(前編)フィリピン発 庶民のおやつが進化系スイーツに

多彩な食文化を持つフィリピンはスイーツのバリエーションも豊富。このコロナ禍においてもテイクアウトメニューとして人気の進化系スイーツがある。前編では、その中から豆腐ドリンク「タホ」が人気の店を紹介する。

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Vol.215

 フィリピンは、かつての宗主国であるスペインやアメリカ、そして中国や東南アジア諸国の影響を受け、食文化は多彩だ。特にスイーツは、調理用バナナやジャックフルーツを春巻きの皮で包んで揚げた「トゥロン」や、ココナッツ風味の甘いちまき「スーマン」など、屋台で購入できるものが豊富。その中でも、昔から屋台などで売られていた庶民的なおやつをおしゃれにアレンジしたものが、脚光を浴びており、コロナ禍においてもテイクアウトで人気を集めている。

 前編では、その中から豆腐ドリンク「タホ」が人気の店を紹介する。

変わり種シロップで若い女性に人気

 フィリピンのマニラ首都圏の中でも、ビジネスの中心地として外国人居住者も多いマカティ市。その中でも高層コンドミニアムが建ち並ぶセンチュリー・シティは、東アジア系の住民が多い活気あるエリア。同地区のランドマークとしてにぎわうセンチュリー・シティ・モールの地下フードコートに、2019年12月オープンしたのが、豆腐を使った伝統的なドリンク「タホ」の専門店「エブリ・フレーバー・タホ(Every Flavor Taho)」だ。

 タホとは、フィリピン特有のやわらかい豆腐のこと。これにタピオカに似たサゴというでんぷんの粒と黒蜜を加えたスイーツも、同じくタホと呼ばれ、もともとは天秤棒を担いだ行商人が、桶に入った温かい豆腐(タホ)をへらですくってプラスチックのカップに入れ、黒蜜などをかけて売っている庶民的なおやつ。カップに口をつけてすするように飲むのが一般的で、朝食や軽食として親しまれてきた。

定番の黒蜜味「ホット・クラシック・タホ」(50ペソ=約108円)。ほんのり甘く、温かい

 このタホが、ヘルシーな豆腐のスイーツとして近年再注目されている。さまざまなアレンジを加えて売る店が増えており、「エブリ・フレーバー・タホ」もその一つ。本来は温かいタホを冷たくしたり、黒蜜以外のシロップをかけるなど工夫している。冷たいタホの中で一番人気は「チルド・ブルーベリー・タホ」(50ペソ=約108円)。ブルーベリーのシロップをかけたもので、甘酸っぱさがタホの風味によく合う。

もともとは温かい「タホ」を冷やして提供する「チルド・タホ」3種類。左から「ブルーベリー」「ライチ」(各50ペソ=約108円)、「クラシック」(40ペソ=約86円)。豆腐自体の味は同じで、シロップで違いを出す。スプーンで食べてもストローで飲んでもいい

 トッピングのサゴはタピオカより少しやわらかく、フレーバーによって小粒と大粒を使い分けている。

ライチ味の「チルド・タホ」。甘みの強いライチシロップは、大粒のサゴと相性がいい

 客層は、周辺のオフィスに勤めるビジネス層や、近隣の東アジア系住民が中心。屋台などで販売しているタホ(10〜30ペソ=約22〜65円)に比べると価格は高いが、シアトル系コーヒーやタピオカミルクティー(116~233ペソ=約250〜500円)よりもリーズナブルな上、豆腐ベースなのでヘルシーで食べ応えもあり、SNS映えすることも人気の理由だ。

エブリ・フレーバー・タホ(Every Flavor Taho)
B1, Century City Mall, Barangay Poblacion, Makati City, Metro Manila
https://www.facebook.com/everyflavortaho/

カラフル&豊富なフレーバーがファミリーに人気

 フィリピン・マニラ首都圏のサンフアン市に2010年創業したタホ専門店「タホ・バー(Taho Bar)」は、首都圏各地のショッピングモールに週末のみのポップアップショップを出店している。サンフアン市にある「ユニマート・グリーンヒルズ・ショッピングセンター」内の店舗もその一つだ。

 「タホ・バー」は他店と大きく違い、シロップではなくタホ(豆腐)自体にフレーバーをつけているのが特徴。現在はオーソドックスな「クラシック」以外に、「マンゴー」「チョコレート」「ストロベリー」、フィリピンで人気の「ウベ」(紫いも)、パンダンリーフという香草とココナッツが香る「ブコ・パンダン」の計6種類を販売している。仕上げにかけるシロップは黒蜜で、300グラムほどが入るカップに何種類でもフレーバーの違うタホを組み合わせることができ、価格は一律50ペソ(約108円)とリーズナブルだ。

手前から時計回りに「ストロベリー」「ブコ・パンダン」「マンゴー」「ウベ」のミックス。他店では飲みやすいように縦型のカップを使う場合が多いが、同店では平らなカップで提供し、スプーンで食べるスタイル

 人気のフレーバーは「ストロベリー」「ウベ」「チョコレート」。「ストロベリー」はイチゴミルクのようなマイルドな風味で、濃い紫色のヤムイモ「ウベ」は、独特の香ばしい風味がクセになる。「チョコレート」はココアパウダーを使用しているため、香り高いダークチョコ・プディングのよう。食感はいずれも絹ごし豆腐よりもやわらかく、軽い口当たりだ。

チョコレートは黒蜜と意外によく合う。新しい“アジア系チョコスイーツ”だ

 また、デリバリー(大容量のみ)にも対応しており、好きなフレーバー1種類(3リットル)+黒蜜+サゴの「Aセット」(12〜15名分、クラシックは650ペソ=約1,398円、その他は750ペソ=約1,613円)と、好きなフレーバー3種類(600ml×3)+黒蜜+サゴの「Bセット」(8〜10名分、650ペソ=約1,398円)を用意。今まで買いに行くものだったタホを、家にいながら注文できるようにしたことで、新たなニーズを獲得している。

デリバリー用の「タホ」4種と黒蜜とサゴ。保存方法は要冷蔵で、電子レンジで温めて食べるのがおすすめ

 フィリピンでも新型コロナの収束はまだ見えないが、そんな中でもファミリーを中心に「タホ」は大人気。「さまざまな味を楽しむことができる」と好評で、今後も新たなフレーバーがますます増えていきそうだ。

タホ・バー(Taho Bar)
B1 Unimart Greenhills Shopping Center, Ortigas Avenue, San Juan City, Metro Manila
https://www.facebook.com/tahobarph/

取材・文/福田美智子(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1フィリピンペソ=約2.15円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。