(後編)ペルー発 ベジタリアン&ビーガンレストランが人気

“美食の国”として世界的にも高い注目を集めるペルーで、ベジタリアンやビーガン向けのレストランが人気だ。後編では、ペルーの伝統料理や高カロリーなイメージの強いピザを菜食主義者向けに提供する店を紹介する。

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Vol.184

 世界中の食のスペシャリストたちによって選ばれる「世界ベストレストラン50」(2018年)のトップ10に2店舗が入るなど、美食の国として知られるペルー。その首都・リマで注目を集めているのがベジタリアンやビーガンといった菜食主義者向けのレストランだ。健康面や環境・動物愛護に対する意識の高まりからペルーでベジタリアンやビーガンが増えていることや、欧米からの旅行者のなかに菜食主義者が多いことなどが背景にある。

 後編では、ペルー産の野菜や穀類を使ったペルー料理で人気の店と、高カロリーなイメージの強いピザを菜食主義者向けにアレンジし、ヘルシーに提供している店を紹介する。

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(前編)ペルー発 ベジタリアン&ビーガンレストランが人気

ペルーの伝統料理をビーガン向けにアレンジ

 ペルーのリマ市バランコ区は、欧米からの旅行者が数多く滞在するおしゃれな街。その中心部に2015年2月オープンしたのがビーガン向けペルー料理店「ヘルミナンド・ビーダ(Germinando Vida)」だ。植物性のものだけを使うビーガン料理は、素材が制限されるためオリジナリティの強い創作メニューになることも多いが、この店では様々なペルーの伝統料理を、肉や魚、乳製品を一切使わずに提供し、話題を集めている。

 その代表的なメニューが、ジャガイモの原産国であるペルーのマッシュポテトを使った伝統料理「カウサ」(22ソレス=約730円、記事の一番上の写真)。成形したマッシュポテトに、茹でてほぐした鶏肉かカニ身のマヨネーズ和えを挟むのが一般的だが、この店では茹でたキヌアをレモンで和えてアボカドとともに挟む。マヨネーズの代わりにマラクヤ(ペルー産のパッションフルーツ)と甘みの強いオレンジを煮詰めたソースをかけ、その上にソテーしたマッシュルームとカイワレを乗せている。マッシュポテトの滑らかな舌触りとキヌアのぷちぷちとした食感が楽しめる一品で、カモーテ(ペルー産のサツマイモ)のチップスも添えられている。

 また、「タクタク」(28ソレス=約929円)もペルーを代表する伝統料理の一つ。本来はご飯と煮豆を混ぜて炒めたものに、肉や魚介類のソテーを添えて食べるが、この店では肉や魚の代わりに、ペルー産の黄色トウガラシと塩コショウで味付けしたナスのペースト、ソテーしたキノコ、ベジャコと呼ばれるアマゾン産バナナを乗せ、仕上げにサルサ・クリオージャ(タマネギのレモン和え)とタマネギやスプラウトをトッピング。トウガラシの辛みとレモンの酸味、バナナの甘みが絶妙なハーモニーを奏でる。

本来は肉を乗せることが多いペルーの伝統料理「タクタク」を、動物性たんぱく質を使わずにアレンジ。土台の部分は、ご飯と煮豆の代わりに玄米とカナリオ豆(ペルー産インゲン豆の一種)を使っている

そのほか、牛ハツの串焼き「アンティクーチョ」もビーガン向けに変更。小麦に含まれるグルテンから作った“グルテンミート(セイタン)”で牛ハツを見事に再現した「セイタン・アンティクーチョ」(18ソレス=約597円)も人気が高い。

アヒ・パンカというペルー産トウガラシとニンニク、クミン、オレガノ、塩コショウと酢を合わせたマリネ液に一晩漬けこんだグルテンミートは、食感こそ肉より柔らかいが、味も見た目もアンティクーチョ(牛ハツの串焼き)そのものだ
オーナーのナタリー・レガラド氏。もともと伝統的なペルー料理をベジタリアン向けにアレンジして提供していたが、2018年1月から卵や乳製品も一切使わないビーガン料理にしたところ、今では来店客の8割が外国人旅行者になったという

 ビーガンの外国人旅行者が増えるなか、「現地の伝統料理を味わいたい」というニーズに応えたことで、他店との差別化にも成功し、人気店へと成長している。

Germinando Vida
Avenida Grau 209A, Barranco, Lima
https://www.facebook.com/Germinandovi/

ヘルシーなビーガンピザで世界へ進出!

 リマ市バランコ区にある「ベジーピザ・ペルー」は、その名のとおり菜食主義者向けのピザを提供するレストラン。2014年1月にオープンし、現在、市内に2店舗を構えている。

 ピザといえばチーズは欠かせない素材だが、ベジタリアンのなかでも乳製品を食べないビーガンはチーズも食べない。そこで同店が開発したのが、「ビーガンチーズ」だ。一晩水に浸けたアマゾン産のカシューナッツをミキサーで砕いてろ過してミルク状にし、そこにすりつぶしたユカ芋(キャッサバ)を加えることで、ビーガン向けの擬似チーズを作り出すことに成功した。当初はカシューナッツとチューニョ(ジャガイモでんぷん)で作っていたが、カシューナッツとユカ芋を使ったほうが、もちもちとした食感を楽しめると好評だ。

4種類のトッピングを組み合わせた「ピザ大サイズ」。トッピングは写真奥から時計回りに、①「アンデス産トウモロコシとアボカド、ズッキーニ、マッシュルーム、黒ゴマ」、②「レモンで和えたカットトマトと揚げたポロネギ」、③「乾燥チェリートマトとペルー産食用ほおずき、ペルーのイカ市特産のピーカンナッツ、バジル」、④「カットトマトとタマネギのソテー、タマネギのスプラウト」。全体にトッピングされている白いものがビーガンチーズ

 トッピングは、ペルー産の野菜などを組み合わせた10種類を用意。「ピザ大サイズ」は、トッピングを4種類まで選べて60ソレス(=約1,992円、30cm×40cm、24ピース)で、2種類まで選べる「ピザ小サイズ」は、30ソレス(=約996円、30cm×20cm、12ピース)だ。

12ピースの「ピザ小サイズ」(チーズはモッツアレラ)。トッピングは、右半分が「アンデス産トウモロコシとグリーンオリーブ、ケッパー、ワカタイ(アンデス産ハーブ)」で、ワカタイのほろ苦い味がアクセントになっている。左半分は前述の③。好みによって、アマゾン産のトウガラシソースやピンク・ソルトをかけて食べる人も多い

 一方、ピザ生地はビーガン向けというだけでなく栄養面も考慮。小麦粉の代わりに食物繊維やミネラルが豊富な小麦の胚芽とふすま(外皮)を使い、アマニ、ローズマリー、クスコ産ピンク・ソルトとエクストラバージンオリーブオイルを混ぜて作っている。パリッとした食感を出すため、薄く伸ばしたピザ生地を事前にから焼きしているのもポイントだ。

(写真右から)ホセ氏、ミゲル氏、マリオ氏、フアン・フランシスコ氏のメルガー4兄弟が共同で経営。広報を担当するフアン・フランシスコ氏は、「現在、国内外でフランチャイズ展開を検討中で、年内にチリへFC出店を予定しています」と展望を語る

 来店客の7割は外国からの旅行者。ビーガンやベジタリアンもいるが、それ以外の人も多い。旅行中は外食が増えて、野菜も不足しがちになることもあり、野菜をメインにして健康面にも考慮したピザが外国人客から大きな反響を呼んでいる。現在はビーガン以外の来店客のためにモッツァレラチーズも用意しているが、来店客の多くがビーガンであることから、今後はビーガンチーズのみにする予定だ。

VeggiePizza Peru
Jirón Colina 112, Barranco, Lima
https://www.facebook.com/VeggiePizzaPE/

取材・文/原田慶子(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ソル=約33.2円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。