2014/10/20 NEWS

「東北食の力プロジェクト」が「ディスカバー農山漁村の宝」に認定

仙台の外食関係者が中心となった「一般社団法人東北食の力プロジェクト」が、内閣官房と農林水産省主導の「ディスカバー農山漁村の宝」に認定。生産者と飲食店が直接取引・流通を行うことが評価された。

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仙台中心街で開催された「海と大地のおくりもの」。イベントでは宮城の食材だけで直径5cm×長さ5mもの巨大太巻が作られ、多くの参加者が地元食材の魅力を再発見

生産者と消費者をつなぐ、飲食店活動モデルを東北から

農山漁村(むら)のポテンシャルを引き出し、地域の活性化や所得向上に取り組んでいる優良事例(=宝)を発掘しようと、内閣官房と農林水産省が主体となり2014年2月に募集を開始した「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」。全国から251件の応募があり、5月には23団体が認定。その1つに選ばれたのが、仙台市の外食関係者が中心となった「一般社団法人東北食の力プロジェクト」だ。生産者と飲食店が直接取引・流通を行い、都市と地域を結ぶ販路拡大のサイクルを創り出したことを評価されたものであり、9月4日に仙台市・江陽グランドホテルで行われた祝賀会には、宮城の食に携わる関係者をはじめ、宮城県の政財界トップの面々が集結。“宝”への期待の大きさを認識し合う集いとなった。

そもそも 同プロジェクトは、2011年10月10日、東日本大震災の復興を目的にスタートした仙台の街コン「せんコン」の実行委員会が母体。仙台と東京で飲食店を12店舗経営する、株式会社スタイルスグループ代表取締役の佐々木浩史氏を中心に、仙台を元気にしようと定期的に「せんコン」を行ってきたが、復興第2ステージとして、生産者と飲食店が手を携えて復興からの発展を展望。2013年春からは佐々木氏を理事長に、一般社団法人として活動をスケールアップ。その“キックオフイベント”として、同年6月にはイベント「海と大地のおくりもの」を開催した。このイベントでは、仙台中心部のアーケード街で、子供たちと一緒に宮城の食材で巨大な太巻きを作ったほか、地元の生産者による野菜や魚介の直販などを行い、約3万人が来場。「地域力」と「販売力」の高まりを目の当たりにし、生産者支援と飲食店をベースにした活動を、県内に留まらず全国へ発信する姿勢を新たにしている。

また、「東北食の力プロジェクト」に参加する飲食店は、それぞれ生産者とつながり、宮城産の食材を扱っているが、佐々木氏が経営する店舗では鮮魚をメニューの中心に据え、例えば女川のホヤのブランディングにも尽力。有限会社カフェクリエイト代表取締役社長・八尋豊氏が経営する店舗では、生産者を店に迎え、来店客と直接コミュニケーションできる店づくりを実践するなど、それぞれに地域産品のブランド化と販路拡大に貢献。また、物流コストを軽減させるために、地元の酒屋がターミナルとなり、酒を配送するついでに農水産物なども運ぶなど、インフラ整備にも力を入れている。

生産者を支援し、飲食店が先頭になって6次産業化を推進する「東北食の力プロジェクト」では、今後も宮城・東北の食を全国へ発信し続けていく。

6月には「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」選定授与式が行われた。全国から23の団体が認定され、その認定証、記念の盾、授与式の記念写真が祝賀会会場入口に飾られた。
祝賀会には宮城県の政財界・飲食関係者が集まり、様々な立場から地元への期待が語られた。今後は官民一体となってプロジェクトを盛り上げるべく、名刺を交換する姿も目立った
祝賀会会場で活動をアピールする、東北の若手漁師集団「一般社団法人フィッシャーマンジャパン」のブース。三陸の漁業を元気にさせ、次世代が憧れる水産業のかたちを追求する
一次産業の若き担い手「宮城のこせがれネットワーク」の食材は、八尋氏の店舗にて、ビュッフェや特別料理で提供。祝賀会会場に設けられたブースで、その活動をアピールした

「東北食の力プロジェクト」とは

東日本大震災からの復興を目的に、仙台の飲食店・酒販店などが中心となったボランティアで、20回以上開催された「街コン」=「せんコン」の実行委員会が母体。「せんコン」の参加者はのべ1万人を超え、街の活性化に貢献してきたが、さらに地元の「食」の力で真の意味での復興を推進するため、2013年新たに発足したのが「一般社団法人東北食の力プロジェクト」。飲食店が生産者と消費者の懸け橋となり、宮城・東北の食材と料理を全国に広め、生産者とともに地域の活性化を目指す。賛同する飲食店は現在、約60店を数える。

株式会社スタイルスグループ
代表取締役 佐々木 浩史 氏

仙台市中心部で「奥州魚河岸酒屋 天海のろばた」など鮮魚系の居酒屋11店舗と、東京・人形町に「三陸 天海のろばた」を展開。実行委員を務めた「せんコン」を基盤に「東北食の力プロジェクト」を立ち上げ、理事長を務める。

生産者は飲食店を通して食材をブランディングでき、飲食店は生産者の顔を見せたり、想いを伝えることなどによって、お客様の信頼を得ることができます。様々な付加価値を盛り込み、漁業が花形の産業であるノルウェーのように、東北に日本のモデルケースを作りたいと思いっています。

有限会社 カフェクリエイト
代表取締役 八尋 豊 氏

「畑のあぐり」や「VERANDA」など、生産者参加型という新しいスタイルを取り入れた店づくりで、宮城の農産物の魅力を消費者へ伝える。佐々木氏に共感し、「東北食の力プロジェクト」では理事のひとりとして運営を推進・サポートする。

『ディスカバー農山漁村(むら)の宝』の認定はゴールではないし、認定されたからこそ、今後も責任を持って生産者と消費者をつなぎ、地元の『食』を通して新しい産業を作っていきたいです。東日本大震災を乗り越えることで、東北が元気になったと言われるようになればうれしいですね。