イタリア発 流行の先端を行くアメリカンフード 後編

イタリア・ミラノではニューヨークで人気の「アメリカンフード」を提供するレストランが増え、話題を呼んでいる。後編ではアメリカンスイーツであるカップケーキで人気を集める2店舗をご紹介。

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Vol.70

ここ最近イタリア・ミラノでは、ベーグルやパンケーキといったニューヨークで人気の「アメリカンフード」を提供するレストランが増え、話題を呼んでいる。前編ではアメリカンベーカリーで人気の店を紹介したが、後編ではアメリカンスイーツのなかでも、特におしゃれに敏感な女性の間で人気を集めている店「ヴァニラ・ベーカリー」と、カップケーキ専門店「カップケーキ・クチュール・ミラノ」に注目。ミラノの女性たちに支持されている理由を探る。

かわいらしいケーキとドリンクが人気のポイント。左の「キャロットケーキ」のクリームにはニンジンが裏ごしして使われている
アメリカンスイーツの人気店の1つ「ヴァニラ・ベーカリー」の店内。ピンク色をベースにコーディネートされ、週末はトレンドに敏感な女性であふれる
デコレーションされたジャスミンの木が目印の「カップケーキ・クチュール・ミラノ」。かわいらしいエントランスが女性客を引き付ける

アメリカの人気ドラマを彷彿させるポップでキュートなスイーツ店

昨今、ミラノの女性たちは観光や仕事で渡米する機会が増え、さらにイタリアでも大ヒットとなったアメリカのTVドラマ「セックス・アンド・シティ」などに触発されたことで、まさにニューヨークにあるような「アメリカンスイーツ」の店が話題となっている。そのなかでも週末には女性客であふれるほどの人気の店が「ヴァニラ・ベーカリー」(Vanilla Bakery)だ。イタリア人には馴染みのなかった、本場アメリカのチーズケーキ、カップケーキ、ブラウニーなどのスイーツのほか、ベーグルやサンドイッチ、ベジタリアン向けのファラフェル(ヒヨコ豆に香辛料などを混ぜた小さなコロッケ)などのフードメニューが充実している。

「ヴァニラ・ベーカリー」のカウンター。ショーケース一杯にならぶカップケーキは常時最低でも10種類のフレーバーを用意

特に人気のスイーツは、フレッシュフルーツなどを混ぜて作ったカラフルなクリームやフレーバーがたっぷりかかった色とりどりのカップケーキ。ケータリング用のホールケーキも、ミラノではあまり見られないポップな色使いのデコレーションで人気だ。

店は、ミラノ市内西部、サン・シーロ通りのワーグナー駅近く、ミドルアッパー層が暮らすエリアの商店街にあり、主に若い母親たちがターゲット。そのため、子供にも好まれるよう味は甘めにし、ビタミンカラーのポップな色使いのスイーツが並ぶ。さらに、店の外観・内観・インテリア・小物に至るまでとにかくカラフル。それまでミラノでは見かけなかった個性的なスタイルが、彼女たちにとっては新鮮に映った。

この店は、渡米経験も豊富なファッション業界出身のクリスティーナ・ベルナスコーニ・ラッフォル氏が、子供の頃から憧れていた「アメリカンスイーツ」の店として、2012年2月にオープンさせた店。お皿からカップ、小物などは、彼女自身が2年という時間と情熱をかけて集めたもので、店はその集大成として作られた。それだけに、店内は女性が“かわいい”と思うアイテムやインテリアがあふれており、まさに「セックス・アンド・シティ」や「ゴシップガール」などを彷彿させる。そのクリスティーナ氏のセンスやこだわりが、ファッション感度の高いミラノの女性の心をとらえたといえる。

「来店されるお客様が、この空間にいるだけで、甘く温かく癒された気分になることが私の希望なのです」とクリスティーナ氏。人気店というだけに、今年9月にはひと回り大きい店舗へとリニューアルする予定だ。

フライドポテトと相性抜群の「エッグ・ランチ」。特にオーブンでふんわり焼かれた目玉焼きが好評だ
「ヴァニラ・ベーカリー」のオーナー、クリスティーナ・ベルナスコーニ・ラッフォル氏。3人の子供のママでもある
SHOP DATA
ヴァニラ・ベーカリー(Vanilla Bakery)
Via San Siro 2 Milano
http://www.vanilla-bakery.com

スイーツも「テイクアウト」がミラノっ子のトレンドスタイル

一方、ミラノの学生や若い女性たちの間でトレンドとなっているのが「テイクアウト」だ。これも前出で紹介したアメリカのTVドラマの影響を受けている。そこにいち早く目をつけたのが、ティッィアーナ・スピネッリ氏。彼は、それまでミラノになかった、カフェを併設しないテイクアウトのみの「カップケーキ・クチュール・ミラノ」(Cupcake Couture Milano)を2011年9月にオープンした。映画「プラダを着た悪魔」にも登場した、ニューヨークで人気の「マグノリア・ベーカリー」のように、カフェを併設しないカップケーキ専門店だ。オープンと同時に様々なメディアで紹介されたことで、トレンドに敏感な若者たちの間に広まり、一気に人気店となった。

パステルカラーの上品な色使いが人気のカップケーキ。目移りするくらい楽しいディスプレイも好評

店は、ミラノ中心部の南部、セレクトショップやレストラン、パブなどが立ち並ぶティチネーゼ・ゾーンのメインストリート、ポルタ・ティチネーゼ通りにある。ここは、週末となると若者たちやアーティストたちで賑わうホットなスポットで、切り売りピザを販売する店なども流行っており、若者たちがランチをテイクアウトして路上で食べる姿を多く見かける。

メニューのカップケーキには、「ヴァニラ・ベーカリー」と同様、フレッシュフルーツなどを使ったカラフルなクリームがかかっているが、上品なパステルカラーを基調に、甘さも控えめと少し大人向け。さらに、トロピカルフルーツ味などバラエティ豊かなメニューに、通常サイズ(約3ユーロ=約410 円)とミニサイズ(約1.5ユーロ=約200円)があることも若い女性にうけている理由だ。「私たち大学生にしてみれば、カフェでお茶を飲むより、いろんなおいしいものを好きな場所で食べたい」と、カップケーキを買いに来た19歳の大学生は語る。

また「カップケーキ・クチュール・ミラノ」は、ペパーミントグリーンの窓枠と、ジャスミンの植木が目印で、外観の注目度も高い。「あえてテイクアウト専門店にしたことが、このエリアの客層に受け入れられた」と、共同経営者のロセッラ・ゼイェス氏。ニューヨークのアメリカンスイーツ店のを踏襲したことが、トレンドに敏感なミラノの若者たちが求めるライフスタイルにはまったといえるだろう。

挙式会場用にデコレーションされた、カップケーキによるウエディングケーキ。ケータリングも行っている
ショーウィンドウは、ニューヨークのスイーツ店を意識したポップな色使いと小物がアクセント
SHOP DATA
カップケーキ・クチュール・ミラノ(Cupcake Couture Milano)
Via Edmondo De Amicis 7 Milano
http://www.cupcakecouturemilano.com

取材・文/山口けいと

※通貨レート 1ユーロ=約137.9円

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