アメリカ発 グレインボウルが人気 後編

シアトルなどアメリカの都市部では穀物(グレイン)を使った「グレインボウル」がトレンドに。後編では、食材や味付けをエスニック風に変えるなどした、“新感覚”のグレインボウルを紹介する

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Vol.138

世界的IT企業が多いことでも知られるシアトルをはじめ、アメリカの都市部では、「グレインボウル」がトレンドとなっている。グレインボウルとは、穀物(グレイン)に、肉や豆などのたんぱく質、野菜、ナッツ、フルーツなどを組み合わせた「丼(ボウル)」というのがそもそもの意味。だが、最近では見栄えをよくするために「平皿(プレート)」に盛り付けたものや、粒の穀物ではなく「シリアル」や「海藻からつくった麵」をベースにした新種も続々誕生。「早い、うまい、ヘルシー」の三拍子とも相まって、ビジネスパーソンを中心に人気を呼んでいる。

後編では、食材や味付けをエスニック風に変えるなどした、“新感覚”のグレインボウルを紹介する。

玄米と野菜に、ピーナッツソースを組み合わせてエスニック風の味わいに仕上げたグレインボウル。フォークのほか割り箸を用意していることも
グラノーラやバナナ、自家製ココナッツヨーグルトなどを使った朝食スタイルのグレインボウルも人気。きれいな盛り付けも売りの一つ
つるりとした食感のケルプヌードル(海藻麺)を使用したグレインボウルも登場。生野菜と合わせる“サラダ麺”風で、さっぱりと食べられると好評だ

アジア風の味付けでひと味違うグレインボウルに

アメリカ・シアトルの北部にあるラベンナ地区は、住宅街や公園が広がり、新しい駅ができるなど開発が進むエリア。この地に、「ハートビート・オーガニック・スーパーフード・カフェ」がオープンしたのは2008年12月のこと。

「アウェイクン・ボウル」は、焼のりやゴマがトッピングされており、味付けは和風で日本人にも食べやすそうなメニュー

「食は薬」と語るモニカ・キンスマン氏がオーナーを務め、様々なグレインボウルをラインナップ。なかでも、もっとも注文の多い「アウェイクン・ボウル」(ミニ:8.99ドル=約1,016円/レギュラー:10.99ドル=約1,242円)は、キュウリやアボカド、ズッキーニ、ニンジン、マッシュルーム、ケールなど有機栽培の野菜のみを使い、ショウガやニンニク、ごま油、たまり醤油で作った自家製ソースで仕上げるメニュー。焼きのりや黒ごまの食感が生野菜の味を引き立て、ぷちぷちのキヌアと、もちもちの赤米をミックスすることで、2つの食感が楽しめるのも特徴だ。

また、味噌風味の野菜シチューをキヌアと赤米、生のホウレンソウの上にかけた「ポパイズ・ラスト・スタンド」(価格は「アウェイクン・ボウル」同様)は、味噌のまろやかさのなかにも、パクチーとニンニクをきかせタイ風にアレンジ。さらにユニークなのが、ズッキーニ、マッシュルームが入ったココナッツカレーソースを上にかけた「フラリシュ」(ミニ:10.99ドル=約1,242円/レギュラー:12.99ドル=約1,468円)。スープカレー風で、グレインボウルになじみがない人でもさらさらと食べやすい。

ほか、穀物の代わりにケルプヌードル(海藻麺)を、ケールやアボカド、パプリカ、キャベツ、ネギ、スプラウト(もやしなどの穀類の新芽作物)といった生野菜とともに食べるサラダ風の「ジョイフル・ボウル」(ミニ:9.99ドル=約1,129円/レギュラー:12.99ドル=約1,468円)も人気。味噌とショウガをベースに、ネギやごま油、リンゴ酢などが入った自家製ドレッシングによってエスニック系の味に仕上がっている。

来店客は約65%が女性。ヘルシーな野菜やスーパーフードをアジアンテイストのグレインボウルでオシャレに食べられるのが話題となっている。

「ポパイズ・ラスト・スタンド」は、ズッキーニ、ニンジン、マッシュルーム、トマトを入れた味噌風味のシチューをかけたぶっかけ飯
ピリ辛のココナッツカレーソースが絶品の「フラリシュ」。隠し味としてたまり醤油を使い、風味が豊かに。穀物や野菜、ナッツなど、ヘルシーな食材を具だくさんのスープのような感覚で食べられる
HeartBeet Organic Superfoods Cafe
1026 NE 65th Street, Seattle, WA 98115
http://www.heartbeethealthy.com

エスニック風・無国籍風な味付けでさらに進化!

同じくシアトルにある「チャコ・キャニオン・オーガニック・カフェ」は、2003年9月の創業。レトロな街並みに溶け込むグリーンウッド店がオープンしたのは、2015年2月だ。10年以上前からグレインボウルを提供しており、スタンダードなものはもちろん、エスニックな味付けの新メニューも発表している。

ごまとニンニクのソースで味わう「ヒッピー・ボウル」。薄い皿を使って焼豆腐を周りに並べた幾何学模様のような盛り付けも評判

そのなかでも、「ヒッピー・ボウル」(9.25ドル=約1,045円)は、グリーンウッド店限定。ふっくらと炊いたキヌア、焼豆腐、生のニンジンとスプラウト、その上に自家製のガーリックタヒニソースをかける。このソースは、地中海沿岸の中東の国々でよく使われているゴマのペースト「タヒニ」とニンニクを混ぜたもの。アジア生まれの豆腐と、地中海生まれのタヒニが絶妙にマッチし、店でダントツの人気を誇るメニュ-になっている。

また、「タイ・ピーナッツ・ボウル」(8.95ドル=約1,011円)は、その名のとおりタイ風の味付け。濃厚なピーナッツソースが、しっとりとしたキャベツや玄米によく絡み、相性抜群だ。キヌア入り「スモーキー・ヤム・アンド・ケール・ボウル」(9.95ドル=約1,124円)は、タヒニソースとヤムイモを組み合わせたメニュー。レモン風味のタヒニソースがローストしたホクホクのヤムイモの甘さを際立たせ、ケールの苦みすらまろやかに包み込む。

ほかにも、ダールと呼ばれるインド風緑レンズ豆の煮込みとパクチーを、生野菜やキヌアの上にかけた「コミュニティー・ダール・ボウル」(2~9ドル=約226~1,017円)、玄米の上に、卵の代わりに豆腐や粉末の寒天で作ったフリッタータ(イタリア風オムレツ)とヒヨコマメ、アボカドをたっぷり盛り付け、スパイスがきいたソースをかけて食べる「フリッタータ・ボウル」(9.95ドル=約1,124円)なども好評。豆腐を入れることでもちっとした食感になっている。

常に新しいメニューを提供し続ける同店には、地元の若者などを中心にヘルシー志向の人々が集う。アジア風やエスニック風などのメニューも登場、どんどん進化するグレインボウル。これからも新たなメニューが続々と誕生していきそうだ。

タイ風のピーナッツソースとカレーペーストでエスニックな味わいの「タイ・ピーナッツ・ボウル」。盛り付け担当のレイチェル・ルーシー氏によるSNS映えするオシャレな一品
豆腐とターメリックで作ったフリッタータと、アボカド、トマトやパプリカを使ったソースが色鮮やかな「フリッタータ・ボウル」
Chaco Canyon Organic Cafe (Greenwood)
8404 Greenwood Avenue North, Seattle, WA 98103
http://www.chacocanyoncafe.com

取材・文/ハントシンガー典子(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ドル=約113円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。