2021/09/30 NEWS

加速する「脱プラスチック」。使い捨てプラスチック製カトラリー、飲食店でも削減が義務に

使い捨てプラスチックを削減する取り組みが世界的に加速する中、来年4月に施行される「プラスチック資源循環法」では、飲食店にもプラスチック製カトラリーの削減が義務付けられる方針だ。

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カトラリーの素材変更や提供方法の工夫など、検討進む

 環境汚染につながるプラスチックごみを減らすため、近年、プラスチック製品の削減があらゆる分野で進められている。昨年7月にプラスチック製の買い物袋が有料化され、飲食業界でもテイクアウト用の袋を紙やバイオマス由来原料のものに変更するといった対応が取られているのは記憶に新しい。その買い物袋に続いて、今年6月には、さらにプラスチック製品の削減を推し進める「プラスチック資源循環法」が成立。8月23日にその具体策が公開され、小売店をはじめ飲食店にも、プラスチックごみの削減を義務化する方針が示された。

 飲食店(テイクアウト・デリバリー専門店を含む)で削減すべき対象となるのは、プラスチック製のストロー、スプーン、フォーク、マドラーなどの使い捨てのカトラリー類。削減の具体的な方法としては、有料化や消費者への要・不要の意思確認、再利用などのほか、再生可能資源などの代替素材を使ったものへの切り替えなどが示されており、政府は2022年4月からの施行を目指している。

 こうした政府の動きに連動して、企業も対応を始めている。食品包装用資材などを取り扱う株式会社シモジマ・マーケティング部の尾尻新吾氏によると、「今春ごろから、スーパーなどの大手量販店を中心にバイオマス原料を使ったカトラリーに変更するといった動きが出てきています。外食業界でも、特にテイクアウト・デリバリーに注力されている大手企業からはお問い合わせが増えてきました」と話す。

 今回の法律で削減に取り組まなければならないのは、対象のプラスチック製品を年間5トン以上提供している大手企業のみで、多くの飲食店は対象外。国は、中小事業者に対しては自主的な取り組みにゆだねるとしているが、法律の施行後は脱プラスチックの流れがますます加速すると見込まれる中、規模に関わらず、プラスチック製品を削減していくことは今後さらに重要になるだろう。

 では、プラスチック以外の素材を使ったカトラリーには、どのようなものがあるだろうか。「木製や紙製のもの、バイオマス原料を含むものが主なラインナップ」と尾尻氏。バイオマス原料の製品とは、コーヒーを抽出した後のコーヒー豆や、コーンスターチといった植物由来の素材を混ぜ込むことで、プラスチック利用量を抑えたもの。紙製のカトラリーについては、「以前は強度が低くアイスクリームなどのデザート用カトラリーに使われる程度でしたが、最近は強度が高まり、食事でも問題なく使えるように改良されています」(尾尻氏)。

 ストローについては、紙製とバイオマス原料のものが多く出回っているが、竹でできたシリーズなど、新素材の商品も続々登場しているという。

軽くて丈夫な「木製カトラリー」。紙で完封されたタイプもある。食事用に適した16cmのほか、やや小さめの14cm、10cm、8.5cm、デザート用の6.5cmなどサイズも豊富。価格は16cmのスプーンで4.5円(税抜き)
紙製の「エリプラペーパーカトラリー」。繊維が丈夫で、リサイクルにも適したパルプを使用。食事用のほか、デザート用、ピックなどもラインナップ。デザート用サイズスプーンは5.4円(税抜き)
「コーヒーバイオカトラリー」。抽出後のコーヒーをプラスチックに混ぜ込んだバイオマス素材のカトラリー。食事用としても十分な強度がある。16cmのスプーンで5円(税抜き)

 課題となるのはコストだ。スプーンやフォークなどについては木製の引き合いが強いというが、木製はプラスチック製と比較してコストが2~3倍になる。これをどう吸収していくか、または買い物袋と同様に有料化していくのかなど、対応を検討しなければならない。また、コストをかけなくても、前述の「プラスチック資源循環法」で示されている通り、来店客にカトラリーの要・不要を聞き、必要な場合にのみ提供するといった工夫でもプラスチックの削減は可能だ。

 「8月に提示された方針ではカトラリー類のみでしたが、今後はドリンクカップや箸袋なども削減対象になる可能性があります。実際、量販店ではすでにそれらの素材変更に動きだしています」(尾尻氏)。国の動きだけでなく社会の関心も高まる中で、今後さらに強まると予想される脱プラスチックの流れ。自店でどのような取り組みができるかを考えるよい機会かもしれない。