タイ発 世界の料理をタイの味で 後編

世界各国の料理をタイの人々になじみのある味でアレンジしたエニューがバンコクで好評を博している。後編では、タイの伝統的なヌードルをパンで挟むバーガーなどを紹介する。

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Vol.124

世界各国の料理をタイの人々になじみのある味でアレンジしたメニューがバンコクで好評を博している。前編では、イタリアのパスタや日本のうどんなど「麺類」にタイならではのソースや具を合わせて人気を得ている店を紹介した。

後編では、タイの伝統的なヌードルをパンで挟むバーガー、日本発祥のライスバーガーにタイの屋台料理を合わせたものなど、斬新なアイデアの新感覚バーガーを紹介する。

殻ごと食べられるソフトシェルクラブのフライをサンドしたバーガーなど、タイならではのオリジナルメニューが続々と登場している
新しい発想のメニューには、特に若者や外国人が強い興味を示す。彼らが多く集まる場所での出店が成功の秘訣かもしれない
タイの焼き鳥や豚串などの屋台料理とライスバンズの新しい組み合わせ。ポテトやサラダなどをセットにすることもできる

タイの伝統的な麺料理がオリジナルバーガーに変身

「ソウルフード555(Soul Food 555)」は、2016年1月、バンコクの高級住宅街トンローにできたショッピングモール「ザ・コモンズ」内のフードコートにあるタイ料理店。同じバンコク市内にある人気タイ料理店の姉妹店で、ここだけのメニューとしてタイ料理をアレンジしたオリジナルバーガーを販売している。モールのフードコートには、熟成肉やミラノピザなど、タイでトレンドとなっている料理を提供する店がそろっており、これらに負けないよう、スタイリッシュで新しい発想のメニューが必要だと考えて開発。アルコールとともに気軽に食べられるのも特徴だ。

カオソーイをバーガーにした「ザ・カオソーイ・カウボーイ」は、ライムをしぼって豪快にガブリとかぶりつくのがおすすめ。ステンレス皿にバナナの葉を敷いて、タイらしさを演出

一番人気は「ザ・カオソーイ・カウボーイ」(250バーツ=約750円)。タイ北部の伝統的な麺料理で、油であげた麺とハーブをトッピングするココナッツ風味のカレーラーメン「カオソーイ」のバーガーだ。ラーメンのカレースープを凝縮したタレを絡めたチキンとパリパリの揚げ麺をバンズでサンド。見た目はまったく異なるが、甘辛いソースの風味と麺の食感で、誰もが「バーガーなのに、カオソーイの味!」と納得。見た目とのギャップも受けている。

同じく人気の「ザ・リスキー・チキン」(250バーツ=約750円)は、ともにイサーン地方(タイ東北部)の名物料理で、定番の組み合わせであるガイトー(タイ風フライドチキン)とソムタム(青パパイヤのサラダ)を一緒にバンズで挟んだもの。ソムタムは、細く切った青パパイヤにナンプラーとライム汁を和えて作るのだが、ここではパンがしけらないように具材の水分量を減らしている。カリッと揚げたチキンと爽やかなソムタムが絶妙にマッチ。「昔から食べていた料理も、パンで挟むだけでオシャレなメニューに変わる」と好評を得ている。

ほかに人気なのが、殻ごと食べられるソフトシェルクラブと甘酸っぱい青マンゴーのサラダを合わせた「ザ・ファトゥソウ・クラブ」(350バーツ=約1050円)。カニの唐揚げに甘辛いソースを絡め、シャキシャキした青マンゴーの千切りを合わせることで、食感もユニークな仕上がりになっている。

流行の発信地にもなっている「ザ・コモンズ」の来店客は、20~40代が中心。オリジナルバーガーの提供開始とともにSNSで一気に情報が拡散され、国内はもちろん、外国人観光客の集客にもつながっている。

タイ北部の名物料理であるガイトーとソムタムを挟んだ「ザ・リスキー・チキン」。付け合わせのスイカは、あえて青い部分を多くすることで、口直しとしてさっぱりと食べられるようにしている
フードコートにはおしゃれなデザインの店が並ぶ。「ソウルフード555」(写真右)は、ソムタムを作るときに使う調理器具をディスプレイし、レトロなタイキッチンを演出
ソウルフード555(Soul food 555)
Ground Floor, the COMMONS, 335 Thonglor Soi 17, Klongton Nue, Wattana, Bangkok
http://soulfood555.com

タイ屋台料理とライスバーガーが相性抜群!

ジャスミンライスやモチ米のほか、米から作る麺・クイッティアオが好まれるなど、米が食の中心にあるタイ。パンではなくご飯で具材を挟む日本発祥のライスバーガーも大人気だ。バンコクの郊外にある大型ショッピングモール「ザ・クリスタル」に2015年2月オープンしたライスバーガー専門店「Rice Baga(ライスバーガー)」は、従来の定番だけでなく、タイ独自のアレンジメニューも提供して人気を集めている。

豚肉の串焼きがのった「ムーピン・サーロイン・バーガー」。バンズに選んだ玉子ふりかけ入りライスは、おにぎりを思い起こさせる味わいで、意外にもタイの味付けとマッチ

看板メニューの「ムーピン・サーロイン・バーガー」(159バーツ=約477円)は、タイの屋台でおなじみの豚肉の串焼き・ムーピンを具にしたもの。もともとムーピンはモチ米と一緒に食べる料理なので、ライスバンズとの相性も抜群だ。甘辛いしょうゆだれにマリネして焼き上げたサーロイン肉は、香ばしくて柔らかい。酸っぱ辛いチリとマナオ(タイのライム)のソースが豚肉の旨味をさらに引き立てている。

同じく屋台料理の代表格ガイヤーン(タイ風鶏モモ焼き)に七味唐辛子やごま、細ねぎを合わせて和風にアレンジした「グリルドチキン・スパイシーライスバーガー」(159バーツ=約477円)も人気のメニュー。味は鶏の照り焼きにも似ていて、日本食が好きなタイ人の興味をくすぐる一品になっている。

さらに、盛り付けもおしゃれにアレンジ。バンズで挟む従来のライスバーガーとは異なり、バンズの上に具材や調味料をのせる“オープンサンドスタイル”に。具材が前面に出ることでビジュアルも一変し、店の印象付けに成功している。また、バンズに使うご飯も、プレーン(白米のみ)以外に、とびこ(トビウオの魚卵の塩漬け)入りや玉子ふりかけ入り、菜めし(期間限定)から選ぶことができる。味はもちろん、ライスも選べば見た目がカラフルになり、具材とバンズの組み合わせを色々楽しめると好評だ。

郊外のショッピングモールという立地上、週末は家族連れが多い。デリバリーにも対応しており、ランチになると近隣企業からの注文が次々に入るという。

味付けが濃厚なタイ料理は、麺、パン、ご飯など様々な炭水化物と相性がよく、ピザやナン(小麦粉)、そば(そば粉)、トルティーヤ(とうもろこし)など、まだまだ合わせる料理の候補は数多く残されている。今後も世界の料理とタイの味が出合うことで、新たなメニューが生まれるかもしれない。

ガイヤーン(タイ風鶏モモ焼き)をのせた「グリルドチキン・スパイシーライスバーガー」。フライドポテトなどのサイドディッシュも3種類から選べる
自称ミスター・ドン(丼)のオーナー、パット氏。日本のご飯物好きが高じてライスバーガー店をオープンしたという
ライスバーガー(Rice Baga)
Ground Floor, Crystal Market, The Crystal Shopping Mall, Praditmanutham Road, Ladprao, Bangkok
https://www.facebook.com/ricebaga

取材・文/さとう葉
※通貨レート 1バーツ=約3円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。