Vol.214
コロナ禍で、さまざまな影響を受けている世界各国の飲食店。それでも感染予防や集客のために努力と工夫を重ねてイートインで営業を行っている店がある。ソーシャルディスタンスを求められる中、水上に活路を見出したオランダのカフェレストランと、感染拡大中のブラジルで「非接触」を徹底するラーメン店の取り組みを紹介する。
店内の席数を減らす代わりに「水上テラス」を設置
オランダでは、3月15日から一時禁止になっていた飲食店の店内営業が6月1日から解禁となった。ただし、店内営業を行うためには入店時に来店客の手指を消毒するほか、「テーブルとテーブルの間を1.5メートル以上空ける」といった規則が設けられたため、席数を半分以上減らすことになった店も多い。敷地に余裕のある店であれば、屋外にテラス席を増設することも可能だが、都市部では難しい。そうした中で「水上テラス席の増設」というユニークな試みをしたのが、首都アムステルダムから西に約20kmの都市・ハーレムで2017年から営業しているカフェレストラン「デ・フォルクスルスト(De Volkslust)」だ。
店は、にぎやかな目抜き通りの角地に位置し、店の前は運河になっている。店長のオリビエ・ヨル氏は、この運河にボートに乗り込むときに使う浮桟橋(ポンツーン)を利用したテラス席を作ろうと思いついた。しかし、運河は私有地ではないため、利用するためには自治体からの許可が必要になる。「許可申請や浮桟橋の設置工事など、すべてを終えるまで約3カ月かかりました。工事などの諸経費は6,000ユーロ(約73万8,000円)かかりましたが、残念ながら政府や自治体からの援助は得られませんでした」とヨル氏は語る。
水上テラス席が完成したのは6月末。感染予防になる上に、運河を望むロケーションも楽しめるとあって、評判は上々。オランダ人は中世から運河を積極的に利用してきて、そこに浮かぶハウスボートでの暮らしにあこがれる人も多い。水辺を好むオランダ人には、水上テラスは魅力的に映るのだろう。
営業許可の関係でこの水上テラスは10月中旬で一度閉鎖することが決まっているが、2021年春に再開の予定。「通年での営業許可を取得して、店の目玉としてアピールしたいです」とヨル氏。コロナ禍でつまづいても、ただでは起きず、新たな武器を携えて未来に向かって歩みを進めたいと考えている。
Kruisweg 67 2011LB Haarlem, The Netherlands
https://www.devolkslust.be/Kruisweg-Haarlem/index.php/
「非接触型」の接客サービスを徹底!
新型コロナによって大きな影響を受けているブラジル。特に感染者数が多いサンパウロでは、3月から飲食店の店内営業が禁止となっていた。しかし、7月上旬から「営業時間は一日最長6時間」「17時には閉店」などの条件付きで店内営業が許可された。2008年の創業以来、東洋人街リベルダーデでラーメンブームを牽引してきた「らーめん和(かず)」も、7月17日から金~日曜日限定で店内営業を再開した。
再開にあたり、感染予防のために徹底しているのが、「非接触」スタイルの接客だ。入店時の検温に赤外線体温計を使ったり、来店客の手指の消毒には、足でペダルを踏むと消毒用のジェルが出る非接触型のディスペンサーを使用している。
また、調味料や食器類をテーブルの上に置いておくことも政府の指示で禁止されているため、ラー油、コショウなどの香辛料や箸、紙ナプキンもテーブルには置いておらず、餃子用の酢じょうゆは調理場で小皿に入れ、料理といっしょに提供している。
そのほかメニューブックをテーブル上に置くことも、感染防止のために禁止されている。そこで卓上にQRコード付きのPOPを置き、スマホでメニューを確認してもらっている。
もちろん飛沫感染防止も万全。調理場スタッフはマスクを、ホールスタッフはマスクとフェイスガードを着用し、マスクは3時間毎に取り替えるようにしている。
日本人や日系人だけでなく、ブラジル人のリピーターも多く、コロナ前は昼だけで200人ほどを集客していた。しかし、現在は入店人数の制限もあり、一日の来店数は90人程度。それでも、なじみの味を求めて来店してくれる常連客の笑顔を活力に変えて、一歩ずつ前に進もうと考えている。
Rua Thomaz Gonzaga, 87 – Liberdade,São Paulo – SP
http://lamenkazu.com.br/
オランダ 取材・文/倉田直子(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ユーロ=約123円
ブラジル 取材・文/仁尾帯刀(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1レアル=約20円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。