繁盛の法則 3カ条
- 水産会社の直営店としての強さを発揮
- 植物性飼料で育てた臭みのないマダイを使用
- 1つの鯛めし膳で3通りの食べ方を提案
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隠れ家的な立地を選び、個性的な専門店を出店
愛媛・西予(せいよ)市の水産会社、赤坂水産有限会社が、自社で養殖しているマダイを使った鯛めし専門店「鯛めし紅坂(あかさか)立川本店」を、2025年10月17日にオープンした。JR立川駅から徒歩6分ほど、小さな公園の近くの住宅街にある、14坪24席の隠れ家的な店舗である。
代表的な商品である「白寿(はくじゅ)」は、熟成マダイの刺身に秘伝のタレをかけ、卵黄、刻みノリ、青ネギをのせたものに、白飯、鯛みそ、漬け物がセットになる。マダイの刺身の量によって、通常の「梅」(1,900円)、刺身の量や厚みが梅の1.5倍になる「竹」(2,500円)、2倍になる「松」(3,150円)を提供している。食べ方は、まずマダイの刺身をタレと卵黄につけ、白飯と食べる。刺身が4切れほどになったところでスタッフに声をかけ、温かい鯛だしをご飯にかけてもらい、鯛茶漬けとして食べる。さらにマダイのほぐし身と麦みそを合わせた鯛みそを溶かし、雑炊風に味を変えて食べる。
マダイの刺身をこのように堪能できるのは、臭みや雑味がなく、あっさりとしながらもパサつきのない「白寿真鯛 0(ゼロ)」を使用しているからに他ならない。「白寿真鯛 0」とは、赤坂水産が試行錯誤しながら養殖できるようになった、エサに魚粉を一切使わず、植物性タンパク質を原料とする飼料で育てたマダイのブランド名である。しかも水揚げ時の適切な処理により、臭みや腐敗の原因となる血を抜くことで、長期保存が可能となり、よりうま味を感じられるようになる。
「この『白寿真鯛 0』であれば、私は収獲後7~9日めがうま味が増しておいしいと思っています。脂ののる冬場なら熟成12日めでもすごくおいしいですよ」と、オーナーであり赤坂水産取締役の赤坂 竜太郎 氏は語る。
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一次産品の生産者と消費者が“愛し愛される関係”の構築をめざす
赤坂氏は、祖父が1953年に創業した赤坂水産の3代目として1985年に生まれた。数学が好きだったことから立命館大学および同大学院で統計や確率を専攻し、卒業後はその知識を生かして東京の保険会社に就職し、資産の価値算定を行う部署に配属され、3年間にわたり数理的な分析業務に携わった。その一方で、若く優秀な人材が次々と集まる東京の金融の現場と、担い手不足が進む地方の水産会社を見比べたとき、自分が本当に必要とされている場所はどこなのかを考えるようになり、後者を選んだ。2011年、26歳で帰省し、ヒラメとマダイの養殖をメインとする赤坂水産に入った。
しかしながら、当初は自分自身に水産業の知識がなく、養殖に関するデータが十分に蓄積されていなかったことから、赤坂氏は転職後しばらくは自身の決断を後悔する日々だった。それでも2014年からマダイの養殖事業を任されることになり、まずマダイのエサである輸入魚粉代が養殖費用の6割を占めていることを問題視した。長期的にマダイの養殖を持続可能にするために、飼料の選定、効果的な給餌量、給餌方法などを、IoTやAIを駆使しながら模索する日々が始まった。
「入社後5年ほどしてようやく各種のデータがまとまってきたのと、私自身にも水産業の知識がついてきたことで、2016年くらいからやっと結果が出始めました。まず魚粉量を抑えることができるようになり、その延長線上で植物性タンパク質の飼料を使い、特に抗酸化作用の強いゴマを加えた飼料で育てたマダイを『白寿真鯛』と名付け、2019年から販売したのです。あっさりしていて身持ちがいいと好評をいただいたので、さらに魚粉を一切使わない飼料で育ててみようと取り組み、2022年から販売を始めたのが、魚粉量0の『白寿真鯛 0』なのです」と赤坂氏は説明する。
こうして生まれた「白寿真鯛 0」は、資源への配慮と品質を両立した持続可能な魚として注目を集め始めている。この「白寿真鯛 0」をより幅広い人たちに好きになってもらいたい、そのためにも接点となる飲食店を出店したいと赤坂氏が考えるようになったのは、実は2024年から突如として起こった米不足、米価格の急騰といった「令和の米騒動」がきっかけだった。
「一次産品の生産者と消費者が愛し愛される関係を作り、日本人の意思で社会が変わらないといけないと私は思っているのです」と語る赤坂氏。米にしろ魚にしろ、生産者と消費者がお互いに理解し合い、尊敬し合ってこそ、国内での食料生産が持続できるという考え方だ。
赤坂氏は、出店場所としていろいろな候補があった中でも、観光地やビジネス街ではなく、日本人の生活の場である西東京で物件を探し、目的を持って来店してもらえそうな立川の現物件を選んだ。以前はもつ焼き店だった居抜き物件で、2025年8月に契約した。
飲食店経営の経験が全くなかった赤坂氏は、西予市のすし活魚料理店「和泉屋」の店主である宇都宮 大輔 氏に協力を依頼した。「白寿真鯛 0」の卸し先でもあり、和泉屋独自の鯛めしが一番おいしいと思っていた赤坂氏は、新店舗の料理長として宇都宮氏を迎え、基礎固めに尽力してもらっている。
オープンすると、鯛めし専門店という新奇性と、マダイがもともと持っている祝いの魚、高級魚といういいイメージが幸いし、中高年女性のグループなどを中心にコンスタントに誘客するようになった。客単価は2,400円で、週末には140人ほどが来店する日もある。またマダイの使用量は週に120尾ほどと、同様の規模のすし店と比べても10倍以上というケタ違いの量になっている。
同店が愛媛産のマダイを使った鯛めし専門店として、西東京で認知度を高めている要因は以下のようになるだろう。
- マダイの養殖を手がける水産会社の直営店としての流通の強さを発揮している。
- 魚粉を使わず、植物性タンパク質を原料とする飼料で育てた臭みのないマダイを熟成して使用している。
- 商品は鯛めしに絞り込みつつ、3通りの味わい方を提案し、変化を楽しめるようにしている。
「実は鯛めしといってもさまざまで、愛媛の北部ではご飯に炊き込むもの、南部では刺身を使うことが多いです。熟成したマダイの刺身を使う鯛めしが、西東京の名物、さらには文化になればいいなと思います」と語る赤坂氏。
特に週末は予約で埋まるほどになり、夜は「もっとメニューを増やして欲しい」という要望も出てきた。しかし、あくまでも鯛めし専門店として、鯛めし自体の品質をより高めていきたいという赤坂氏の思いと相容れなくなる懸念があるため、2026年1月からは、夜の営業日を週末のみに絞っている。また、赤坂氏や宇都宮氏が愛媛に戻っても、東京のスタッフだけで稼働でき、さらには複数店舗の出店ができるように、人材の育成にも取り組んでいく。
(Text and shop photo by Food Biz, )
住所
東京都立川市錦町1-5-15 らびっとはうす1F
営業時間
月~木曜日11:00~14:30(LO.14:00)
金~日曜日・祝日11:00~14:30(LO.14:00)、17:30~21:00(LO.20:30)
定休日
無休
https://taimeshi-akasaka.com/
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