前コン実行委員会が構想する、街と飲食店の未来

1000人参加の合コンイベントの仕掛け人がノウハウや構想を明かす。去る6月4日、前橋に1,200人を超える男女が集結し、その盛り上がりが全国に報じられた500人対500人の大規模合コンイベント「前コン」。飲食店や街そのものを活性化させる企画として他地域にも波及している。

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特別対談企画

500人対500人の大規模合コンの仕掛け人「前コン実行委員会」が構想する、街と飲食店の未来

去る6月4日、前橋に1,200人を超える男女が集結し、その盛り上がりが全国に報じられた500人対500人の大規模合コンイベント「前コン」。飲食店や街そのものを活性化させる企画として他地域にも波及している。今回、その仕掛け人である、前コン実行委員会の代表メンバー5名にお集まりいただき、企画の発端やコンセプト、開催までのノウハウや今後の構想などについてうかがった。

前コン実行委員会の代表メンバー5名にお集まりいただいた

前コンの成功は、人を集めたその先にある

6月に行われた第1回「前コン」は大きな反響を呼びました。どんな想いで開催までこぎ着けたのでしょうか。

齋藤

去年の2月頃から若手経営者が集まる会合を開いていたのですが、そのとき話題に上った「宮コン」(栃木県宇都宮市で開催されている大規模合コン)の話から、企画が一気に動き出したのを覚えています。実行委員会を構成するのは平均年齢35歳の若い経営者ばかり。会議には毎回10人前後が集まり、次回に向けての計画を練っています。

村山

皆、飲食店のあり方について同じ問題意識を共有していたと思います。若い世代の経営者は地代などの問題に直面し、前橋の中心街である千代田町を離れ、郊外に展開していかざるを得なかったんです。彼らが千代田町でやりたいと思えるだけの魅力が欲しかった。前コンは、街に輝きを取り戻すいいきっかけになるのではという期待がありましたね。

齋藤

全国的に言われている〝シャッター商店街″のような問題は、千代田町にもあり、同じように苦しんでいます。人が来ないからお店は早々に閉まってしまい、お店が閉まるから余計に人が来なくなる。前コンを開催する意義は、そうした負の連鎖が進んでしまった街に、再び人を引き込むことにあると思っています。

第1回目の前コンは1200人もの集客を実現。大成功だったのでは?

齋藤

確かに目標を超える数のお客様が来てくださったし、取り組み自体も全国に報道されました。しかし街の活性化という点ではまだ〝成功″とはいえません。

鏑木

継続的に続けていくことで、人々に街に出るという習慣ができてくるのだと思います。街にはいいお店がいっぱいあるということを知ってもらうのが、我々にとっての第一歩ですね。

とはいえ前コン後、手応えを感じる部分もあったのではないですか?

鏑木

中心街が潤えば、郊外のお店にもいい影響が生まれてきます。前コン自体は22時が終了時間。前回はお客さんの多くがその後、郊外店に流れていきました。次回開催時には、22時以降にお客様にお勧めできる郊外のお店を集めた『協力店マップ』を作る予定です。

齋藤

前コンでの売上だけを見れば、各店への配当金も少なく利益はそれほど大きくはありません。ただこれを宣伝のひとつだと理解して、フードメニューに手を抜かなかったお店には、その後もお客様がやって来て下さっているようです。

川崎

ただ出会いの場を提供するだけでは、お客様に満足してもらうことはできません。各店が横並びでお客様を迎えるにあたり、最高のサービスを提供することに意味があるのだと思います。

前コンの認知度を高めることに成功した要因のひとつが、地元FM局との連携だったと思います。齋藤さんと村山さんは、おふたりで番組のパーソナリティとしても活動されているのですよね。

齋藤

前コン当日は各店にリポーターを派遣し、生放送を行ないました。駐車場の混み具合から、お店の受付状況、乾杯の合図や席替えの合図まで実況中継したんです。横浜で開催されている「濱コン」などツイッターを活用した例もあるようですが、前橋のような地方都市ではまだまだ普及していない。その点、ラジオは絶好の媒体でした。

リポーター以外にも、多くのスタッフを周到に配備されたと伺っています。

齋藤

誘導やセキュリティのための街角スタッフには40名以上の協力がありました。開催日まで、皆で考え得るすべてのトラブルを潰していきましたね。落とした眼鏡を誰かが踏みつけて壊してしまったときのための保険をかけたほどです。

村山

街にはもちろん住宅地もありますが、一軒一軒に事前に説明をして、当日の騒音に対する根回しも行ないました。

堀越

メンバー皆がそれぞれの得意分野を理解して、役割を割り振ることができたのがよかったですね。

齋藤

各店舗、お互いに名前は知っていても横のつながりは意外と少なかったんです。それが、前コンを機に街中で声を掛け合うようになった。前コンが生んだもうひとつの効果ですね。

前コンには街全体を巻き込む側面もあるのですね。

川崎

僕は30歳と、実行委員の中でも一番若いメンバーです。だからこそ、先輩方から勉強することがたくさんあります。各店が情報交換して、飲食店の質が底上げしていけば、お客さんは戻ってきてくれると信じています。

齋藤

9月に開催を予定している第2回の「前コン」では、飲食店に限らない幅広い連携を模索しています。例えば運転代行サービスはクーポン券を発行し、ホテルはチェックイン・アウト時間にゆとりを設けて、前コンの参加受付も行なうようになります。飲食店以外にも協力を申し出てくれるお店が出てきて、前コン参加者に割引サービスを提供してくれることにもなりました。今後、一丸となって街おこしをしていく、そんな色合いが益々強くなっていくと思っています。(敬称略)

6月に開催され、実に男女1,200人の参加者を集めた第1回目の「前コン」。第2回目はさらに規模を拡大し、1,500人を動員する計画。9月24日に開催が予定されている。
「前コン実行委員会」委員長
齋藤 陽一 氏リストランテ・バー「ラ・カンティーナ」、MAEBASHI・BAR「宇野/UNO」経営「僕が若い頃には、前橋の街に出れば何か楽しいことがあるという期待が常にあった。若い人が憧れを持って出かけられるような街を、僕らの手で再び取り戻したい」
村山 裕 氏「わいわい酒場 goo」「古民家的酒場 白虎」経営「ひとつのテーマとして『地産地消』を考えた取り組みも行なっていきたい。地元である前橋を盛り上げていくと同時に、日本を元気にしたいと思っています」
川崎 祐亮 氏「IMARI」「戦国居酒屋 砦」他、経営「参加されているお店の方々は、皆さんプロフェッショナルばかり。お店づくりに対してそれぞれ違った視点を持っていて、経営者として勉強になります」
鏑木 盛太 氏「東洋酒家」「えにし」他、経営「県外のお客様も呼び込んで、『前コン』を地元の観光の目玉にしたい。他の同じような合コンイベントの中でも、リーダー的存在になれると思っています」
堀越 昌繁 氏「えびすや」「さんたろう」経営「前橋で働くことが楽しいと思えること。それが一番大事だと思います。『前コン』は、お店の経営者や従業員、働く人皆が輝けるような場所づくりに貢献していると思います」

前コン オフィシャルHPhttp://maecon.info/