渋谷「d47食堂」全国の郷土料理から海藻3品!定番食材なのに新しい“ヒミツの美味”を深掘り

旅に出たら、観光客向けの名物料理よりも、地元の家庭でひっそりと受け継がれている“ヒミツの美味”を味わってみたい――。そんな願いをズバリかなえてくれるのが、東京・渋谷ヒカリエ8階にある「d47食堂」です。スタッフが自らの足で集めたディープでマニアックな郷土料理や、地方の特産物を使った郷土料理を通じて、日本の食の原点に出合えるメニューのなかから、今回は「海藻料理」にフォーカスします。

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郷土の海藻料理3品(真昆布・あおさ・青のり)

海藻料理3品:「真昆布のだしがらきんぴら」(500円)、「伊勢たくあんとあおさのポテトサラダ」(650円)、「すじ青のりがけ黒はんぺんフライ」(通常4枚で1,250円。写真はハーフサイズ)

海藻は、子どもの頃はそのおいしさがわからなかったのに、年をとるにつれてしみじみと感動するようになった食材の一つです。とはいえ、残念ながら外食では、汁物の具材や麺のトッピングなど、決まった使い方でしか見かけないなと思っていました。ところがある夜、渋谷駅の真上にある夜景のきれいな酒場で、伝統的なのにどこか新しい、不思議で豊かな海藻料理に出合ったのです。

今回は、週末の酒場巡りが趣味のフードライター・桑原 恵美子さんが、日本全国津々浦々のさまざまな料理を提供している「d47食堂(ディヨンナナしょくどう)」の海藻料理3品を紹介します。

桑原 恵美子
フードライター。十数年間にわたり、新聞社系の媒体で大手チェーン飲食店や新オープンの商業施設の飲食店、食品メーカーを中心に取材。ぐるなび媒体「dressing」でも100軒以上の飲食店を取材。「ラクなのに美味しい 驚異の弱火調理法」(三空出版)など料理レシピ本の構成にも携わる。
訪れた飲食店を紹介している個人ブログ:
https://ameblo.jp/amaguri0111/theme-10066247104.html

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d47食堂(東京・渋谷)

【店舗Data】
d47食堂(ディヨンナナしょくどう)
業態:昼は食堂、夜は酒場
席数:56席(カウンター12席、テーブル44席)
客単価:昼2,000~3,000円、夜4,000~5,000円
客層:20~40代、男女比4:6、デザインに関心の高い層や外国人客も多い
住  所:東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ8F
アクセス:JR・東京メトロ・東急線・京王線渋谷駅直結
営業時間:11:30~16:00、18:00~21:00
定休日 :水曜日
https://www.d-department.com/ext/shop/d47.html
https://r.gnavi.co.jp/mfdzrah90000/map/

目次
昼は郷土料理の「食堂」、夜は日本全国の味で呑める「酒場」
地味な食材なのに面白い!知ってる味なのに裏切られる!
現地へ赴き、舌で学んだ食文化をメニューに落とし込む
デザインの力で、食文化の軽やかな入り口を作る

昼は郷土料理の「食堂」、夜は日本全国の味で呑める「酒場」

渋谷ヒカリエ8階にある「d47食堂」は、2012年4月のヒカリエ開業と同時にオープンしました。渋谷らしさを大切に、人と人が交流し、新しい価値を生み出す複合空間「クリエイティブスペース8/(はち)」。「d47食堂」はその中の“食”のコンテンツ。昼は食堂、夜は酒場として営業しています。

  • 渋谷ヒカリエ8階の一角にある。昼は、マニアックな郷土料理や地方の特産物を使った料理を定食で味わえる食堂
  • 夜は、郷土料理で呑める酒場となる

店に入って息をのむのは、高層階ならではの絶景。昼はやさしい光に包まれながら渋谷の街を一望でき、夜は迫力あるネオンサインやデジタルサイネージを堪能できる、穴場スポットです。

テーブル席は、スクランブル交差点など渋谷の景色を一望できる開放的な空間
カウンター席には、食に関連する書籍が並ぶ。酒場タイムの夜景も、大きな魅力の一つ

定食中心の昼の「食堂」タイムとは一転して、夜は「酒場」として、日本全国津々浦々のさまざまな料理を提供しています。ユニークなお料理の中でも、特に私が愛してやまないのが、日本全国の海藻を使った料理の数々です。

地味な食材なのに面白い!知ってる味なのに裏切られる!

手前から時計回りに大阪「真昆布のだしがらきんぴら」、 三重「伊勢たくあんとあおさのポテトサラダ」、静岡「すじ青のりがけ黒はんぺんフライ」

「d47食堂」の個性豊かな海藻料理の中でも特に私が愛してやまないのが、大阪の老舗昆布問屋・こんぶ土居の真昆布のだしがらと野菜で作ったきんぴら「真昆布のだしがらきんぴら」です。元々はこんぶ土居のご主人が、だしの素の普及でミネラル豊富な昆布そのものを食べる機会が減っていることに危機感を抱き、だしがらの活用を提言した自著の中で紹介している料理だとか。

「真昆布のだしがらきんぴら」は、昆布のだしがらを無駄にすることなく使い切るために老舗昆布問屋・こんぶ土居のご主人のレシピを参考にした一品。昆布に含まれる豊富なミネラルの多くはだしがらに含まれているという

栄養面や持続可能な食文化の重要性もさることながら、最大の魅力はおいしさです。厚みのある高級昆布だからこそ味わえる絶妙なしゃっきり食感、「昆布を食べている」と実感できる風味に、初めて食べた時は衝撃を受けました。

  • 三重県の「伊勢たくあんとあおさのポテトサラダ」には、伝統野菜「御薗大根」を使用した伊勢たくあんが使用されている
  • たっぷりのあおさが爽やかな香りと食感を添える。あおさのシーズンが終わると、海藻はフノリに変わる

ポテサラに甘いたくあんをトッピングしたアレンジは居酒屋で時々見かけますが、「伊勢たくあんとあおさのポテトサラダ」に使われているのは三重県の「伊勢たくあん」。伝統野菜「御薗大根」を使い、米ぬか・塩で発酵させる昔ながらの製法で作られているので、発酵によって生まれた奥行きのある酸味と甘みがマヨネーズの酸味をやわらげています。さらに磯の香りの高いあおさがたっぷり入っているので、ポテサラなのに「からだにいいものを味わっている」という実感があるのです。こんなに罪悪感のないポテサラがあるなんて。

静岡県は、すじ青のりと黒はんぺんを組み合わせた「すじ青のりがけ黒はんぺんフライ」

静岡の食文化を象徴する食材の一つ「黒はんぺん」をフライにし、仕上げに香りが強い「すじ青のり」をたっぷりトッピングしたのが「すじ青のりがけ黒はんぺんフライ」。サクサクの衣の香ばしさ、青魚のコク、青のりの香りが口の中で爆発します。静岡の老舗ソースメーカーである鳥居食品のウスターソースをかけることで、静岡の食文化をさらに身近に感じられます。

この3品の海藻料理に共通しているのは、食べ慣れているはずの海藻なのに新しい面白さがあり、地味な素材のはずなのに不思議なインパクトがあること。食べているとたまらなく日本酒が飲みたくなるのも、共通しています。もしかしたらそれは、縄文時代から何十種類もの海藻を食べてきたという、日本人のDNAのせいかもしれません。

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現地へ赴き、舌で学んだ食文化をメニューに落とし込む

「『d47食堂』は、デザイン活動家のナガオカケンメイによって創設された『ロングライフデザイン』をテーマとするストアスタイルの活動体D&DEPARTMENT PROJECTの一つです。私たちの軸にあるのは、一過性の流行ではなく、その土地に根づき長く受け継がれてきた価値あるものを丁寧に掘り起こしていくという考え方です」(店長・大北 吾子さん)。

料理長の植本 寿奈(すな)さん(写真左)と、店長の大北 吾子(あこ)さん(同右)。料理長の植本さんは年に数回、1カ所につき5日間、定食メニュー考案のため地方に滞在して郷土食を取材している

料理長の植本 寿奈さんによると、メニューで海藻にフォーカスするようになったきっかけは、2024年に渋谷ヒカリエ8階「d47 MUSEUM」で開催された食文化企画展「NIPPON UMAMI TOURISM」(通称:うまみ展)だそうです。

「この展示で日本のうまみの源をたどる中で、近年、昆布をはじめとする海藻の収穫量が減少しているという現状を知り、それを知ってもらう意味も込めて意識的に打ち出しました。実際に郷土料理の開発のために各地を訪れる中で、海女さんなど生産者の方々から直接話を聞く機会も多く、全国各地の海藻文化に触れてきたことも大きな理由です」(植本さん)。

名物の一つが、店名の由来になっている47都道府県のおいしい食材をセレクトした定食。現在は、2026年6月25日から3日間行われた「木桶による発酵文化サミットin東京2026」にちなみ、木桶仕込みの醤油を使った「5種類の木桶醤油定食」を提供しています。

次世代を担う若手醸造家の造る醤油を中心に5種類の醤油を味わえる一膳「5種類の木桶醤油定食」(2,750円)。写真上から時計回りに「しろたまりの冷やしおでん」「たまりのころ芋の煮っころがし」「薄口の生海苔のお吸い物」「濃口のかきまでご飯」「再仕込みのしょうゆ豆」(画像提供:d47食堂)
過去の定食の例。大分の郷土料理「りゅうきゅう」をメインにした「大分りゅうきゅう定食」(写真左)、京都の老舗佃煮店「津乃吉」の食材やだしを生かした「京都 鶏の山椒煮と『津乃吉』の佃煮定食」(同右)
日本各地から取り寄せたクラフトビールやワイン、ジュースの飲み比べも人気メニュー。「リンゴジュース飲み比べ」(2,000円)は、山形県のリンゴ農家「リンゴらっぱ」が製造している3種類のりんごジュースを、原料のリンゴ別に飲み比べできる
  • 「日本酒飲み比べ(4種)」(1,600円)。個性の異なる4つの日本酒を、それぞれの味わいを引き立てる形状の酒器で飲むことができる。敷き紙にはそれぞれの酒の由来や味の特徴が記されている
  • 香川県産の黒糖と柑橘を使用したカクテル「白下糖(しろしたとう)柑橘サワー」(1,100円)。カウンター席で夜景を眺めながら飲む時間は格別

デザインの力で、食文化の軽やかな入り口を作る

D&DEPARTMENT PROJECT内には編集部があり、各都道府県の“らしさ”を、デザインの視点から捉え直して紹介するデザイン観光ガイドブック「d design travel」を年2回発行しています。その取材のために約2カ月間、その土地に暮らすように滞在し、さまざまな人からの情報を収集しているのだとか。その情報を元に「d47食堂」のスタッフも5日間現地へ取材に行くことでマニアック郷土料理を掘り起こすことができるのでしょう。

  • 生産者の思いや置かれている状況を伝えることも狙いのひとつなので、メニューには生産者の情報がとても多い
  • 生産者を招いてのワークショップや勉強会など、「食」に関わるイベントも定期的に開催されている

「d47食堂」の郷土料理をいただいていると、その土地に行かずして、生産者の方々と深く語り合っているような気持ちになります。もしかしたら料理は、その地方の文化への軽やかな入り口であり、その入り口をデザインしているのが「d47食堂」なのかも……。そう考えると私たちはこの店で郷土食を味わいながら食文化を学び、同時にデザインというものの大きな意味も教えてもらっているような気がします。

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