ハワイ発 フレッシュメニューが話題の農場カフェ 後編

ハワイでも新鮮でおいしく、安全な野菜やフルーツを求める人々が多く、そこで生まれたのが農場で育った農作物を味わえるファームカフェ。後編では、オアフ島にある農家のカフェをリポート。

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Vol.82

店頭で手に取る食材が「どこで、どのように作られているのか」など、食の安全性が叫ばれる近年、ここハワイでも“地産地消の実践”や“オーガニック食品の摂取”が一般的なライフスタイルの1つとなっている。新鮮でおいしく、安全な野菜やフルーツを求める人々の需要と、それを供給する農家とがマッチして生まれたのが、農場で栽培した農作物を味わえるファームカフェ。オアフ島の農業地帯にある2つの農家の注目カフェをリポートする。

農場で育てられた野菜をふんだんに使った料理を併設のカフェで食べられる。野菜本来のおいしさを実感できる
農場の緑と、その背景の山々を見ながら楽しむランチは格別。観光客だけでなく、地元客も訪れ、人気スポットとなっている
軽食だけでなく、ボリュームのあるメニューもラインナップする店も。写真は、収穫されたばかりの新鮮な野菜と玄米、近辺の海で獲れたカジキを盛り付けた一品

ノースショアの新名所で楽しむ、新鮮野菜とフルーツの軽食

冬の大波とサーフィンで有名なオアフ島のノースショア。その最北端に位置する町・カフクは、20世紀前半より大規模プランテーション農場の町として栄えてきた。そんなカフクの大農場で働いていた日系人・マツダ家とフクヤマ家の先祖が、それぞれ農家として独立。1990年代になり、かねてから友人だった2家族の子孫が2つの農場を正式に合併して生まれたのが「カフク・ファームズ」だ。現在、アップルバナナやパパイヤ、リリコイ(パッションフルーツ)などのフルーツのほか、ナスやハワイのパーティでよく使われるタロの葉、ケールなどを主に生産しており、観光客向けに広々とした畑をワゴンで巡るツアーも実施している。

「カフク・ファームズ」で行っている広い農場をワゴンで回るツアー。パパイヤやアップルバナナ、タロなどの畑を見て回る。子どもたちの“食育”にもなる貴重な体験だ

この農場に2010年に併設され、地域住民や観光客に大好評を得ているのが「ファームカフェ」(Farms Cafe)。メニューには「ファーム・ピザ+サラダ」(8.75ドル=約1,040円)や「グリルド・ベジー・パニーニ」(9.50ドル=約1,130円)などの軽食や、カットフルーツ、スムージー、絞りたてレモネードなどのドリンクなどが連なる。どれもシンプルだが、食材のフレッシュさはひと口食べれば納得。本当に美味だ。

これらのメニューを手作りするのは有名シェフではなく、農場で働くスタッフたち。有名レストランとはまた違った、農場ならではの鮮度と、素材の味が活きるシンプルな味つけが楽しめる。

ワゴンに乗って農場を回るツアーでは、子どもたちは大興奮。ツアーとカフェの経営を担当する同農場4代目のカイリー・マツダ・ラム氏は、「最近は、野菜やフルーツがどうやって作られるのかだけでなく、食材の原型さえも見たことがない子どもたちが多いですね。ツアーで農場を回った後は、農場で採れた新鮮な野菜やフルーツをカフェで実食する。子どもたちにとってすばらしい機会になっているのではと考えています」と語る。

英語では「Farm to Table(ファーム・トゥー・テーブル)」と呼ばれる「地産地消」。農場が併設するカフェは、素朴かつシンプルなかたちで成功を収めている。

グリルしたての野菜がたっぷりの「ファーム・ピザ」。野菜が苦手な人でも、ここの野菜を食べるとその新鮮さとおいしさに驚く
絞りたての「手作りレモネード」は清涼感が抜群。普段飲んでいるレモネードとは別もののようなフレッシュさを実感。アイスティーやスムージーも美味
店内では、農場で採れた野菜やフルーツ、農作物で作ったジャムやドレッシングなども販売している
SHOP DATA
ファームカフェ/カフク・ファームズ内(Farms Cafe / Kahuku Farms)
56-800 Kamehameha Hwy.
Kahuku, HI 96731 U.S.A.
http://www.kahukufarms.com/

「ヘルシーライフ」を提唱するオーガニック農場の本格派カフェ

普段、日本人観光客がほとんど足を踏み入れないローカルエリアである、オアフ島西部のワイアナエ。その奥に位置する地域、ルアルアレイ・バレー(Lualualei Valley)で1977年から営業しているのが、約14.5エーカー(17,750坪)の規模を持つ非営利のオーガニック農場「カフマナ・オーガニック・ファーム」(Kahumana Organic Farm)だ。

新鮮な野菜の歯応えがいい人気メニュー「マカデミアナッツ・ペスト」。食べると、体の中からキレイになる感覚を覚える

ここは農業だけでなく、ホームレスに低家賃で住まいを提供したり、知的障がい者に施設や労働の場を与えるなど、行政の補助を受けながら地域住民の支援も行う社会的施設でもある。広々とした農場では現在、ニンジン、ビーツ、レタス、ケール、大根、各種ハーブ、その他数多くの野菜やフルーツを栽培。収穫したての新鮮な野菜を、地域の一般住民や高級レストランに販売している。

その敷地内に2009年オープンしたのが、農場直営の「カフマナ・カフェ」(Kahumana Cafe)。農場で収穫したばかりのオーガニック野菜やフルーツはもちろん、伸び伸びと飼育される鶏の産みたて卵、地元漁師がその日に釣った魚など、新鮮でヘルシーな食材を利用し、素材の風味を活かした料理を提供している。

人気メニューは、全粒粉のパスタを使った「マカデミアナッツ・ペスト」(12ドル=約1,430円)や「グリーク・サラダ」(14ドル=約1,670円)、そしてその日獲れたばかりの魚を使った「デイリー・スペシャル」(時価)。特に人気の「マカデミアナッツ・ペスト」は、プラス5ドル(約600円)で、チキンかアヒ(マグロ)、エビを具として追加することも可能だ。料理はハーブやハワイアンソルトを使ったシンプルな味付けが多い。体に優しく野菜本来の味わいが楽しめるため、アクセスが悪い場所にもかかわらず連日多くのリピーターが訪れる。

地域に根ざすオーガニック農場とそのカフェは、人の健康と地球環境の改善、そして社会福祉に大きく貢献する、ハワイではほかに類を見ない場所として、ますます注目を集めている。

カフェは、室内席、屋外席のほか、ラナイ(バルコニー)もある。人里離れた渓谷の中にあるため、オアフ島とは思えないほど静かだ
ファームの畑。レタスやケール、チャード、トマト、ニンジンなどがオーガニック農法でていねいに栽培されており、ここの野菜を食べると野菜本来のおいしさに驚くという
SHOP DATA
カフマナ・カフェ(Kahumana Cafe)
86-660 Lualualei Homestead Road, Waianae, HI 96792
http://www.kahumana.org/

※通貨レート 1ドル=約119円

※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。