ベトナム・ハノイ発 年中楽しむ!鍋料理最新事情

食文化が豊かなベトナムの中でも、新しいレストランが続々と登場し、トレンドが生まれる街、ハノイ。3回にわたって、ベトナムの首都・ハノイの外食トレンドを紹介しているが、今回は鍋の最新事情を紹介したい。

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Vol.11

食文化が豊かなベトナムの中でも、新しいレストランが続々と登場し、トレンドが生まれる街、ハノイ。前回より3回にわたって、ベトナムの首都・ハノイの外食トレンドを紹介しているが、今回は鍋の最新事情を紹介したい。

昼から湖畔で鍋を囲む人たちも

意外なようだが、ベトナムで鍋は人気料理のひとつ。冬はもちろんのこと、暑い夏でも汗をかきながら鍋を食べるのだ。ひとつの鍋を大勢で囲めば、お互いの距離が縮まる。人との交わりを大切にするベトナムでは、家族や親しい仲間が集まると鍋を食べる慣習がある。驚いたのは、鍋は夜に限った料理でないこと。オフィス街のランチタイムでも、仲間と鍋料理をつつくのだから、どれだけ彼らが鍋好きかが伺える。今回は、そんなハノイの鍋の話だ。

レストラン「アオタ」の鍋
ランチに職場の仲間で鍋を囲む

最新のトレンドは、カニ鍋!

数年前、ハノイのある店が中国南部の料理であるキノコ鍋を始めたところ、たちまち人気となり、多くの店が後を追った。今やそのブームもひと段落し、次のトレンドとしてカニ鍋が注目されている。

田カニから出るエキスで、スープに独特のうまみが加わる

この新しいトレンドの中心にいるのが、レストラン「アオタ」だ。日本人の名前のようだが、ベトナム人の経営する店である。3年前にハノイの郊外にオープンして話題となり、多くのメディアで取り上げられた。2010年末には、高層ビルが立ち並ぶオフィス街に2号店をオープンさせている。

そもそもアオタは、鍋料理の専門店。メニューも、鶏や豚、豆腐などを使った一般的な鍋料理から、ウナギ、カエル、エスカルゴなど、ベトナムならではの食材を使った鍋料理まで幅広い。だが、なんといってもこの店の一番の売りはカニ鍋である。甲羅の幅が3センチほどの「田カニ」を使い、カニミソがとけ出したスープで鍋を楽しむのだ。具材は野菜と揚げ豆腐がセットになっており、味は上品に仕上げている。もっとボリュームが欲しい人は、追加注文で牛肉を入れて食べるのがおすすめだという。このアオタの成功で、メニューにカニ鍋を加える店がいくつか現れているそうだ。カニ鍋は、ハノイのトレンド最前線である。

カニ鍋(具材は野菜と揚げ豆腐)のセット2人前 195,000ドン(約725円) 追加の牛肉110,000ドン(約409円)
アオタ2号店の店内。壁一面に壺を飾るなど、内装も凝っている
Ao-ta(アオタ)
(取材店)137 Mai Mac De, Hanoi
営業時間
8:00~22:00
年中無休
http://aota.com.vn/

回転寿司の鍋版、「回転鍋」が大ブーム

鍋好きのベトナム人を相手に、さらに大きなブームになっているのが回転鍋の「キチキチ」だ。2009年2月に1号店をオープンさせて以来、ハノイに12店舗、ホーチミンに11店舗もチェーン展開させるほどの人気ぶりである。

具材を載せた皿がベルトコンベアに乗せられ、客席の周りを回転。具材には半透明のカバーが被せられている

このお店の特徴は、日本の回転寿司のように、鍋の具材がベルトコンベアに乗って回転していること。客一人一人の席の前にある直径15cmほどの一人用鍋で、取った具材を自分で調理する。にもかかわらず、来店者のほとんどが家族連れかカップルなのが驚きだ。こうした客層を想定し、肉や海鮮、野菜やフォーなどの具材に混じり、お酒のボトルも一緒に回転している。

人気の秘密は、自分の好みの味で、食べたいものを好きなだけ仲間と食べられること。スープも4種類から味を選べるうえに、細かな味も調整でき、時間無制限の食べ放題なので、誰かに遠慮する必要もない。さらに、回転するシステムだけでなく、寿司などの日本食も提供されているほか、日本を意識したインテリアも人気に一役かっている。そのため、キチキチは現地資本であるが、日本からやってきた最新のレストランだと思っているベトナム人も少なくないほどだ。隣接する中国や、宗主国であったフランスだけでなく、日本の食文化もベトナム料理に影響を与えているのである。

真ん中が鍋のスープ。食べ放題(飲み物別)、時間無制限で夜の場合は、189,000ドン(約703円)
会社員のフンさん(左・24歳)の4人家族も横一列で回転鍋を楽しんでいた

SHOP DATA

Kichi Kichi(キチキチ)(取材店)106 Yet Kieu, Hanoi

営業時間

営業時間/11:00~15:00 17:00~22:00
年中無休http://www.kichi.com.vn/

ベトナムの鍋の伝統を守るフランス人

そんなベトナムにも、世界的に名前の知られたシェフが存在する。アフリカやカリブ海などの世界各国のレストランでシェフを務め、現在ハノイを拠点に活躍するフランス人、ディディエ・コローだ。1991年の初訪問でベトナム料理の奥深さに魅せられ、料理以外にも著作や講演などで、その魅力を世界に向けて発信している人物だ。

味は伝統的だが、盛り付けは現代的。鍋一人分190,000ドン(約707円)、2人分から

自身のレストラン「ラ・ヴァーティカル」で供されるのは、ベトナムならではの、香草とスパイスをふんだんに使いながらフレンチのテクニックで仕上げた創作料理。その際立った個性で、雑誌『GQ』『VOUGE』などを発行する米国の出版社が選ぶ「2008年に登場した世界のベスト100レストラン」にも選ばれるほど評価は高い。

そんなコロー氏が、2010年にオープンさせたのが、ベトナム料理の店「マダム・ヒエン」である。1926年に建てられたフレンチビラを改装してオープン。市場に出かけて調査したり、ベトナム人のお婆さんから料理を教わったりして作り上げたメニューは、伝統的な味を基本としたもの。ベトナムの代表的な料理を網羅し、レストランはさながら、食の博物館といった存在である。「鍋はベトナムの家族の結びつきの象徴」と語るとおり、もちろんメニューには鍋も含まれている。

「ベトナム料理の基本はスープ。味が混ざるので、スープには一種類の香草しか使いません。最近はこの伝統を知らないレストランが多い」とコロー氏は嘆く。急速な近代化のため、伝統が忘れられ始めているのだ。そして伝統の味の大事さに気が付くのは外国人、という現象がこの国でも起きている。

ディディエ・コロー氏。1956年生まれ。気さくな人物で、街は自転車で移動する
鍋に入れる具材。取材時は魚介類をメインに牛肉が加わった。スープの味付けは季節によって異なる

SHOP DATA

Madame Hien
(マダム・ヒエン)15 Chan Cam, Hanoi

営業時間

11:00~14:00
18:00~22:00
年中無休http://verticale-hanoi.com/en/madame-hien/

取材・文・写真/ジョー・スズキ
取材協力/ベトナム航空

※通貨レート:
2012年2月13日現在 1,000ドン=3.72円
※価格・営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますので、ご注意ください。