中国・海南島発 薬食同源スイーツ 後編

和洋折衷ならぬ“中洋折衷”スイーツが人気の中国・海南島。キーワードは、体によいものを食べるて健康的に暮らす「薬食同源」の思想だ。後編では、イモや豆、米などを用いたスイーツを紹介。

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Vol.112

和洋折衷ならぬ“中洋折衷”のスイーツが人気となっている中国の海南島。キーワードは、体によいものを食べることで、健康的に暮らすことができるという「薬食同源」の思想だ。特に中国では、大豆をはじめとして、小豆、緑豆(もやしの原料になる豆)、金時豆など、日常的に食べる豆の種類が多く、また米も白米、黒米、玄米やイモなども体によい食材として古くから食されている。

後編ではそういったイモや豆、米などを用いた「薬食同源スイーツ」を紹介する。

ジャガイモ、山芋、サツマイモ、ムラサキイモ、タロイモなど、様々なイモが山積みされている海甸岛 三西路の市場。中国の食卓に「イモ」は欠かせない食材だ
おいしくて健康的な中洋折衷スイーツは若い女性に大人気。もちろんメタボが気になる甘党オジサンたちにも好評だ
「草莓豆腐花(サオメイドウフホア)」(36元=約623円)。イチゴ味のアイスクリームと生イチゴ、イチゴシロップとミルクとかき氷。その下の白い部分が豆腐。春らしい色合いが美しい

イモ好きの中国人女性を夢中にさせるイモパフェやイモアイス

日本同様、中国の女性もおいしくて健康的なイモが大好き。中国・海南島ではそんな女性をターゲットに、サツマイモやムラサキイモ、タロイモをアイスクリームやカスタードと組み合わせたイモパフェやイモプリンを提供するカフェの出店が相次いでいる。店名に「芋」の文字が入り、メインの素材を明らかにしているのはどこも同じだが(例:仙芋伝奇、鮮芋仙、仙芋世家など)、ほかとは違うメニュー開発をしようと各店がしのぎをけずっている。

ふかしタロイモやバニラアイスなどを組み合わせた「仙芋招牌(シェンユージャオパイ)」。ムラサキイモやサツマイモが原料の「芋圓(ユーユエン)」(左手前)は、モチモチした食感が特徴

島の北東部、省都である海口市の若者が集まる繁華街・東方広場にある「仙芋传奇(シェンユーチュアンチー)」は、トッピングによりなんと13種類ものイモパフェを食べられるお店。一番のおすすめが「仙芋招牌(シェンユージャオパイ)」(20元=約338円)だ。ムラサキイモとサツマイモからつくった「芋圓(ユーユエン)」と呼ばれる直径1センチほどの円筒形の餅に、ゴロッと乗せたふかしタロイモ、バニラアイスクリーム、その下に敷き詰められたかき氷のシロップには、なんと「沖縄黒糖」を使っている。冷え冷え、シャリシャリのかき氷に、ゴロゴロ、ホクホクのイモ、そしてモチモチした「芋圓」の見事なハーモニーと自然な甘みが、イモ好き女子に大人気だ。

また、「香芋紅豆布丁(シャンユーホンドウブティン)」(12元=約203円)は、ひんやりとした牛乳プリンの上にふかして温めたホカホカ、ホクホクのタロイモを大胆に乗せ、小豆をトッピング。「冷たさと温かさ」「まろやかな口あたりとしっかりとした歯ごたえ」が、絶妙のバランスで調和している。

そのほか、前編でも紹介した、中国の伝統的な漢方薬ゼリー「仙草」にタロイモや金時豆、黒タピオカ、バニラアイスなどをトッピングした「仙草5号」(18元=約304円)は、食べる前にホイップしていない生クリームを上からかけるのがポイント。豆やイモのホクホク感にアイスクリームや生クリームのまろやかさが加わり、甘いものが好きな女性の喜ぶ優しい味になっている。

同店は繁華街のショッピングエリアという立地も手伝い、主な客層は若い女性。食物繊維たっぷりのイモは、便秘にも効き、健康にもよい。ホクホクした食感も人気の秘密だ。「甘いものは大好きだけど太りたくない」という女性の心をわしづかみにした人気のイモスイーツ店は、今も出店ラッシュが続いている。

牛乳プリンとイモを組み合わせた「香芋紅豆布丁(シャンユーホンドウブティン)」。「布丁」はプリン、「香芋」はタロイモ、「紅豆」は小豆の意味。ほかに芋圓や緑豆、フルーツなどをトッピングしたものもある
「仙草5号」はイモと漢方薬ゼリー「仙草」のパフェで、金時豆、黒タピオカをトッピングしたもの。ほかにハトムギ、小豆、ピーナツやヤシなどトッピングの種類により、1号から6号まである
仙芋传奇(シェンユーチュアンチー)
海南省海口市龙华区东方广场二楼北侧
http://www.xianyu365.com/

豆や豆腐、黒米などの健康食材をパフェやプリンに!

古くから健康食品として人気のある豆類や、白米に比べて食物繊維やビタミンなどの栄養価が高い黒米、さらには胡麻や豆腐など中国料理に欠かせない食品と、ミルクやアイスクリーム、プリン、かき氷などを融合させたメニューも人気になっている。

ミルクかき氷に黒もち米と、「フルーツの王様」といわれるドリアンを組み合わせたスイーツ「榴莲忘返(リューリエンワンファン)」

海口市の中心地にある高級ショッピングモール「京华城」。その一角に店を構える「满记甜品(マンジーティエンピン)」の海口京华城(ハイコウジンホアチャン)店は、海南島に多々あるスイーツ店の中でも特に人気の店だ。1995年に香港で創業し、現在は中国全土に400店舗以上、海南島にもすでに7店舗ある。落ち着いた内装と、教育の行き届いた従業員による接客もこの店の魅力だ。

店の看板メニューのひとつが「榴莲忘返(リューリエンワンファン)」(40元=約676円)。イモや緑豆とともにふっくら炊いた黒もち米と、独特の香りが特徴のドリアンが大粒のミルクかき氷に乗っている。黒もち米は、モチモチした食感のなかにイモや豆の歯ごたえをかすかに感じる独特の舌触り。そして、ドリアンは「フルーツの王様」の名にふさわしい濃厚な口あたり。それをシャキシャキとしたミルクかき氷と一緒に口に含むと、まろやかかつ爽やかな味わいが広がる。

また、「焗荔茸西米布甸(ジュウリーロンシーミーブディエン)」(26元=約439円)は、一見すると焼きプリンだが、中をすくうと、とろりとしたムラサキイモのペーストとプルプルのタピオカが出現。そのトロトロでアツアツの食感は、焼きプリンのまろやかさをさらに引き立てている。

イチゴのババロアのような「草莓豆腐花(サオメイドウフホア)」も人気メニューで、普通の豆腐の上にかき氷、その上にイチゴシロップと牛乳、さらにイチゴ味のアイスとイチゴが乗っている。豆腐はしっかりと大豆の味がして、イチゴの繊細な甘酸っぱさとアイスのまろやかな甘さを引き立てる。

若い女性を中心に人気の創作「中洋折衷スイーツ」の数々は、洋風スイーツだけでも中華系甘味だけでも味わえない絶妙なおいしさを生み出している。これからどんな新しいレシピが生み出されるのか楽しみだ。

アツアツの焼きプリンの中に、タピオカとムラサキイモのペーストが入った「焗荔茸西米布甸(ジュウリーロンシーミーブディエン」。口に広がるトロリとした食感が人気
スイーツ店の中では、やや価格は高めだが、独創的なメニューを売りに、おいしいものを追求する女性でいつも賑わっている
满记甜品(マンジーティエンピン)海口京华城(ハイコウジンホアチャン)店
海口市龙华区玉沙路21号 京华城1F
http://www.honeymoon-dessert.com/tc/

取材・文/林 由恵(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1元=約16.9円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。