店、曜日、時間によって、求められるサービスは変わる - 繁盛の黄金律 -

2017/11/30

神山 泉の繁盛の黄金律

Vol.75
今回の黄金律
店、曜日、時間によって、求められるサービスは変わる

ある店で「よいサービス」が、別の店では「やってはいけないサービス」になる

 「よいサービス」「悪いサービス」と大雑把な言い方をしますが、サービスの質は店ごとに違います。また、同じ店でも時間ごとに違います。

 昔、あるファミリーレストランの社内報に、こんな記事が載っていました。冷雨降る夕方に来店した、年老いたおばあさん。よく来店する常連です。足元は雨で濡れています。おばあさんを席に案内した顔見知りの女性パートはキッチンに取って返して、金だらいにお湯を張って、それを客席にもっていき、おばあさんの履き物を脱がせて、冷たくなった足を温めてあげました。私はてっきり、これは過剰サービスだから、ここまでやるのはやめましょう、という話だと思ったら、そうじゃなくて絶賛なんですね。「ここまでお客様を想う気持ちがあるパートのAさん。この人は、我がチェーンの宝です」といった内容でした。

 私は「いくらなんでもやり過ぎなんじゃないの」という思いをぬぐえなかったのですが、いろいろな外食経営者に意見を聞くと、「えらい、よくやった」「やれる人ならば、やったほうがいいんじゃないの」という肯定派が意外に多いのですね。もちろん、私と同様に「やり過ぎだよ」という経営者も少なくなかったのですが。

 チェーンのサービスは基本的に「素っ気ないもの」であるべきだと私は思っています。食事中に腹痛を起こしたお客が出た、といった緊急事態なら話は別ですが、いつでもどこでも同じ質のサービスを受けられるというのが、チェーンの使命だと考えるからです。

 また、こういう話もあります。別のやはりファミリーレストランの話ですが、気付きが抜群でサービス能力の高い女性パートがいました。お客とさり気なく会話ができ、評判もすこぶるいい人です。ところが、この人が、ファストフードのハンバーガー店へ職場替えしたところ、そこではさっぱり評判がよくないのです。スピード感がない、キビキビしていない、ていねいすぎる、と店長から度々叱られることもありました。

 ファストフードは時間が勝負です。正確に注文を聞いて、クイックに提供することを、最優先しなければなりません。この女性パートは、優先順位を理解せずに、ファミリーレストランのサービスをそのまま持ち込み、実践していたために、お客から「早くしてよ」というクレームを受けてしまうことになったのです。

昼と夜では、調理もサービスもメンバーチェンジをしたほうがよい

 店や業態によって、求められるサービスの質は違うということですね。ファストフードはクイックさが第一です。それがない状態で、親切、ていねい、心のこもったサービスをやっても、お客の怒りが爆発するだけです。また、同じ店でもランチとディナーでは、当然求められるサービスは違ってきます。

 

 ランチは、やはりクイック提供が最優先です。ディナーだけをやっていたフレンチレストランが、ランチにも手を出して失敗するケースがよくあります。そもそもランチとディナーでは滞在時間が違いますから、ディナーと同じような速度で料理を提供していたら、ランチのお客は席を立ってしまいます。ファストフードほどではないにしても、スピードアップが求められます。そうなると、サービスの中身も当然変わります。ディナーのゆっくり流れる時間の中にあって、典雅でゆとりあるサービスが行われていても、それをそのままランチに持ち込んだら、間抜けなサービスになってしまうのです。居酒屋もランチを導入する店が増えていますが、求められるものが違うことを理解しなければなりません。

 ランチはやはり、安さとクイックさです。メニューを絞り込み、例えば700円均一のような価格を打ち出し、調理時間がかからずクイックに提供できるようなものにしなければなりません。極端に言うと、お客との会話なんて必要ないのです。お客は同一人物であっても、朝はケチケチ、昼はセカセカ、夜はちょっと気が大きくなる、というように、時間帯別に異なる顔を持っているのです。この同一人物が、土・日にファミリーの長という立場になると、今日は少しぜいたくなディナーにしようか、という太っ腹な人に変身したりします。1人の人間が多様な顔を持っているのですから、客層を絞るな、動機を絞れ、というのも、そういうことなのです。

 あなたの店も、曜日、時間帯によって、求められるサービスはコロコロ変わります。自店に求められるサービスには、まず基本要素があります。その基本をベースにしながら、何を優先しなければならないのか、その順位をつけなければなりません。ですから本当は、ランチとディナーとでは、サービスも調理も、全員メンバーチェンジをしたほうがいいのです。昼と夜ではお客の求めるものが全然違うのですから、「別の店」ととらえたほうが、スッキリするではありませんか。

 まずは、経営者自身の頭の切り替えをしなければなりません。「ディナーのサービスこそがうちの本領だ」と思っている経営者が、ランチの少々荒っぽい、クイックなサービスに接して、「こんなの、うちのサービスじゃない」と怒りを爆発させる。ありそうな光景ですね。これは経営者の頭の切り替えができていない典型例です。これができないならば、経営者も昼と夜で変えたほうがよいかもしれません。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
株式会社エフビー 代表取締役
神山 泉
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。
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