スペイン発 軽食と一線を画すブランチがブーム 後編

スペイン・バレンシアでブームなのが、ゆったりとランチを楽しむ「ブランチ」。後編ではメニューだけでなく、リラックスできるスペースやサービスを充実させて成功している3店を紹介。

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Vol.90

スペイン第3の都市、バレンシアで食の新たなブームとなっているのが、ゆったりとランチを楽しむ「ブランチ」。前編では、ブームの先駆けとなった店舗にスポットを当て、メニューの工夫など人気の秘密をリポートした。後編では、ブランチメニューだけでなく、リラックスできるスペースやサービスを充実させて成功している3店舗を紹介。加速する、バレンシアの最新ブランチ事情をお届けする。

ライ麦の全粒粉など、健康的な食材を用いたブランチと、スパが体験できるプランを提案するホテルが大好評
親子で楽しめるブランチメニューを提供するとともに、子供が楽しめる空間を作って人気のカフェも登場
昼間に店内でイベントなどを行い、ブランチとともに楽しんでもらおうという店も

スパとブランチを組み合わせた優雅な「スプランチ」が話題に!

歴史的建造物のある中心部から徒歩数分の閑静な住宅街・エクスポジシオン地区。自然と調和したこのエリアに、高級ホテル「ザ ウェスティン バレンシア」(The Westin Valencia)が2007年にオープン。現在、同ホテルが提案する「スプランチ」(Sprunch)が話題になっている。

一番人気のブランチメニュー「豆腐・アボカド・スモークサーモン入りのベーグルとレタス・トマトサラダのセット」。アボカドとサーモンは栄養価が高く、スペインで人気の食材

スプランチは、「ブランチ」と「スパ」を合わせた造語。「内からも外からも健康に」をコンセプトに、緑豊かな屋外ガーデンでリラッスしながらブランチを楽しみ、ホテル内のスパを利用できるというもので、2014年2月からこのプランを提供している。価格は32ユーロ(約4,320円)。スパだけの利用で25ユーロ(約3,380円)なので、かなりお得感がある。

ブランチは、同ホテル内にあるレストラン「エル ハルディ バル」(El Jardí Bar)が提供。栄養価や抗酸化作用が高く、かつ低カロリーな「スーパーフード」と言われる食材を用いているのが特徴だ。ブランチメニューは4種類あり、「スパイシーオレンジマヨネーズ添えのトマトサラダに、豆腐・ルッコラ・アスパラガス・サーモンを添えたエッグベネディクト」、「完熟トマト・ブロッコリー・チェダーチーズ入りトルティーヤにハッシュドポテト、季節のサラダがついたセット」などから1つを選ぶ。

さらに、ヘルシー志向の人たちの間で、アンチエイジング効果が期待されると人気の「抗酸化ドリンク」を提供しているのも話題の1つだ。こちらも「ニンジン・オレンジ・ショウガ・ウコン・マンゴーのミックスジュース」や、「ブルーベリー・ホウレン草・チアシード(シソ科ミント属の植物の種)・アボカド・アーモンドミルクにグラノーラを入れたスムージー」など4種類の中から選択できる。

そして食後は、ティーソムリエの話に耳を傾けながら「ティーセレモニー」を楽しむ。ここで提供されるのは、世界最高品質といわれるイギリスの紅茶ブランド「ジンティー」のお茶だ。

ブランチの前後には、ホテル内に併設されたスパが利用できる。フィンランド式サウナ、トルコ式風呂、スチームバス、タラソテラピー(海水や海泥などを用いた海洋療法)のプールなどが楽しめる。「現代人が求めている健康を意識した料理とリラックスできるスパを組み合わせることで、盛況いただいています」とホテルの担当者は言う。

のんびりと優雅に過ごせるスプランチは、地元客を中心に、特に週末は大盛況。毎日10~16時で利用できるため、優雅にのんびりと過ごしたい30~50代の女性やカップルに圧倒的な支持を得ている。

ホテルに併設されているスパは850平方メートルもあり、サウナ、トルコ式風呂、スチームバス、温海水タラソプール、リラクゼーションエリアを備える
ホテル内にある地中海式ガーデンでブランチが楽しめるのも魅力の1つ。自然を感じながらゆったりとスプランチが楽しめる
SHOP DATA
ザ ウェスティン バレンシア(The Westin Valencia)
Calle de Amadeo de Saboya, 16,
46010 València
http://www.westinvalencia.com/
エル ハルディ バル(El Jardí Bar)
http://www.eljardibar.com/es/

ブランチとともに、ゆったりと楽しめることがキーワード

食事の魅力だけでなく、プラスアルファの楽しみを提案することで大ブレイクしたのが、「カングロ・ベルデ」(Canguro Verde)と「ウビック・カフェ」(Ubik Café)だ。どちらも近年バルやカフェの出店が相次いでいる下町エリアのルサファ地区にある。

「カングロ・ベルデ」のブランチメニュー「サーモンとタマネギをのせたライ麦パンスライス」(左)と「ゴルゴンゾーラとリンゴ、ルッコラを乗せたトースト」(右)(各2.9ユーロ=約390円)。パンに塗ったオリーブオイルが隠し味

「カングロ・ベルデ」は、それまでルサファ地区にはなかった「親子カフェ」をコンセプトに、2011年9月にオープン。ブランチメニューは大人向けだけでなく、子供向けも用意している。大人向けブランチで人気なのが、「サーモンとタマネギのせライ麦パンスライス」と「ゴルゴンゾーラとリンゴ、ルッコラを乗せたトースト」(各2.9ユーロ=約390円)。子供用にはシリアル(1.5ユーロ=約200円)や、自家製マフィン(2~2.5ユーロ=270~340円)、しぼりたてのジュース(小サイズ2.5ユーロ=約340円)を提供し、価格も手頃で好評だ。

同店が人気の理由は、ブランチメニューだけではない。子供たちが楽しめるようにと、壁の低い位置に黒板を取り付けた「お絵かきスペース」と、様々な遊び道具や絵本をそろえた「プレイスペース」を設置。さらに、店内で親子コンサートやベイビーマッサージ教室、布オムツ講座など、様々なイベントを開催し、ファミリーの心をつかんでいる。

一方、同じルサファ地区でイタリア人のリカルド・アンテヌッチ氏、ロレンツォ・ドンヴィト氏、ピエルマリア・サヴァレーゼ氏の3名が始めた「ウビック・カフェ」は、小説からアート、哲学など約7,000冊の多彩なジャンルの書籍が自由に読めるブックカフェ。2008年12月の開店以来、学生のほか、ジャーナリスト、建築士などの専門職の人たち、ファミリー、シニアと、幅広い層に支持されている。

ブランチメニューは、同店特製の「ブルスケッタ」や「フォカッチャのサンドイッチ」など、本を読みながら片手でつまめるものが人気。ブルスケッタは生ハム、トマト、ルッコラやアーティチョークなどから、2種類選べて2ユーロ(約270円)。さらに、スカモルツァやプロボローネなどのチーズの追加も可能だ。「フォカッチャ」の具はチーズ、カボチャ、トマト、アーティチョークなどから具を1種類選べる(4ユーロ=約540円)。チーズや生ハムはイタリアから取り寄せ、野菜は毎日市場に出向いて有機栽培のものを仕入れるなど、味と品質への妥協はない。

ブランチタイムは12時~夕方までとゆったり過ごせるのも特徴。店内には、テーブル席のほか、テラス席やソファ席も設置。ブランチだけでなく、「ゆとり空間」を提供したことが成功のカギと言えるだろう。

「カングロ・ベルデ」では、壁に落書きスペースを作ったり、様々な遊具を置くことで、親子が楽しく過ごせる店づくりを心がけている
「ウビック・カフェ」のブランチメニュー「生ハムとスカモルツァのブルスケッタ」。フレッシュチーズのスカモルツァは南イタリアのソレント半島で作られたものを使用する
SHOP DATA
カングロ・ベルデ(Canguro verde)
Carrer del General Prim, 1,
46006 València, Valencia
https://www.facebook.com/canguroverde
SHOP DATA
ウビック カフェ(Ubik Café)
Calle del Literato Azorín, 13,
46003 València, Valencia
http://ubikcafe.blogspot.com.es/

取材・文/ボッティング大田朋子

※通貨レート 1ユーロ=約135円

※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。