焦らず、手間をかけオンリーワンのベーコンに

宮城県大崎市にあるジャンボン・メゾンの工房では、香りと味わいの深さが自慢の「宮城野ポークベーコン」を生産。それを使って「仙台屋」ではメニュー化。特別な逸品として提供している。

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代表取締役
髙﨑 かおり 氏美術大学卒業後、イラストレーターやライター業で活動していたが、東日本大震災を機に家業を手伝い、そのおもしろさを知る。「手にするものが絵筆から肉になりましたが、“作品作り”の意識は変わりません」。
ベーコンを厚めにカットし、炭火で炙ったメニュー。炭火によって香りが増し、脂が舌の上でとろける。ベーコンのおいしさがダイレクトに伝わる一品で、日本酒にも合うと好評

焦らず、手間をかけることでオンリーワンのベーコンに

宮城県の北西部。米どころとして名高い大崎市に、ジャンボン・メゾンの工房がある。来年25周年を迎える同社は、常務取締役である髙﨑かおり氏の父親が創業。洞窟で骨付き肉にかぶりつく、幼い頃に見た映画のワンシーンが忘れられず、40代後半で水稲農業から食肉加工業に転身。農家時代から趣味としてハムやソーセージを作っており、その腕は料理研究家からも評判だったという。「父は大量の本を読み、試行錯誤を重ねて現在の味を完成させました。いわば独学ですが、それが“どこにも似ていない味”になったのだと思います」と髙﨑氏は語る。

工房で作る製品の中でも、「宮城野ポークベーコン」は香りのよさ、味わいの深さが特徴だ。その特徴を引き立たせる秘密は、髙﨑氏が社長である父から受け継いだ「待つことが一番の技術」との言葉にある。豚肉を秘伝のソミュール液(塩や香辛料を入れた液)に漬け、熟成させること10日間。その後、朝から夕方までスモークした後、真空状態でさらに2週間熟成。この2段熟成により、肉から余分な塩分が自然と排出され、カドのないまろやかな味と、チーズのようにクリーミーな脂が生まれる。出荷まで実に28日間。「ソミュール液には独自の隠し味を加えています。ソミュール液というより“旨みのつゆ”に漬ける感覚ですね」と髙﨑氏。目指すは宮城のソウルフードだ。

そんな「宮城野ポークベーコン」を、この夏から秋にかけて実施した「宮城食材フェア」で提供したのが「仙台屋」。宮城の食材を使ったこだわりの料理が並ぶ同店では、食材の情報には敏感。ジャンボン・メゾンの商品も、以前から気になる存在だった。「食材の情報があっても、仕入れてお客様に提供するまでにはパワーが必要。流通コストの問題もあります。そこを単純化できたのが『宮城食材フェア』でした」と、飲食事業本部長の坂本竜生氏。「髙﨑さんのベーコンは、店に届いた時点で完成品。だから余計な手を加えない方がいいと思いました。旨みが濃く、味がしっかりしているからこそできるメニューです」と語る坂本氏の店で提供するのは「絶品宮城野ポークベーコン炙り」。厚めにカットしたベーコンを炭火で軽く炙ったシンプルな一皿だ。

「仙台屋」、そして坂本氏が大事にするのは、「おいしい食材にはストーリーがある」という想い。「なぜおいしいのか。お客様がその背景を知れば、2倍にも3倍にもおいしく感じられるはず」(坂本氏)。来店客に自然な形で食材のストーリーが伝わるよう、スタッフの接客も重要視しているという。ジャンボン・メゾンの「宮城野ポークベーコン」も、「仙台屋」のシェフの手とスタッフの言葉が加わり、特別な逸品として来店客の元に届けられている。

生産者
ジャンボン・メゾン
宮城県大崎市岩出山下野目字大下170-1
http://circle28.petit.cc/
女性従業員7名で食肉加工を行い、「岩出山家庭ハム」ブランドで出荷。商品は、宮城県内の場合は髙﨑氏が直接取引先に運び、道の駅や仙台市内のデパートなどで販売されている。オクトーバーフェストなどのイベントにも積極的に出店する。
サクラのチップで時間をかけてスモーク。この過程で不要な脂をしっかりと落とし、風味豊かに仕上げる
ベテラン従業員が見事な手さばきで肉の脂を除き成形。肉は、脂肪が少なめであっさりとした、地元の宮城野ポークを使用
工房ではソーセージやハム、スペアリブなども作っている。間近に迫ったイベントに向け、燻製したソーセージを棒に刺して準備中。
ソーセージには天然腸を使い、均一な太さに仕上げる。髙﨑氏は、女性では非常に珍しいカッター(ソーセージ作りにおいて肉挽きなどの重要な工程を担う職人)でもある。作業の際は、前日から集中力を高める
飲食店
みちのく炭火ダイニング 仙台屋
宮城県仙台市青葉区一番町3-9-13 DATEONEビル7F
http://r.gnavi.co.jp/t049601/
宮城を中心に東北の厳選食材を集め、炭火焼きなど食材を活かした料理を提供。料理の質を求める40~50代のビジネスマンを中心にリピーターが多い。日本酒の品ぞろえも豊富で、定番の銘柄以外に、15種前後を週ごとに入れ替えている。
メニューブックには、生産者や店の想い、そして使用している食材や調味料にまつわるストーリーをイラスト付きで紹介している
「絶品宮城野ポークベーコン炙り」含め、フェアでは5つの特別メニューを提供。フェア用のメニュー表は、ご当地食材を紹介するツールにもなっている
株式会社プラクシス 飲食事業本部長
坂本 竜生 氏来店客から銘柄のリクエストが多い日本酒は、自身が仕入れを担当。東京出張などを通して、飲食店の傾向やユーザーのニーズを学び、店長として店舗づくりに活かしている。

「産地フェア」で全国の食の魅力を発信!

http://r.gnavi.co.jp/foodfair/

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※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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