米国・LA発 人気のアボカドトースト 後編

ロサンゼルスで、朝昼の定番メニューとして人気の「アボカドトースト」。後編では、朝食以外での利用を促したりと新たな利用シーンを提案して集客を図るレストランなどを紹介。

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Vol.114

「善玉」の脂質がたっぷり含まれているアボカドは、ヘルシーで腹持ちがよく、特に朝食やブランチにぴったりの食材としてロサンゼルスで人気だ。パンとの相性もよいことから、家庭でもカフェでも近年、アボカドトーストが朝昼の定番メニューの1つになっている。とはいえまだまだ新しい食べ方。トッピングや調味料を変えることで、アレンジ方法は豊富に残されている。

後編ではトッピングに趣向を凝らしたり、朝食以外での利用を促したりと、新たな利用シーンを提案して集客を図るレストランやカフェの挑戦を紹介する。

もともとアメリカでは「ハンバーガーとフライドポテトにビール」が人気の組み合わせ。「アボカドトースト&ビール」はその牙城を崩すことができるのか
「バーでトースト」というと意外な組み合わせに感じる。だが、トーストと同じように小麦粉で作った生地に具材をトッピングしたピザはすでにバーの人気メニュー。アボカドトーストにも充分な可能性がある
2種類のアボカドトーストを提供する店も。今後、ピザのように様々なトッピングが生まれ、アボカドトースト専門店が生まれる日が来るかもしれない

朝食だけじゃない!アボカドトーストはビールとも相性抜群!

クラフトビールやワインを出すレストラン&バー「アシュランドヒル(Ashland Hill)」。ニュース番組や料理番組など、テレビ出演の多いシェフのブラッド・ミラー氏が、観光客や音楽、映画やテレビ関係者が多く集まるサンタモニカ(ロサンゼルス郡西部に位置する市)に、2015年1月オープンした店だ。

ビールのお供には脂っこいメニューが選ばれがちだったアメリカ。ヘルシーなアボカドトーストとビールの組み合わせが新たなニーズの掘り起こしにつながっている

同店でビールに合う料理として人気のメニューが、「アボカドトースト」(10ドル=約1,080円)。トーストに、塩、コショウ、レモン汁で味を調えてマッシュしたアボカドをのせて、ゴートチーズをふりかけ、ローストして甘みを引き出したトマトをトッピングする。仕上げに、酢漬けにしたパールオニオン(小型のタマネギ)とマイクロシソ(小さいサイズのシソ)を飾り、ライム、バーズアイチリ(辛みが強い南米原産の唐辛子)、燻製にした塩をかけてできあがり。バーズアイチリの心地よいピリ辛の風味が、口いっぱいに広がる。

「トースト」という名称から、朝食やランチのイメージが強いアボカドトースト。しかしパンの上にしっとりしたアボカドをのせる組み合わせは、小麦粉の生地の上にとろけるチーズがのっているピザ同様に、ビールとの相性も抜群だ。地元産を中心に16種類のビールのなかから、同店の3人のビアソムリエが“アボカドトーストに一番合うビール”とおすすめするのが「シトラ・エルセグンド」(9ドル=約972円)。シトラス(柑橘類)風の香りが特徴のシトラホップを使ったライトビールで、レモンの皮やライム汁をかけたアボカドトーストとバランスよくマッチする。

また「アシュランドヒルベネディクト」(14ドル=約1512円)も、人気のメニュー。一般的にエッグベネディクトに用いるイングリッシュマフィンではなくトーストを土台にし、潰したアボカドを塗った上にポーチドエッグをのせ、アボカドトースト風に仕上げた。ポーチドエッグのトロ~リとした食感と、トーストのカリカリとした歯ごたえの組み合わせが絶品。基本的には夕方までのランチメニューだが、特に週末はビールとセットで注文されることが多いという。

サンタモニカという土地柄、20~40代の観光客や地元の人たちをはじめ、テレビ関係者などが多く訪れる。新しいものを受け入れる客層と、アボカドトーストをビールのおつまみにするという新提案が、見事にマッチし人気を呼んでいる。

「アシュランドヒルベネディクト」のつけあわせは、ガーリックとともにローストしたのちペースト状にしたトマトと、ローストポテト。それぞれをトッピングすることで、様々な味が楽しめる
「アボカドトーストをビールのおつまみとして注文するお客様が増えています」と、共同経営者のひとりで、マネジャーのグレッグ・ラルストン氏
アシュランド・ヒル(Ashland Hill)
2807 Main Street, Santa Monica, CA 90404
http://ashlandhill.com/

新しい料理だけに、使用する素材のバリエーションは無限大!

パンとアボカドに、野菜などを加えるのが従来のアボカドトーストだが、ベースがシンプルなだけに、様々な素材をトッピングできる。これに挑戦する店の1つが、ハリウッドの南側、ブティックやレストランが建ち並ぶラブレア地区に2012年8月オープンした「The Sycamore Kitchen(ザ・シカモア・キッチン)」。自家製の素材を使用し、中東、メキシコなど様々な国の料理を融合させることをコンセプトにしている。

5ミリくらいの薄さの自家製カントリーブレッドを使って、クラッカーの上に食材をのせる感覚で考案したアボカドトースト「塩漬けにしたサーモンのタルティーヌ」

同店で一番の人気メニューは、「塩漬けにしたサーモンのタルティーヌ(フランス式のオーブントースト)」という名のアボカドトースト(11ドル=約1188円)。カントリーブレッド(パン)に、生クリームとバタークリームを混ぜ合わせたクレームフレーシュ(サワークリームの一種)を塗り、スライスしたアボカド、塩と砂糖に約10時間漬け込んだサーモン、ゆで卵、オリーブオイルとレモン汁でマリネにしたカブをのせて、ケーパーを飾り、レモン汁を絞る。塩気が利いたサーモン、酸味が利いたケーパーが、クリーミーなサワークリーム、アボカド、卵にアクセントをもたらす。カリカリとした食感のカブで歯ごたえも楽しめる。

同店では、もう1種類のアボカドトースト「目玉焼きのタルティーヌ」(11.5ドル=約1242円)も人気メニューだ。約1センチの厚さに切ったカントリーブレッドに、アボカドとヒヨコマメをすり潰して作ったハマス(中東で食される伝統的なペースト状の料理)を塗る。トマト、ホウレンソウ、半熟の目玉焼きをのせ、ルッコラとバジルをフードプロセッサーにかけて、塩、ガーリックなどで味を調えたペーストをかけて食べる。自家製アボカドハマスのクリーミーさ、半熟の目玉焼きのとろみ、トマトの甘みが、ルッコラとバジルで作ったペーストにうまくブレンドしている。

ハリウッドや富裕層が集まるハンコックパークなどに囲まれた場所だけに、幅広い年齢層のセレブ、テレビや映画、音楽関係者などが集う。ヘルシー志向が強い場所からか、今までは野菜のトッピングが中心だったが、クリエイティブな雰囲気のこの街から、今後はピザのように魚や肉など様々な具を乗せたアボカドトーストが登場するかもしれない。新しい料理ゆえに、トッピングや利用シーンなど、アボカドトーストにはまだまだ進化の余地がありそうだ。

もう1種類のアボカドトースト「目玉焼きタルティーヌ」。アボカドをヒヨコマメと混ぜ合わせてペーストにすることで、アボカドが主張しすぎないように工夫
「アボカドはカリフォルニアでも高い人気を誇る食材。アボカドトーストの人気はこれからますます加速していくでしょう」と予測する、オーナーシェフのカレン・ハットフィールド氏
ザ・シカモア・キッチン(The Sycamore Kitchen)
143 South, La Brea Avenue., Los Angeles, CA 90036
http://thesycamorekitchen.com

取材・文/大山真理(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ドル=約108円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。