2019/08/13 特集

こだわりの自家製で差をつける!

素材選びや製法にこだわることで、オリジナリティが表現できる“自家製”メニュー。売りになり、差別化ができるほか、原価を抑えやすいというメリットも。自家製にこだわり、個性を打ち出している2店舗を紹介する。

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“ここだけの逸品”を複数用意して、集客力アップ!

山形牛一頭買い ITAMAE焼肉 美美【東京・北千住】

[HOMEMADE MENU]美美 生冷麺 950円(ハーフ 713円)研究を重ねた自慢のモチモチな麺を存分に味わってもらえるよう、あえてプレーンで提供。添えられるキムチも自家製でおかわり自由

試行錯誤を重ねた冷麺が焼肉と並ぶ看板料理に

 2009年、東京・北千住駅近くにオープンした「山形牛一頭買い ITAMAE焼肉 美美(びび)」。上質な肉をリーズナブルな価格で楽しめると評判を呼び、10年目の現在、多くのリピーターを獲得する繁盛店だ。最大の特色は、代表の佐藤雄生氏が山形の牧場へ自ら足を運び、山形牛を一頭買いしていること。野菜や米も信頼する生産者から直接取り寄せている。客層の中心は20~40代で女性が半数を占め、記念日や女子会の利用も多い。

 焼肉メニューだけでなく、サイドメニューのラインナップにも力を入れており、その代表格が、オーダーを受けてから1人前ずつ打つ自家製の「美美 生冷麺」(950円)だ。「お肉がおいしいと褒めていただけるのはうれしかったのですが、それは私の力というより生産者のおかげであり、オープンから間もなくしてジレンマを感じました。自分にしかできないものでもお客様に評価されたいと思い、焼肉店で冷麺の麺を自家製で作っているところがほとんどなかったため、自分で作ろうと考えました」と、佐藤氏は開発の経緯を語る。

仕込みの段階で生地を一度製麺機で圧力をかけ、オーダーを受けてから再度、製麺機にかけることで、強いコシとつるつるの食感が生まれる
麺の形状も試作を繰り返し、噛み応えがあって舌触りがよい中太の丸麺に。製麺してすぐにゆでるため、もちもち感が一層際立つ

 その後、各地の店の冷麺を食べ歩いたり、製麺所で作り方を学んだりと、ゼロから知識を身に付けて試作をスタート。材料の中力粉、でんぷん、水の配合を少しずつ変えながら試行錯誤を重ね、理想のモチモチ・つるつるとした食感を追求。数年越しでようやく納得のいく麺が完成し、2014年、店内中央に製麺ブースを新たに構え、冷麺をメニューに加えた。

フロア中央に設置された製麺ブースは客席からよく見え、実演の様子が来店客の目を引く。打ちたてであることを文字でもアピール

 自慢の麺そのものを楽しんでもらうため、あえて具材は加えずプレーンで提供。鶏ガラベースのスープはやや酸味を利かせ、同じスープを凍らせて削ったものを上にトッピングすることで、最後まで味が薄まらず味わえるよう工夫している。客席から製麺の様子が見えることもあり、1日分(約20食)が開店から3時間ほどで売り切れる人気ぶり。そのため、予約時やファーストオーダーの際に取り置きの依頼をする人も多いという。

[HOMEMADE MENU]自家製丸ごとトマトのキムチ 626円 静岡の生産者から直接仕入れる高糖度の完熟トマトを使用。塩漬けした後、特製のハチミツジャンに2日間漬け込み、味を染み込ませる
[HOMEMADE MENU]はちみつコッチョリキムチ 518円 刻んだ生のハクサイを、オーダーを受けてから辛さ控えめの自家製ジャンで和えて提供。サラダ感覚で味わえると好評

 そのほか、佐藤氏の韓国料理店での修業経験を活かし、キムチもすべて自家製。糖度の高い完熟トマトを使用した「自家製丸ごとトマトキムチ」(626円)や、サラダ感覚で味わえる「はちみつコッチョリキムチ」(518円)など、オリジナルのキムチをそろえている。どちらも日本人の嗜好を意識した甘辛い味付けで好評だ。

  • メニューブックでも自家製であることや、生産者の情報なども入れてこだわりを紹介
  • 自家製のポン酢(写真左)は「飲める生ぽん酢」と明記するほどマイルドでフルーティな味わい。焼肉注文時には、焼肉ダレとともに提供

 「ほかにはない“オンリーでスペシャル”なメニューを打ち出すことが、当店に足を運んでもらうきっかけになっており、集客や売上につながっています」と佐藤氏。加えて、自家製にすることで既製品を仕入れるよりも原価を抑えることができ、その分、肉の仕入れにコストをかけることができるため、高い顧客満足度につながっているという。「肉に原価がかけられるということは、良質な牛を適正価格で購入でき、生産者にもきちんと還元できるということです」と佐藤氏。タレやポン酢、ドレッシングに至るまで自家製を徹底。今後も自家製にこだわり、顧客満足を追求していく考えだ。

山形牛一頭買い ITAMAE焼肉 美美【東京・北千住】
東京都足立区千住旭町39-7 杉山ビルB1
https://r.gnavi.co.jp/e890400/
JR北千住駅東口から徒歩3分。住宅街が広がり、大学なども点在するエリアに立地。白と赤を基調とした洗練された空間が好評で、女性の来店も多い。
株式会社Group Yusei 代表取締役 佐藤 雄生氏(左) 常務 佐藤 希枝氏(右)
雄生氏は都内や関西の焼肉店などで10代から修業を積み、23歳で地元・北千住に同店をオープン。妹の希枝氏がホールを担当する。

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