2011/07/19 NEWS

夏本番!万全ですか?食中毒対策

いよいよ夏本番。食物が傷みやすく、飲食店にとって衛生管理にもっとも注意をしなければいけないシーズンに向けて、飲食店経営のオピニオン誌「Food Biz」主幹の神山 泉氏が緊急提言。

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いよいよ夏本番。食物が傷みやすく、飲食店にとって衛生管理にもっとも注意をしなければいけないシーズンに向けて、飲食店経営のオピニオン誌「Food Biz」主幹の神山 泉氏が緊急提言。食中毒事故を未然に防ぐために、お店が取るべき対策とは。

トップが強い恐怖心を持ち、隅々にまで浸透させることが大切

だいぶ以前の話になるが、大きな商業ビルのトイレで、小用を終えたコック服の料理人が手も洗わず、スタスタと出て行ってしまった。私は追いかけていって、その料理人の前をまわって「手ぐらい洗ったらどうか」と詰問した。彼は、一瞬ギョッとしたが、そのままビル内の中華料理店に逃げ込んでしまった。多店舗経営の結構、有名な店である。

これ以来、この有名店に足を踏み入れたことは一度もない。

こんな言い方は問題があるかもしれないが、衛生意識が希薄な料理人が多いように思う。例えば中華料理店では、強火で処理する料理が多いために、食中毒が発生しづらいのだ。それで油断していると、ときどき冷菜や焼豚などで食中毒を出す。

中華ばかりではない。コック服を着た他の業種の料理人とトイレで遭遇することはしばしばあるが、十分に手洗いしている人に出会ったことがない。ちょっちょっと指先を濡らしただけで退出してしまう。こういう光景を目にすると、いつ食中毒が起こっても不思議ではない、と戦慄してしまう。

そもそもお客と従業員がトイレを共有すること自体に、私は強い抵抗感を覚える。コック服を着たまま共用トイレに入ってくるのは、おかしいのではないか。

食中毒を防止するにはチェックを厳しくする以外にない。 チェックというと、従業員やパート・アルバイトの衛生チェックだけを考えがちだが、生産業者、食材の製造元、物流業者、出入りのメンテナンス会社と、店にモノを入れてきたり、入ってくる人間すべてをチェックしなければならない。

ということは、生産現場や、メーカーの工場や、物流センターなどのすべてのポイントを強権を持って定期的に検査する専門職の人間が社内に存在しなければならない、ということだ。そして、同じ客観的な視線で、同じ強度を持って、社内の人間にも目を光らせていなければならない。

単独店の場合、それは社長であるが、できるだけ早く、社長の手から離れて専門の人間を置くべきである。

この人の職務は、社内外で絶対的な権限を持つ、いわば「憲兵」である。「憲兵」とは組織内警察であるから、衛生と安全に関しては、社長をも支配下に治める。どんな事情があろうと、例外を認めず、公平に厳しく目を光らせる存在でなければならない。

つまり、社内で煙たがられる人物がその組織の長になっていなければならない。自分すらも支配下に入る、こういった機関を持つ勇気をトップが持てるかどうか。この決意の強さが、食中毒の発生を食い止めることになる。

単独店や小規模店の場合は、店主(ならびに調理長)が食中毒に対して強い恐怖心を持ち、食中毒の致命的な怖さを絶えず、しつこいくらいに、定期的に社員やパート・アルバイトに注入し続けることだ。そして、絶対にやらなければならないことを、具体的にルール化する。ルールを破った者は、たとえ店主(社長)の右腕であろうと、即解雇である。

厳しすぎるなどと言うなかれ。いったん食中毒を出せば、店は潰れるのだから。

株式会社エフビー
代表取締役
神山 泉 氏早稲田大学卒業後、株式会社柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て2002年、株式会社エフビーを設立。翌年、外食・中食産業の経営者向け専門誌「Food Biz」(フードビズ)を創刊。現在、同誌の主幹を務める。
URL:http://f-biz.com
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