2017/10/27 繁盛の黄金律

しっかり儲けるキッチンづくりを目指そう(後編)

まずは、メニューの「断捨離」を断行しよう -前編ではキッチンの話をしました。店の心臓部であり、全経費の70%が使われていること。その性能が、店の力を決めてしまうこと。今回は、その続きです

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Vol.74

まずは、メニューの「断捨離」を断行しよう

前編では、キッチンの話をしました。キッチンこそは、飲食店の心臓部であること。そして、店舗運営のための全経費の70%がキッチンで使われていること。キッチンの性能こそが、お店の力を決めてしまうこと、について論じてきました。

今回は、その続きです。「儲からない店」の大きな問題のひとつが、現行のメニューとキッチン全体の機能がずれてしまっている点です。ハードの問題もありますが、それよりも、現行メニューの総チェックをしなければなりません。今のままでいいのか、と。前編でも言ったように、放っておくとメニューはどんどん増えていきます。特に、お客の要望にいちいち応えていると、専門店があっという間に主力商品を持たないフルメニューレストランになってしまいます。ですから、まず行わなければならないのは、「メニューの断捨離」です。不要なメニューを捨て、思い切って絞り込むことです。

まず「断捨離」の大原則について、記しておきましょう。「悪いメニュー」とは、そのメニューがあるために、キッチンが混乱してしまうものです。調理作業に手間取って、他のメニューの提供が遅れたり、均質化を損ねてしまったりするメニューです。このとき、あるメニューに対して個別に捨てるか残すかを吟味するのではなく、ジャンル別に見ていくべきです。

例えば、ハンバーグ専門店で数種のスパゲティも提供していたとします。このときに、スパゲティで何を捨てて何を残すのかを考えるのではなく、スパゲティが果たしてこの店に必要なのかどうか、を考えるべきです。そして、必要ないと判断したら、勇気を持って、スパゲティ全部を「断捨離」してしまうことです。売れ筋1品だけでも残したら、その1品が邪魔者メニューとなって、キッチンの流れを停頓させてしまいます。捨てるならば、スパゲティ全部を思い切って捨てるべきです。

実は、ハンバーグよりも利益率がよくて、よく売れているのですよ」というのであれば、ハンバーグ店の看板を降ろして、スパゲティ専門店の道を進むべきですね。

営業前のキッチンを集中加工場にする

キーワードは「専門店化」です。ですから、専門店であることを強化するメニュージャンルは残さなければいけません。ハンバーグが主力であれば、サラダは必須ですね。店の性格にもよりますが、スープが必須ということもあるでしょう。主力メニューを補強し、その価値を高めるものをサイドメニューといいますが、このジャンルはいくら調理が面倒であっても、強化していかなければなりません。

キッチンが小さいために、これらのサイドメニューを外注化する店があります。あるラーメン店で、外注品の餃子を使っているところがありましたが、これはいけません。ラーメン店にとって餃子は、「サイドメニューの主力」ともいうべきメニューです。餃子に商品力があって、注文率が高まれば、自然に客単価が上がって、粗利益率が高まるのですから、これは自店で開発しなければなりません。そして、お店の看板にしなければなりません。

「そうなると、他所に集中加工場(セントラルキッチン)を作らにゃならんな」と、店主は考えがちですが、それは繁盛して店数が増えたときの課題として、取っておいてください。まずは、営業前の店のキッチンを集中加工場にする発想を持ってください。例えば、17時に営業開始だとします。そうであれば、17時前のキッチンは、集中加工場の役割を果たせます。営業前にできる調理(下準備)は何か。それを徹底的に洗い出して、それを手際よくやっておけば、まさにお店が集中加工場になるのです。前編でも言いましたが、下準備をどれだけやっておくかで、営業中のキッチンの性能は飛躍的に高まります。下準備だけを済まして、営業開始時には「お先に」と帰る従業員がいても、おかしくはないではありませんか。

下準備をするときの基準は、品質を落とさないことです。一品一品のスタンダードが明確にあって、そのスタンダードが守りきれるのであれば、下準備はとことん進めるべきです。逆の言い方をすれば、スタンダードを壊すような下準備は一切やってはいけない、ということです。

外食業の基本は、その場で注文を受けてから作ることです。ここに外食業の精髄が閉じ込められています。これこそ外食業の強さであり、また面倒くさいところでもあります。料理一品を、注文を受けてから作って、すぐに提供する。これに勝る強さはありません。

「あらかじめ下準備をする」点には、本質的な強さを弱める要素があることを肝に銘じておかなければなりません。それでも、この一点を追求していかないと利益の出る商売はできません。しかし、効率を追いすぎると利益は逃げていきます。これも、肝に銘じておかなければなりません。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。