Vol.226
ドリンクやスイーツの新たなトレンドを生み出し続けている台湾で、今話題を集めているのが「ドロっと系濃厚ドリンク」だ。ミルクティーなどにプリンやタロイモ、ピーナッツペーストといったスイーツや食材を混ぜたもの。タピオカミルクティーよりも飲みごたえがあり、ドリンクとしてだけでなく、おやつ代わりとしても楽しまれている。
後編では、台湾中部・雲林産のピーナツや、同じく中部・大甲産のタロイモをベースにしたミルクドリンクを紹介する。
ピーナツとミルクの“濃厚×濃厚”ドリンク
「大象吸花生(ダーシャンシーファシャン。英語名は「Elepeanut.8」)」は、庶民的な食堂や洋品店、雑貨店などが連なる「晴光市場(チングァンスーチャン)」に2019年3月オープンしたテイクアウト専門のドリンクスタンド。共同でオーナーを務めるのは、元エンジニアのレイフ・ウェイ氏と教育関係の仕事をしていたダミアン・リー氏。2人は高校の同級生で、ともにピーナツが好きであるというシンプルな理由から、店名に「花生(ピーナツの意味)」を冠した。
看板のドリンクは、濃厚なフレッシュミルクにピーナツペーストをブレンドした「大象吸花生(ダーシャンシーファシャン)」。「輸入物のピーナツは油っぽく、香ばしさが足りないため、台湾中部の雲林産のピーナツを使っています」とウェイ氏。
中でも一番人気は、「大象吸花生 3號(ダーシャンシーファシャン サンハオ)」(60元=約216円)。小さなタピオカ「西米(シーミー)」と、ピーナツを混ぜた白玉団子「花生圓(ファシャンユェン)」をカップの底に入れ、その上からピーナツペーストをたっぷり流し込み、さらにその上からミルク(もしくは豆乳)を注いだものだ。
さらに、台湾産タロイモのペーストと牛乳を組み合わせた「大象吸芋頭(ダーシャンシーユートウ)」も人気。「大象吸花生」と同じく、人気が高いのはタピオカとピーナツ白玉団子入りの「大象吸芋頭 3號(ダーシャンシーユートウ サンハオ)」(55元=約198円)だ。ピーナツペーストよりもタロイモペーストのほうがねっとりと重くて飲みごたえもあり、看板商品の「大象吸花生」に並ぶ人気メニューになっている。
台湾のドリンクスタンドでは注文の際に「サイズ」「氷の量」「糖度」を4~5種類の段階から選び、自分好みにカスタマイズできるのが一般的。しかし、同店ではあえてすべて1種類にしており、小さな子どもやお年寄りでも、オーダーしやすいと好評を得ている。
台湾台北市中山區農安街18-23號
https://www.facebook.com/elepeanut8/
2種類のイモを組み合わせた「超ドロっと系」も誕生
台湾ドリンクと台湾スイーツを販売する「清原(チンユェン)」は、タロイモの産地として有名な台湾中部に本社を構え、台湾全域に約100店舗のFCを展開。特にタロイモを使ったメニューに力を入れている。
台中から首都・台北への進出1号店として話題を呼んだのが「清原 台北酒泉店」。2020年11月から発売を開始した、タロイモとイチゴのミルクスムージー「莓好相芋(メイハオシャンユー)」(75元=約270円)がSNSで拡散され、注目を集めている。タロイモもイチゴも台湾で人気のある食材だが、その2つを組み合わせたドリンクやスイーツは珍しいと話題に。マイルドなタロイモのペーストと甘酸っぱいイチゴが牛乳の中で溶け合い、甘さは控えめ。濃厚で飲みごたえのある一杯に仕上げている。
「イモが好きな人や、より濃厚なドリンクを飲みたいという人には、タロイモと紫イモ、二つのイモのペーストを組み合わせたミルクスムージー『紫芋波波沙(ジーユーボーボーシャー)』(70元=約252円)も人気です」と、店長のウィルソン・ホァン氏は語る。「紫芋波波沙」には、紫イモを原料としたミニ団子がトッピングされており、“イモ尽くし”の濃厚な味わいが楽しめる。
客層は女性が中心で、学生やファミリー、近隣住民のほか、ビジネス層の男性グループが来店することもあるという。タロイモ×イチゴに、タロイモ×紫イモ。どちらも主役になりえる二つの素材をマッチングさせるのは、ありそうでなかったアイデア。タピオカを使うことが大前提のタピオカミルクティーと違い、濃厚でドロっとした食感を生み出す素材はプリン、タロイモなどさまざま。これからも“組み合わせの妙”を生かした新しいメニューが生まれていきそうだ。
台北市大同區酒泉街66號
https://www.q-yuan.com.tw/
取材・文/mimi(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ドル=約3.6円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。