(後編)アメリカ発 コーヒー&お茶を“スパークリング”で楽しむ!

アメリカ・サンフランシスコでは、炭酸や窒素を使った“スパークリング”のコーヒーやティーが人気だ。後編では、窒素ガスを使った「ナイトロ・ティー」など、スパークリングティーを提供している店を紹介する。

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Vol.194

 様々なこだわりを持つコーヒー店や世界各国のお茶を出すティー専門カフェが集まるアメリカ・サンフランシスコで、近年、注目を集めている“スパークリングコーヒー&ティー”。前編で紹介した窒素ガス入りのアイスコーヒー「ナイトロ・コールド・ブリュー」の後を追うように、「ナイトロ・ティー」も誕生している。また、炭酸を使ったアイスティーも人気が高い。

 後編では、特に暑い時期に飲みたくなるスパークリングティーを提供する2店舗を紹介する。

色とりどり、クラフトビールのようなアイスティー

 サンフランシスコのダウンタウン地区にある公園「ヤーバ・ブエナ・ガーデン」内に、カルチャー施設や飲食店が集まる建物がある。その2階テラスに店を構えるのが、「サモワール・レストラン&ティー・ラウンジ(Samovar Restaurant & Tea Lounge)」のヤーバ・ブエナ店。レストランカフェ「サモワール」ブランド5店舗のうち、2006年にオープンした2号店だ。メニューには、チャイ、抹茶、ハーブティー、紅茶、ウーロン茶など、世界各地のお茶がそろい、約50種類のドリンクを提供している。

 ここで新しい名物として話題になっているのが、「ナイトロ・ティー」だ。前編で紹介した「ナイトロ・コールド・ブリュー」(窒素ガスを注入した水出しコーヒー)のお茶バージョンで、「マサラチャイ」「バンチャ(番茶)」「パイナップル・ココナッツ・ウーロン」「ハイビスカス」の4種類がある(各8ドル=約856円/ラインナップは時期によって変更あり)。4種類を少しずつ飲み比べられるお試しセット「ナイトロ・ティー・フライト」(13ドル=約1,391円)も人気だ。

窒素ガス入りの「ナイトロ・ティー」の、「マサラチャイ」(左)と「番茶」(右)。一般的なマサラチャイにはミルクを入れるが、「ナイトロ・ティー」は窒素の細かい泡で口あたりがクリーミーになるのでミルクは入れていない

 24時間かけてじっくりと水出しした冷たいお茶に窒素ガスを注入したもので、グラスに注ぐとビールのようになめらかな泡の層ができる。口当たりはクリーミーで、一般的なアイスティーと比較すると苦みや渋みが弱く、その分、お茶のコクや香りが強く印象に残る。窒素の泡とお茶の苦みによって、まるでビールを飲んでいるような気分になるが、ノンアルコール、ノンシュガー、ゼロカロリーで、健康的なドリンクであることも人気の理由だ。

「ナイトロ・ティー」の一番人気「ハイビスカス」(左)は、飲む際に泡で酸味がまろやかに感じるのが特徴。「パイナップル・ココナッツ・ウーロン」(右)はトロピカルな風味を楽しめる

 「ナイトロ・ティーを作るための設備投資は1万ドル(約100万円)ほどかかりました」と、創業者のペッパー・グロス氏は語る。安い買い物ではないが、系列店で好評だったため導入したという。

 このほか、窒素ではなく炭酸を使った「スパークリング・マッチャ・ライムネード」(7ドル=約749円)も人気。ライムネード・ソーダ(ライムを使ったレモネード)に抹茶を加えたもので、甘みはほとんど感じない。シュワッとした炭酸の刺激に目の覚めるようなライムの酸味、抹茶の渋みが加わり、暑い日にぴったりのさわやかなドリンクに仕上がっている。

抹茶×炭酸という組み合わせが斬新な「スパークリング・抹茶・ライムネード」。グラスの底に沈んだ抹茶の粉をかき混ぜると、無数の炭酸の泡がグラスの中を上っていく

 ビジネス街と観光エリアの両方に近い立地ということもあり、近隣に勤めるビジネス層や世界各国からの観光客が来店し、新感覚の爽快なお茶を楽しんでいる。

サモワール レストラン&ティー・ラウンジ(Samovar Restaurant & Tea Lounge)
Upper Terrace 730 Howard Street San Francisco
https://www.samovartea.com

タピオカティーに、“泡”でおいしいひと工夫

 観光スポットとして名高い公園・ゴールデンゲートパークの近くに、おしゃれなカフェやレストランが集まる「ノパ」と呼ばれるエリアがある。ここに2018年オープンしたのが、全米に14店舗をかまえるタピオカティーの人気チェーン「ボバ・ガイズ(Boba Guys)」のノパ店だ。

 ノパ店を含む系列2店舗で、2016年から「ナイトロ・ティー」を提供しており、現在、月替りで2種類を用意。取材したときのメニューは、水出し抹茶に窒素ガスを注入した「ナイトロ・マッチャ(抹茶)」と、緑茶、牛乳、ココナッツオイルをミックスしたドリンクに窒素ガスを加えた「ナイトロ・ココナッツ」。価格は各6ドル(=約642円)で、同店で販売しているタピオカティーより1ドル(約100円)ほど単価は高い。どちらも、窒素の泡でまろやかな口当たりになっており、50セント(約54円)でタピオカをプラスすることもできる。

水出し抹茶に窒素を注入した「ナイトロ・マッチャ」にタピオカを加えたもの。ノンシュガーだが、窒素のクリーミーな泡とともに飲むことで、ほのかな甘みも感じられ、抹茶の苦みはあまり感じない

 このナイトロティーは、「お茶の新しい魅力を引き出したい」という、共同創業者のアンドリュー・チャウ氏とビン・チェン氏の想いから生まれた一品。地元のビール醸造所の協力を得て実験を繰り返し、商品開発を進めたという。甘みの強いタピオカティーを売りにしている同店で、甘さが控えめで爽快感のあるナイトロ・ティーは、ヘルシーなイメージから健康志向の新しい層を獲得するきっかけにもなっている。

ココナッツ風味の緑茶のミルクティーに窒素ガスを注入した「ナイトロ・ココナッツ」。ミルク×スパークリングという新鮮な組み合わせだが、クリーミーな泡がミルクのやさしい風味を引き立てており、相性は抜群

 また、炭酸入りのティードリンク「マッチャ・ピーチュ」(5.5ドル=約589円)は、日本のピーチ味のラムネをヒントに考案された、2019年春~夏の限定メニュー。水出しの抹茶にスパークリングウォーターを合わせ、自家製の桃のマーマレードを加えたものだ。爽やかな炭酸入り抹茶に、マーマレードの甘みと酸味がよいアクセントになっている。

「抹茶ピーチュ」に、50セント(約54円)でタピオカをプラス。甘酸っぱい桃のマーマレードと炭酸の抹茶がよく合う

 客層は、20〜30代の地元住民が中心で、友人や職場の同僚の分をまとめて5杯以上をテイクアウトする人もいる。

 これまでにはないお茶の楽しみ方として、“スパークリング”は新たなキーワードになっていきそうだ。

ボバ・ガイズ ノパ店(Boba Guys NOPA)
836 Divisadero Street San Francisco
http://www.bobaguys.com

取材・文/前田えりか(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ドル=約107円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。