(後編)米国発 人気急上昇!アジア風味のフライドチキン

以前からアメリカでテイクアウトを含めて定番メニューとして人気のフライドチキン。その中でも特に、アジア各国の味付けにこだわったメニューを紹介する。

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Vol.228

 手づかみでかぶりつける「フライドチキン」は、古くからアメリカ人に愛されるソウルフードの一つだが、近年は、これまでとは一味違うアジアンテイストのフライドチキンが人気を呼んでいる。前編では、この流行を牽引するグルメタウンの一つ、オレゴン州ポートランドからタイ風とカンボジア風のフライドチキンを紹介。引き続き、後編も、ポートランドで評判のアジア風フライドチキンで人気となっている店をリポートする。

蒸し煮で味を染み込ませたベトナム風フライドチキン

 ベトナムとアメリカのフュージョン料理を提供するフードカート(屋台)の「マッタ(matta)」。ベトナム系アメリカ人シェフ、リチャード・リー氏と妻のソフィア氏が2018年11月にアメリカ・オレゴン州ポートランド北東部のおしゃれなショップやレストランが集まるアルバータ通りで創業し、2021年1月からは同じエリアの住宅街で営業している。

 平日の人気メニューは、オリジナルフライドチキンの定食「ダラット」(15ドル=約1,630円)。フライドチキンは、鶏だし、タマネギ、ショウガ、ニンニク、塩、自家製ヌクマム(魚醤の一種)で作った秘伝のスープで鶏モモ肉を蒸し煮にしてから揚げたもの。一般的なフライドチキンは、小麦粉を付けてからバターミルクに浸し、もう一度小麦粉をまぶすが、同店ではそれをベトナム流にアレンジし、「米粉→ココナツミルク→米粉」の順で衣を付けている。

フライドチキンの定食「ダラット」。フライドチキンのほか、細切りにした紫キャベツやニンジン、ネギ、ミント、パクチー、チリ、揚げたエシャロット、炒ったピーナツなどを合わせたサラダ「ゴイ」、「カブの酢漬け」、「ジャスミンライス」を盛り付けてある。手前のカップに入っているのは、自家製のつけダレ

 フライドチキンの衣の味付けは、塩と細かく砕いたタイの乾燥唐辛子のみを入れてシンプルに。あらかじめ肉には下味を付けて火を通しているため、揚げ時間も短く、衣はサクサクで肉はやわらかくジューシー。そのまま食べるのはもちろんだが、つけダレとしてヌクマムに砂糖、ライムなどを合わせた自家製ヌクチャム(ベトナムの万能つけダレ)が添えてあるので、味を変えて楽しむこともできる。スパイシーな風味のフライドチキンと、爽やかなハーブがきいたサラダ「ゴイ」との相性も抜群だ。

 また、週末は「ダラット」の代わりに、「VFC(ベトナミーズ・フライドチキン)」(15ドル=約1,630円)を提供。ベトナム風フライドチキンをメインに、ココナツミルク入りのマッシュポテト、ヌクマム風味のコールスロー、グレービーとパンダンリーフを混ぜ込んだパンなど、ベトナムテイストの料理を随所に盛り込んでいる。

週末だけ提供している「VFC(ベトナミーズ・フライドチキン)」(matta提供)
時間が許す限り、顧客との会話の機会を作るというリー氏。自分のルーツであるベトナムとアメリカの味を融合させたメニュー開発に力を入れている

 主な客層は、周辺の住人や近隣で働くビジネス層。また、天気の良い週末には、SNSなどで店を知った人が遠方から数多く訪れる。「フライドチキンを目当てに、ランチタイム以外も客足が途切れません。アメリカ人はみんなそれぞれフライドチキンへの思い入れが強いからかもしれません」とリー氏は語る。

マッタ(Matta)
4311 NE Prescott Avenue, Portland OR 97218
https://mattapdx.com/

テイクアウトでもおいしい3種の韓国風フライドチキン

 2021年1月、ポートランドのダウンタウンにオープンした「トキ(Toki)」は、韓国系アメリカ人シェフ、ピーター・チョ(Peter Cho)氏による韓国料理店だ。コロナ禍の最中にオープンしたこともあり、デリバリーやテイクアウト向けのメニューを中心に販売している。

 中でも人気メニューは、コリアンテイストのフライドチキン「ハンオク・フライドチキン」(3個入り・10ドル=約1,090円)だ。手羽肉を塩と砂糖と水を混ぜた調味液に一晩漬け込むことで、肉に下味を付けつつ、柔らかくジューシーに。これに、複数のでんぷんを混ぜたグルテンフリーの粉を付けて2度揚げすることで、カリッと噛みごたえのある食感に仕上げている。

 フレイバーは3種類あり、一番人気は「エッセンス・オブ・インスタントラーメン」。韓国のインスタントラーメン「辛ラーメン」の粉末スープの味に近い乾燥キムチの粉とハーブをまぶしたものだ。

一番人気の「エッセンス・オブ・インスタントラーメン」。酸味と辛味の組み合わせが食欲をそそる。写真提供:Devon Wardle (@bleebl0b)

 その他のフレイバーは「スイート・ガーリック・ソイ・グレーズ」と「コリアン・ホット・チキン」。前者はフライドチキンに炒めたニンニクと砂糖を加えて飴状に煮詰めた溜しょうゆを全体に付けており、ニンニクの効いた甘じょっぱさが特徴。後者はチキンをチリオイルに浸けて、独自ブレンドのチリパウダーをまぶしたもので、見た目も真っ赤でかなり辛いが、癖になるおいしさだ。

右から時計回りに「エッセンス・オブ・インスタントラーメン」「スイート・ガーリック・ソイ・グレーズ」「コリアン・ホット・チキン」。1ドル(約110円)プラスすれば、3つのフレーバーを1本ずつ入れたセットに変更できる

 また、フライドチキンを使った「ブルダック・ラッポキ(buldak-ra-bboki)」(24ドル=約2,620円)も人気。インスタントラーメンの麺とトック(韓国餅)をコチュジャンベースのソースで味付けした「ラッポキ」の上に、チーズ、1/2羽の「コリアン・ホット・チキン」味のフライドチキンを乗せた一品だ。

アレンジメニューとして人気が高い「ブルダック・ラッポキ」。写真提供:Devon Wardle (@bleebl0b)

 ダウンタウンという立地もあり、客層はさまざま。それぞれ特徴が異なる3種類のフレイバーを用意したことで、子どもから大人まで楽しめ、飽きずに何度も来店したくなる店に成長した。

トキ(Toki)
580 SW 12th Avenue, Portland, Oregon 97205, US
https://www.tokipdx.com/

取材・文/東リカ(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ドル=約105円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。