アメリカ発 進化するアレンジドーナツ 前編

世界中で愛されるドーナツ。日本でも、クロナッツなどが話題に。そんななか、ロサンゼルスでは新しいアレンジを加えたドーナツが人気。前編では、「カラフルでオシャレなドーナツ」を紹介。海外トレンドリポート。

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Vol.149

世界中で愛され続けるドーナツ。日本ではここ数年、「クロナッツ」がヒットしたドミニク・アンセル・ベーカリーなど、アメリカの人気店が進出したり、コンビニドーナツが販売されるなどして注目を集めている。生地やコーティングを変えることで様々なバリエーションを生み出してきたが、いずれも100~200円で気軽に食べられる手軽なおやつであり 、庶民の味だ。

そんななか、ポップカルチャーを次々と生み出すアメリカ・ロサンゼルスでは、厳選した素材を鮮やかにあしらった新しいドーナツが人気を呼んでおり、なかには1個4ドル(約440円)以上するものも。前編では、そのなかから「カラフルでオシャレなドーナツ」を紹介する。

チョコやクリームだけでなく、生のフルーツやクッキー、シリアルなども大胆にトッピング。味はもちろん、見た目のかわいらしさや鮮やかさも人気を呼ぶポイント
ドーナツは、様々な素材と組み合わせやすいため、店ごとに個性があり、種類も豊富。このなかから、ドーナツのスタンダードとして定着するものが生まれるかもしれない
クリームやトッピングをそれぞれ数十種類のなかから選べる「オーダーメイド」が可能な店も。ドーナツのバリエーションは今後もますます増えそうだ

時代の変化に対応する老舗が生んだカラフルドーナツ

ロサンゼルスのハリウッドに隣接するコリアンタウン。その商店街の一角にあるのが「カリフォルニア・ドーナツ(California Donuts)」だ。1982年から続くドーナツの人気店で、オープン当初は昔ながらのドーナツを並べていたが、2013年頃からそれまでにないトッピングを用いて、見た目もユニークなものを提供し始めた。

一番人気の「パンダドーナツ」。食べる前に撮影するのは、今や世界中で見慣れた光景だ

一番人気は「パンダドーナツ」(2ドル=約220円)。穴の開いていないイーストドーナツ(イースト発酵で膨らませたパン生地のようなドーナツ)に白いアイシングを塗り、オレオクッキーで耳や目、鼻を形づくる。顔部分に使っているトッピングが充分甘いため、ドーナツの中にはクリームを入れずにシンプルに仕上げる。ふわふわの口あたりのイーストドーナツと、カリカリのオレオクッキーの組み合わせが絶妙だ。

そのほか、イーストドーナツに白いアイシングを塗り、その上に色とりどりのシリアルをまぶした「ラッキーチャームズ」(2ドル=約220円)も人気が高い。オレオクッキーよりも軽いサクサク感が、これまたふわふわのイーストドーナツとよくマッチしている。

輪の形をしたドーナツで、見た目のインパクトが強いのは「ブルーベリークランチ」(2.5ドル=約275円)。その名の通りブルーベリーを用いた紫色のアイシングが鮮やかで、穴の部分にシナモントーストクランチと呼ばれるアメリカ定番のシリアルを入れ込むという発想がユニークだ。こちらはオレオクッキーよりも堅く、ザクザクの食感が楽しめる。

ドーナツの人気店がこうしたニュータイプのドーナツを販売し始めたのは、時代の変化に対応するため。数年前から、巷ではSNS映えする、見た目の派手な食べものが次々と登場。それらをヒントにカラフルでかわいい商品を開発したという。ドーナツの味はもともと評判だったが、見た目が鮮やかになることで、全米に店名が知れ渡ることになった。

主な客層は、場所柄もありメキシコ人やアジア人が多く、かわいいパンダドーナツを求めてわざわざ遠くから来店する若い女性もおり、老若男女問わず人気。現在販売している商品ラインナップのうち、昔ながらのドーナツが約6割で、見た目を鮮やかにアレンジしたものは4割という。老舗の味を残しつつ、時代に合わせて新しいメニューを開発したことが成功の鍵といえるかもしれない。

アメリカでドーナツは朝食に食べられることも多い。シリアルのトッピングが鮮やかな「ラッキーチャームズ」は朝食の定番の一つ
「ブルーベリークランチ」(右)や「ストロベリーナッツ」(左)など、シーズンによって旬のフルーツを使った期間限定商品も販売。次はどんな商品が出るのか期待させることでリピーターを呼び寄せている
カリフォルニア・ドーナツ(California Donuts)
3540 West 3rd Street, Los Angeles, CA 90020
http://www.cadonuts.com/

従来とは違う食材を加え、ドーナツを高級スイーツに

ロサンゼルスのダウンタウンから北に車で30分ほどの場所にあるハイランドパークは、芸術家が多く住み、レトロさと新しさが入り混じった閑静な高級住宅街。「ドーナツ・フレンド(Donut Friend)」は、この街の中心部に2013年9月オープンした。

レモン風味のグレーズを塗り、ラズベリーとブルーベリー、ボイセンベリーをトッピングした「ポーラーベリークラブ」。見た目もまるでケーキのような美しさ

一番人気はプレーンのイーストドーナツに豆乳を使ったホイップクリームと生のストロベリーを挟んだ「ストロベリーラボ」(4ドル=約440円)。カリフォルニア産の甘酸っぱい生のいちごがドーナツの甘さと見事に調和している。

また、プレーンドーナツにレモン風味のグレーズを塗り、輪の中心にラズベリーとブルーベリー、ボイセンベリーをトッピングした「ポーラーベリークラブ」(4ドル=約440円)も人気商品。こちらも生のベリーのさわやかな甘酸っぱさが特徴。「ストロベリーラボ」も「ポーラーベリークラブ」も、「競合商品はケーキ」とも言える少し高級感のある味わいで、価格も一般的なドーナツの倍以上する。

このほかにも、クリームチーズやバルサミコ酢、バジルなどのハーブや、アメリカで人気の唐辛子ベースのソース「スリラッチャソース」など、今までのドーナツでは考えられない食材をトッピングしたものをラインナップ。ただ甘いだけではなく、酸味や辛味も楽しめるスイーツに仕上がっている。

この店のもう一つの売りは「DIYドーナツ」。中に入れるクリームやトッピングなどを、客が好みに合わせて変え、自分だけのオリジナルドーナツを作ることができる。ドーナツの種類はプレーン、チョコレート、バニラケーキとグルテンフリーの4種類。中に挟むクリームは、ピーナツバターやチョコレート、チーズクリームといったオーソドックスなものからラズベリーにハバネロを加えたジャムやピスタチオクリーム、パンプキンバターなど50種類近くから選べる。仕上げのトッピングはアーモンド、クルミなどのナッツ系のほか、ナツメグやカイエンペッパーなどのスパイス系、メープルシロップやオリーブオイルなどのソース系、砕いたオレオクッキーにチョコレートチップやライムの皮を砂糖漬けしたものなど40種類。なかでも人気の組み合わせは、バニラケーキドーナツにレモンクリームを挟んで、上からココナッツフレークをのせたものや、プレーンドーナツにトーフッティ(豆腐ベースの)クリームチーズとストロベリージャムを挟んだドーナツ。無数の組み合わせが可能で、毎回違うドーナツを楽しめると好評だ。

客層は富裕層が中心。今までのドーナツはただ甘く、“手軽なおやつ”というイメージだったが、従来とは違う食材を加えることで単価も高い“特別なスイーツ”に昇華。これからも様々な食材を用いたドーナツが次々に生まれそうだ。

プレーンのイーストドーナツに生のイチゴとホイップクリームを挟んだ一番人気「ストロベリーラボ」。生地には牛乳の代わりにココナツクリームを使いしっとりと仕上げている
バラの花から抽出したローズウォーターを使ったグレーズをかけた「ホットローズウォーターミュージック」(4ドル=約440円)など、見た目や味だけでなく、香りで楽しめる商品も
ドーナツ・フレンド(Donut Friend)
5107 York Boulvard, Los Angeles, CA 90042
http://donutfriend.com/

取材・文/押見由香(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ドル=約110円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。