2021/10/20 NEWS

飲食のDX先駆者らによるセミナーが、これからの経営戦略を学ぶ場に! 第2回フードテック ジャパン

10月13~15日の3日間、千葉・幕張にて外食・食品業界向けデジタル機器の展示会「第2回フードテックジャパン」が開催。飲食業界のDX先駆者らのセミナーも行われ、会場は多くの関係者で賑わった。

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店舗のDX化を実現する製品が一堂に会し、飲食店関係者も多く来場

 人手不足や労働環境の改善を目指し、外食を含む食品業界全体で、自動化・省人化が急速に進みつつある。そうした中、10月13~15日、デジタル技術を用いた食品業界向け機器の展示会「第2回フードテック ジャパン」が幕張メッセ(千葉・幕張)で開催された。会場には、配膳ロボットやオーダー・会計システムなどのメーカー・代理店らがブースを多数出展。製品を直接見て比較検討できるイベントとあって、同時開催された飲料製造技術に関する展示会「第7回ドリンクジャパン」と合わせて約1万6,000人が来場した。

  • 株式会社SGSTは、猫型の配膳・下げ膳ロボット「Bellabot」や、ディスプレイ付き配膳・下げ膳ロボット「Kettybot」などを展示。「Bellabot」は来店客の案内も可能。店舗のテーブルトップオーダーシステムに、ロボットを呼ぶボタンを加えるなど、要望に合わせてさまざまなカスタマイズもできる
  • SOCIAL ROBOTICS株式会社は、ホール業務代替ロボット「BUDDY」などをアピール。配膳・下げ膳のほか、消毒薬を積めば閉店後の店内消毒などにも使える。床に敷設したマーカーを認識して安全・確実なルートで走行するのが特徴
  • ゴールデンバーグ株式会社は、日本初の無人化機能を搭載した食品販売機「スマリテ」を紹介。「スマリテ」のアプリをダウンロードして決済情報を登録した顧客であれば、販売機のドアを開錠し、商品を取り出すだけで購入が完了する。冷蔵、冷凍、常温の保管が可能。店舗外に設置すれば24時間商品の販売が可能
  • Tokyo Smart Restaurant 合同会社は、デリバリーシステムの管理ツール「hubster」を紹介。「Uber eats」「menu」「出前館」など、異なるデリバリーシステムの注文を一括管理できるもので、タブレットなどの端末も1つにまとめられる。メニューごとの売れ行きを把握でき、効率的な在庫管理も可能

 また会場では、店舗のDX化に関するセミナーも開催。初日の基調講演には、パンケーキブームの火付け役となったカジュアルレストラン「Eggs’n Things」を運営するEggs’n Things Japan株式会社・代表取締役CEOの松田公太氏が登壇した。

基調講演で講演する松田氏。「当社のDX化はまだまだ試行錯誤の段階だが、新しいことにチャレンジし続けて、将来的に飲食業界全体のDX化にも貢献できれば」と展望を語った

 松田氏は、コロナ禍の飲食業界の実情と今後の課題、Withコロナ時代をにらみ自店で取り組んでいる「AIアバターレジ」について講演。冒頭でコロナをきっかけに飲食業界から人材が流出し、スタッフを採用しづらい状況が生まれていることに触れ、「売上は減少するが、人件費、原材料費は増加という厳しい状況が今後も続くはず。だからこそDX化で人件費削減を目指すという話が出るが、私自身は、単純な人件費削減のためにDXにチャレンジしているわけではない」とコメント。「店員と来店客とのコミュニケ―ションをはじめ、外食にはエンターテインメント性が含まれている。効率化を突き詰めるのではなく、外食ならではの楽しさを含んだ形でのDX化を目指したい」と話し、ウェルヴィル社と共同開発した「AIアバターレジ」について紹介した。

 「AIアバターレジ」とは、モニターに映し出されたAIアバターと会話することで、注文と会計ができる完全非接触型のレジシステム。来店客がモニター近くに置かれたメニュー表を見て口頭で注文すると、AIアバターが人と同じように反応し(耳で聞き、口で発話し、手ぶりで意思表示)、サイズ選択や会計までスムーズに案内。また、「今日は暑いのでアイスコーヒーにされますか?」といった提案などもできるという。松田氏は、「AIアバターはまだ改善途中。来店履歴のあるお客様を覚え、前回のオーダー内容を把握した上で追加メニューの提案などができるようになれば、売上アップにもつながる。今後、さらに研究を進めて外食業界全体のDX化にも寄与できれば」と語った。

 同じく13日には、「加速する飲食店の非接触化!見えてきた課題と対策」をテーマに、くら寿司株式会社・テクノロジー開発部・マネージャーの橋本大介氏と、株式会社トリドールホールディングス・執行役員CIO・BT本部・本部長の磯村康典氏が講演した。

橋本氏は、「くら寿司店舗の教育スタイルである『見せる・やらせる・チェックする・褒める』が、DX化でも大変重要。責任者が常に部下のレベルを上げることに興味を持って、1つ下の階層の部下に伝えて実践させること。会社に認めてもらい、部下に成果を与えるために、責任者自身が結果を出すことも大切」と話した

 くら寿司株式会社は、新型コロナの発生以前からタッチパネル式のオーダーシステム導入など、DX化に注力。店舗の作業を機械化し、スタッフが接客に集中できる環境を作ることが目的で、これを「スマートくらレストラン」と名付けて、システムなどの多くを自社開発。橋本氏は、来店予約ができるスマホアプリと、入店した客の予約を読み取って席番号を提示する案内システムなどを使って、来店客がスタッフの案内無しで席に付ける仕組みや、食べた後の皿を自動で計測するAIシステムなどを紹介。一連のシステムは、今年度中に全店舗に導入予定だという。

 こうしたDX化の効果として、橋本氏は「コロナ禍では、このシステムで非接触でのサービス提供ができ、お客様もスタッフも安心度が高まった。また、お客様自身が操作するシステムが多いため、スタッフはお客様が困ったタイミングに呼ばれることになる。そうすると、お客様から感謝してもらえることが多くなり、スタッフも楽しく、クレームトラブルが減るというメリットもあった」などと言及。また、店舗のさらなる大型化にも寄与すると話した。

磯村氏は、2019年1月より経営戦略の一環としてスタートさせた「DXビジョン2022」について講演。業務システム、ネットワークなどのバックオフィス業務を対象に徹底した効率化を進めており、「現在はプロジェクトの途中段階だが、旧来のシステムから見直したことで、コストダウン、トラブル削減の効果があった」と話した

 続いて演台に立ったトリドールホールディングス株式会社の磯村氏は、バックオフィス業務などのDX化について講演。同社では、接客や調理などメインとなる店舗業務は機械化せず、事務作業などの効率化を徹底的に進めているという。「『丸亀製麺』の店内製麺など、実演調理の部分と接客は、手間を惜しまず人の手で担う。残すべき自社の強みと、変化すべき業務を明確にすることが重要」と述べ、いつでもどこでも、安全に業務システムを使える環境整備に注力していることなどを紹介した。