを紹介する。「馬肉文化を広めるためにも、教科書的な存在として作った」(小泉氏)というだけに情報が網羅されており、馬肉を扱う飲食店にとっては必読書だ。

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