米国発 シアトルで日本風パンが人気 前編 - 海外トレンドリポート -

2017/07/13

海外トレンドリポートvol.141 アメリカ

アメリカ発
シアトルで“日本風”のパン&スイーツが人気 前編

 パンやケーキというと、日本人にとっては「欧米のもの」というイメージが強いはず。だが、アメリカのパン店には、例えば食パンやバゲット、ドーナツなど、ベーシックでシンプルなパンやお菓子しか置いていないことが多い。そんななか、日本のパン店で販売しているような「調理パン」「菓子パン」「スイーツ」などが、アメリカ・シアトルで人気を呼んでいる。アメリカに、日本ならではのアレンジパンが逆輸入され、受け入れられたのはなぜなのか?

 前編では、カレーパンやカツサンドなど、日本風の惣菜パンがヒットしている店を紹介する。

人気の調理パンの一つ「カレーパン」。イースト入りの生地を油で揚げていることから、ドーナツのようなパンとしてアメリカ人でも手が出しやすいようだ
人気の調理パンの一つ「カレーパン」。イースト入りの生地を油で揚げていることから、ドーナツのようなパンとしてアメリカ人でも手が出しやすいようだ
「ソーセージパン」も好評。日本の細いソーセージでは食べ応えがないと思われるため、肉汁たっぷりの太めのものを使用している
「ソーセージパン」も好評。日本の細いソーセージでは食べ応えがないと思われるため、肉汁たっぷりの太めのものを使用している
バゲットにはさむサンドイッチが主流のアメリカでは、食パンにはさむタイプは少数派なので、日本のサンドイッチの種類の豊富さに驚く人も多い。左からプルコギ、焼きそば、宇治金時。日本人にとって新鮮な具材も多い
バゲットにはさむサンドイッチが主流のアメリカでは、食パンにはさむタイプは少数派なので、日本のサンドイッチの種類の豊富さに驚く人も多い。左からプルコギ、焼きそば、宇治金時。日本人にとって新鮮な具材も多い

「カレーパン」「メロンパン」など、日本生まれのパンが人気

 シアトルのオフィス街と住宅街をつなぐエリオット・アベニュー。早朝から通勤の車が行き交うこの幹線道路沿いに、「Fuji Bakery(フジ・ベーカリー)」の工房と直売店がある。2009年6月に1号店を開き、現在3店舗を展開。シアトルで日本風のパンを販売している代表的な店だ。

 一番人気は「カレーパン(Curry Bun)」(3ドル=約342円)。雑誌などで何度も取り上げられ、このパンを目当てに遠方から足を運ぶ人も少なくない。牛ひき肉が贅沢に入った自家製カレーをパン生地に包み、自家製のパン粉をまぶして揚げており、サクッと軽く、脂っぽさは感じない。日本人なら懐かしさを覚え、アメリカ人ならエキゾチックに感じるカレーの香りが食欲を刺激する。「揚げる」という調理法はドーナツと同じだが、味はピリ辛のカレーパンはアメリカ人にとって新鮮で、若者から年配の人まで幅広い世代がランチや夜食用などに購入していく。

 また、「メロンパン(Melon Pan)」(2ドル=約228円)は、女性を中心に人気の商品。生地にはレモンの皮と果汁が練りこんであり、やさしい甘さの奥に柑橘系の爽やかさを感じる。初めて商品名を見た人の多くが、「中にメロンが入っているの?」と尋ねてくるので、「見た目がメロンに似ているから」など、日本での一般的な由来を紹介すると、興味を持って購入していくという。

 ただ、カレーパンもメロンパンも初めから大人気だったわけではない。一般的にアメリカ人は「食」に保守的と言われ、見たこともないパンにはなかなか手を伸ばしてくれない。そのため、アメリカ人が好きなドーナツの品ぞろえを充実させたり、ソーセージパンにベーコンをプラスしたりと、アメリカ人にもなじみのある商品を意識。徐々に、店のファンを増やしていき、「フジ・ベーカリーが作るパンならおいしいだろう」という信頼を得ることで、日本人シェフがこだわって作った日本ならではのパンも買ってくれるようになったという。

 客層は老若男女問わないが、マイカー通勤者が行き交う通りに店を構えているため、特に仕事前に寄ってランチ用のパンを買う人が多い。ひと昔前までは考えられなかった、アメリカ人がランチにカレーパンを頬張るという風景が、シアトルではすっかりおなじみなものになっている。

一番人気の「カレーパン」。パン粉をまぶして揚げた生地は、外はサクサクで中はもちもち、カレーはまったりと濃厚。「パン生地を揚げる=ドーナツ」という感覚のアメリカ人にとってはすべてが新鮮
一番人気の「カレーパン」。パン粉をまぶして揚げた生地は、外はサクサクで中はもちもち、カレーはまったりと濃厚。「パン生地を揚げる=ドーナツ」という感覚のアメリカ人にとってはすべてが新鮮
「メロンパン」(下)と牛乳を練りこんだ「ミルクスティック」(2ドル=約228円)。日本人にとってはおなじみのパンだが、砂糖などをたっぷりまぶしたドーナツが人気のアメリカでは、ほのかな甘さを感じるこれらのパンは新鮮そのもの
「メロンパン」(下)と牛乳を練りこんだ「ミルクスティック」(2ドル=約228円)。日本人にとってはおなじみのパンだが、砂糖などをたっぷりまぶしたドーナツが人気のアメリカでは、ほのかな甘さを感じるこれらのパンは新鮮そのもの
シェフの荻巣孝信氏。日本で13年間、パン店に勤めた後に渡米し、同店で働き始めて3年目。大切にしているのは、「また食べたい」と思われる味だという
シェフの荻巣孝信氏。日本で13年間、パン店に勤めた後に渡米し、同店で働き始めて3年目。大切にしているのは、「また食べたい」と思われる味だという
Fuji Bakery(フジ・ベーカリー)
SHOP DATA
Fuji Bakery(フジ・ベーカリー)
1030 Elliott Avenue West, Seattle, WA 98119
http://fujibakeryinc.com/index.html

海老カツもきんぴらごぼうも、食パンにはさんで大人気!

 一方、サンドイッチもアメリカで主流のバゲットを使ったものではなく食パンでサンドした“日本風”が人気を呼んでいる。シアトルの東に位置するベルビューは、多数のIT企業がオフィスを構え、世界中から人が集まる国際的な都市。ここに2014年11月オープンしたのが、アメリカでは非常に珍しい日本風サンドイッチの専門店「トレス(TRES)」。50種類以上ものサンドイッチを、食パンから具材までほぼすべて一から手作りしている。

 一番人気は「とんかつ(Pork Cutlet)」(4ドル80セント=約547円)、つまりカツサンドだ。やわらかい食パンと、シャキシャキの千切りキャベツ、ジューシーな豚肉を使ったとんかつ。これらに、日本製のウスターソースなどを4時間煮込んだ特製とんかつソースがじんわりとなじんでおり、子どもから年配の人まで、幅広い層に人気がある。

 カツ系では、ほかに海老のすり身を揚げて自家製マヨネーズを利かせた「海老カツ(Shrimp Cutlet)」(4ドル50セント=約513円)、まるで天むすのようにエビフライをはさみオーロラソース、とんかつソース、タルタルソースの3種をからめた「名古屋風エビフライ(Fried Shrimp)」(4ドル80セント=約547円)も人気。そのほか、自家製テリヤキソースとマヨネーズの組み合わせが絶妙な「テリヤキチキン(Teriyaki Chicken)」(3ドル80セント=約433円)、ハンバーグの煮汁入りドミグラスソースをからめた「煮込みハンバーグ(Sauteed Beef Patty)」、「豚しょうが焼(Pork Ginger)」(いずれも4ドル50セント=約513円)など、日本ではハンバーガーで使われることの多い具材を挟んだ “進化系”も生まれている。

 さらに、野菜を使ったサンドイッチでは、日本であまり見かけないものも多い。例えば「きんぴらごぼうサラダ(Sauteed Burdock Salad)」(3ドル80セント=約433円)。濃いめの甘辛味がシンプルな食パンに意外とよく合い、きんぴらがポロポロと落ちないよう、レタスで挟む工夫もされている。そのほか、小豆や抹茶クリームといった和風スイーツ系のサンドイッチも多数あり、メニュー表はすべて日本語でも書かれている。

 オープン当初は、客のほとんどがアメリカ在住の日本人だったが、今では7割近くが地元のアメリカ人。見慣れぬメニューに躊躇する人も多いが、徐々に、ここでしか買えないサンドイッチに魅了され、リピーターになっている。カツサンドのような日本でおなじみのメニューだけでなく、きんぴらごぼうやしょうが焼きなど、日本ではあまり使われない具材を組み合わせたサンドイッチも次々と開発されている。これらが日本に逆輸入される日も近いかもしれない。

取材・文/大井美紗子(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ドル=約114円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。
一番人気の「とんかつ」。やわらかく、ジューシーなとんかつと、キャベツ、食パンが絶妙にマッチし、多くのファンを生んでいる
一番人気の「とんかつ」。やわらかく、ジューシーなとんかつと、キャベツ、食パンが絶妙にマッチし、多くのファンを生んでいる
アボカドやカニカマを使った、カリフォルニアロールのサンドイッチ版「カリフォルニア」(右、3ドル80セント=約433円)と「きんぴらごぼうサラダ」。肉を一切使用していない商品が多いため、ベジタリアンやヘルシー志向の人々にも人気が高い
アボカドやカニカマを使った、カリフォルニアロールのサンドイッチ版「カリフォルニア」(右、3ドル80セント=約433円)と「きんぴらごぼうサラダ」。肉を一切使用していない商品が多いため、ベジタリアンやヘルシー志向の人々にも人気が高い
共同オーナーの松村美奈子氏(右)と小笠原実(まこと)氏。「自分たちがおいしいと思うものしか置かない」が、2人のポリシー。それぞれのサンドイッチの具材がわかるように、壁に全商品の写真を価格や商品名とともに貼っている
共同オーナーの松村美奈子氏(右)と小笠原実(まこと)氏。「自分たちがおいしいと思うものしか置かない」が、2人のポリシー。それぞれのサンドイッチの具材がわかるように、壁に全商品の写真を価格や商品名とともに貼っている
トレス(TRES)
SHOP DATA
トレス(TRES)
1502 145th Place South East, Bellevue, WA 98007
http://tressandwich.com/
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