カナダ発 「豆腐」アレンジメニュー 後編

近年、欧米で注目を集める豆腐は、カナダでも様々なジャンルの料理に使われている。後編では、あっさり味の豆腐を具材にしたサンドイッチなど、和食にはない発想の豆腐の活用法に迫る。

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Vol.144

近年、欧米で注目を集める豆腐は、カナダでも様々なジャンルの料理に用いられている。ヘルシーで栄養があるだけではなく、味にくせがなくアレンジがしやすいというのも人気の理由だ。

前編では、豆腐をパスタやチーズ、卵の代わりに用いたメニューを紹介した。後編では、あっさり味の豆腐を具材にしたサンドイッチ、スイーツやクッキーの生地に加えることで独特のしっとり感と適度なあっさり感を加えたメニューなどを紹介。和食にはない発想の豆腐の新たな活用法に迫る。

豆腐バーガーは、カナダで人気メニューとして定着。豆腐とマッシュルームで作った味わい深いパテを、たくさんの新鮮野菜と、穀物たっぷりのパンで挟んだ
カナダ人に人気のキャロットケーキには、隠し味として豆腐を加えて生地をしっとりさせている。上部は、クリームチーズのフロスティングとニンジン、イタリアンパセリ
インド料理のサモサにも豆腐を使用。写真は、「豆腐とほうれん草のサモサ」。ほうれん草や豆腐などを、小麦粉と水を混ぜた生地で包みオーブンで焼いたものを、トマトと玉ねぎから作った調味料・チャツネとともにいただく

サンドイッチにも豆腐? しっかりした下味がポイント

カナダ、ケベック州の官庁街にほど近いホルという住宅地にある「ラ・ベレ・ヴェルデ(La Belle Verte)」は、2009年11月にオープンしたベジタリアンレストラン。

人気メニューの「ローストタイ豆腐サンドイッチ」。野菜や豆腐そのものは淡白な素材なので、しっかりと下味をつけることがポイントだ

この店で特にユニークなメニューは、「ローストタイ豆腐サンドイッチ」(8. 95ドル=約753円)。日本では最近、パンの代わりに高野豆腐を用いたサンドイッチが糖質制限食として話題になっているが、ここでは豆腐を具材として用いている。豆腐のサンドイッチというと淡白に感じられそうだが、そのまま挟むわけではない。豆腐を厚さ1cmほどにスライスしてから、ニンニクや生姜、たまり醤油などでマリネしてしっかり下味をつけたあと、ローストして旨みを閉じ込める。そこに、スプラウト、キュウリ、トマト、マッシュルーム、ニンジン、赤パプリカ、バジルなどの新鮮野菜をたっぷり加え、ドレッシングはタイピーナッツソースと自家製の豆乳で作ったマヨネーズ。これらを、オーブンで温めバジルペーストをたっぷり塗った8種類の穀物が入ったパニーニで挟んで完成だ。しっかりと下味をつけた豆腐と濃厚なソースが、みずみずしい野菜と絶妙なハーモニーを奏でる。

また、豆腐とマッシュルームを混ぜて作ったパテに、ローストした玉ねぎとマッシュルーム、トマト、ピクルス、ザワークラウト、マリネされた玉ねぎ、ドライトマトを自家製の豆乳マヨネーズを塗ったパンで挟んだ「豆腐マッシュルームバーガー」(10. 95ドル=約922円)も人気。ふわっとした食感の豆腐パテと、しっとりとしたマッシュルームやザワークラウト、シャキシャキの野菜のバランスが自慢の一品だ。

さらに、日替わりのサラダ(5.5ドル=約463円)にも豆腐は頻繁に登場する。この日はミックスサラダ、キヌア、トマト、クランベリーを豆腐と混ぜてトマトドレッシングで仕上げた「豆腐キヌアサラダ」。豆腐でボリュームを出しつつトマト味でさっぱりと仕上げ、クランベリーの甘さも効かせている。

客層は子どもから年配の人まで幅広い。素材そのものはあっさりとしているため、どちらかというと年配向けというイメージが強い豆腐だが、味付けをしっかりすることで若年層にも受け入れられた。味付けのバリエーションも豊富で、底知れない可能性を秘めている。

豆腐とキヌアを使った日替わりサラダ。ミックスグリーン、キヌア、トマト、クランベリーを豆腐と混ぜ、自家製トマトドレッシングでさっぱりと仕上げた
スチームボウル(丼)の1つ「ココ・コリアンダー」(13,25ドル=約1,148円)に、2ドル(約169円)でローストした豆腐をトッピングしたもの。新鮮野菜のシャキシャキ感もうれしい
ラ・ベレ・ヴェルデ(La Belle Verte)
166 Rue Eddy, Gatineau, QC J8X 2W1
http://www.labelleverte.ca/

ケーキ生地に豆腐を練りこみ、しっとり感&食べやすさアップ!

オタワ大学や大使館街、高級住宅街にも近いオタワ市のサンディヒル地区に、「パーフェクション・サティスファクション・プロミス(Perfection Satisfaction Promise)」がオープンしたのは1996年9月のことだ。

さっぱりとした味わいのレモンケーキにポピーシード(ケシの実)をたっぷりと入れ、ピューレ状の豆腐を混ぜた「レモンポピーシードケーキ」。隠し味ならぬ「隠し食感」として豆腐を用いた好例

このレストランでは、デザートに豆腐を多く用いている。その1つが、「レモンポピーシードケーキ」(4.5ドル=約379円)。たっぷりのポピーシード(ケシの実)を使い、レモン風味を効かせたケーキだが、絹ごし豆腐をピューレ状にして生地に練りこむことで、独特のしっとり感が醸し出される。

また、カナダ人にとって定番の「キャロットケーキ」(4.5ドル=約379円)にも、豆腐が隠し味に使われている。レモンポピーシードケーキ同様に、生地にしっとり感を出すだけでなく、濃厚な味のクルミとレーズンに、適度なあっさり感や食べやすさを加えている。

そのほか、「チョコレートチーズケーキ」や「オートミールのクッキー」(1枚2,75ドル=約238円)にも豆腐が使われており、人気となっている。

さらに、サラダやボウル(丼)でも豆腐を使っており、意外なところではインド料理の「サモサ」(1つ2.75ドル=約231円)でも使用している。通常ジャガイモやひき肉を用いるところを、豆腐とほうれん草に変えており、揚げるのではなく、オーブンで焼くことによってサックリとした軽い口あたりの一品となっている。

最初に紹介した「ラ・ベレ・ヴェルデ」同様、客層に偏りはなく、老若男女に愛されている。あっさりとした味わいで、口あたりも軽い豆腐を、濃厚な味の料理やデザートに用いることでオリジナリティを出している。特にユニークなのは、隠し味ならぬ「隠し食感」的に用いている点だ。どんな料理にも意外なほどうまく溶け込み、それでいて個性を失わない。そんな豆腐の新たな活用法が、世界から日本に逆輸入される日も近いかもしれない。

ナッツとココナッツを練り込んだクッキー生地に絹ごし豆腐をピューレ状にして加えた「チョコレートチーズケーキ」。見た目とは異なるあっさり感が人気
豆腐が入ったクッキー。オートミールとオーツ麦、豆腐などで生地を作り、甘みはデーツとカナダ名産のメールシロップで付けている。ナッツのカリカリ感と豆腐のしっとり感が絶妙
プレファクション・サティスファクション・プロミス(Perfection Satisfaction Promise Vegetarian Restaurant & Coffee House)
167 Laurier Ave E, Ottawa, ON K1N 6N8
http://perfection-satisfaction-promise.ca/en/

取材・文/バレンタ愛(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1カナダドル=84.4円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。