タイ発 注目を集める進化系タイスイーツ 前編

タイでは斬新にアレンジされたスイーツが登場。前編ではタイ流のアイスミルクティー「タイティー」を使ったスイーツを紹介。アイスクリームと独創的なデザートが人気のカフェ2店を取り上げる。

URLコピー

Vol.101

日本でも注目されているアジアンスイーツ。本場タイには、日本未上陸のスイーツがまだいろいろと潜んでいる。その多くは何十年も前から屋台で売られてきた昔ながらの味だが、近年、斬新にアレンジされたものが続々登場し、話題を呼んでいる。前編では、タイ人のソウルフードならぬ「ソウルドリンク」ともいうべき、練乳がたっぷり入ったタイ流のアイスミルクティー「タイティー」を使ったスイーツをピックアップ。アイスクリームが評判のカフェと、独創的なデザートがヒットしているカフェを取り上げ、タイティーを用いた最新スイーツを紹介する。

タイティーは露店や駅構内のドリンクスタンドで気軽に買え、1杯20バーツ(約70円)程度。アイスミルクティーが基本だが、ホットやストレート、レモンティーにもできる
おしゃれなカフェでもタイティーとともに、タイティースイーツが大人気。濃厚な甘さと独特な色合いを活かしたスイーツが次々に誕生し、女性の心をつかんでいる
タイの伝統菓子「ロティ」とタイティーのカスタードソースを組み合わせたデザートも登場。伝統菓子との組み合わせは、目先が変わり新鮮に映る

甘くてカラフルなタイティーのアイスクリームが傑作スイーツに

南国タイの乾きを癒す「タイティー」は、世代を越えて愛されているフレーバーティー。細かく刻まれた紅茶の葉、オレンジブロッサムウォーター(オレンジの花を蒸留して作るもので、飲料や菓子の香りづけに使われる)、スターアニス(八角)、タマリンドといった香辛料や酸味料、さらに食用色素を入れて作るもの。紅茶などを鍋に入れて濃いめに煮出し、それをフィルターで濾し、砕いた氷とコンデンスミルク(加糖練乳)を入れたグラスに注ぎ、さらにエバミルク(無糖練乳)を回しかけて作る。バニラのような甘い香りとカラフルなオレンジ色がトロピカル気分を盛り上げるドリンクで、スパイシーなタイ料理と非常に相性がよい。

一番人気の「タイティーアイス仙草ゼリー添え」(写真右)と、アンチャンという花で青く色付けしたココナッツ風味のアイスクリーム「クラーム・シグニチャー」(写真左)。各85バーツ(約290円)

2014年6月にオープンした一軒家カフェ「クラーム」(KRAM)は、高級マンションが立ち並ぶバンコクのスクンビット地区の閑静な住宅街にあり、タイの家庭料理とデザートが楽しめると、近隣のタイ人富裕層や各国の駐在マダムに評判だ。

「自分が子供の頃から食べてきた料理を、さらにおいしくアレンジして提供しています」と話すオーナーのジャン氏は、バンコクで手広く展開するカフェチェーン経営企業の後継者で、タイ人の味覚を熟知している人物。カレーや炒め物、麺料理など、どれも評判はよいが、同店の隠れた人気メニューはタイティーの自家製アイスクリームを使ったスイーツ「タイティーアイス仙草ゼリー添え」(85バーツ=約290円)だ。

アイスクリームはオーナー自らがオリジナルのレシピを考案し、専門の職人が作り上げたもの。茶葉を濃いめに抽出して風味を存分にひき出したタイティーのアイスクリームを、タイの伝統的デザートである仙草ゼリーの上に乗せ、たっぷりの練乳とカオタンというタイのあられをトッピング。タイティーの濃厚な甘さとほろ苦い仙草ゼリーは絶妙なコンビネーションで、3つの異なる食感も楽しく、「辛さでほてった口の中を癒し、食後のデザートにピッタリ」と、タイ料理を食べ慣れていない観光客にも好評だ。

タイティーのアイスクリームをそろえるカフェは多くあるが、同店はさらに一歩進んで、組み合わせる食材と盛り付けにもこだわった逸品に仕上げたことで、ファンを獲得。味もさることながら見せ方も大切という好例だ。

人気のワンプレートメニュー「豚ひき肉のバジル炒め」(写真手前/130バーツ=約440円)。激辛だが、練乳入りの甘い「タイアイスティー」(写真右上/60バーツ=約200円)が口の中の辛さを和らげる
都心とは思えないほどに広い敷地に立つ白い一軒家で営業。庭にはテラス席もあり、ゆったりとしたぜいたくな時間が楽しめる
SHOP DATA
クラーム(KRAM)
113 Sukhumvit Soi 39, Klongton Nua, Wattana, Bangkok
http://www.facebook.com/krambkk

庶民の味がラグジュアリーなスイーツに大変身

タイティーを使ったオリジナルスイーツで注目を集めるのが、バンコクの地元名士が多く住む高級住宅地として有名なトンロー地区にある「オードリー」(Audrey)。2011年6月、タイの有名女優であるジャニスタ氏が、敬愛するオードリー・ヘップバーンの映画『ティファニーで朝食を』をヒントに開いたカフェ・レストランだ。ラグジュアリーで優雅な雰囲気が若いタイ人女性に受け、今やバンコクに5店舗を展開する大人気カフェに成長している。

タイティークリームを挟み、タイティー風味のソースをたっぷりかけたミルクレープ「タイティー・クレープケーキ」。タイ国外でも紹介され、これを目当てに店を訪れる外国からの観光客も多い

シェフ陣は料理学校「ル・コルドン・ブルー」のバンコク校出身者で構成され、タイ料理をベースに世界各国の料理を提供する。デザートもバラエティに富み、タイティー味をはじめ、抹茶味、タイ人が好きなミロ味など、様々なフレーバーのスイーツが並ぶ。

来店客のほとんどが注文するのが、看板メニューの「タイティー・クレープケーキ」(110バーツ=約370円)。柔らかなクレープ生地でタイティー生クリームを何層にも挟み込んだミルクレープだ。そこに、切った断面が見えなくなるほどタイティー練乳クリームをたっぷりと上からかける。2種類のクリームの濃厚な甘さと、バニラのような甘い香りが絶妙に絡みあうリッチな味わいだ。国内だけでなく、日本のテレビ番組など国外のメディアでも多く紹介され、「タイティーのケーキを食べるならここ」というイメージが定着。この味を求めて、韓国や中国からも観光客が大勢やってくる。

さらにユニークなのが「タイティー・シズリング・ロティ」(165バーツ=約560円)。クレープのようなタイ南部の伝統菓子「ロティ」とバニラアイスクリームをアツアツの鉄板に乗せ、客の目の前でタイティーのソースをジュッと回しがける。鮮やかなパフォーマンスもさることながら、鉄板で焦げるタイティーソースの香りがたまらない。同店のマネージャーのルット氏は「タイティーには“タイらしさ”を演出する特別感があります。タイ旅行の記念に召し上がるお客様もいらっしゃいますよ」と話す。

タイティーのスイーツは、茶葉と練乳が入手できれば、ケーキ生地に練り込んだり、ソースにしたりと、様々にアレンジしやすいのが利点。バンコクの多くのカフェでも、パンナコッタやハニートーストなど、タイティーのスイーツが次々に開発されている。アイデア次第で大ヒットメニューを作り出せることもあって、スイーツメニューのバリエーションは増え続けており、地元の人々のみならず、観光客の間でも話題となっている。

熱々のタイティーのソースと冷たいバニラアイスがクセになる「タイティー・シズリング・ロティ」。3~4人でわけあっても十分なボリュームでお得感もある
店内はゴージャスな内装で女性を引き付ける。セレブのパーティや大企業のイベント会場にもよく使われる
SHOP DATA
オードリー(Audrey)
136/3 Thonglor Soi 11, Klongton Nua, Wattana, Bangkok
http://www.audreygroup.com/AudreyCafeRestaurant/

取材・文/さとう葉

通貨レート 1タイバーツ=約3.4円

※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。