飲食店を訪れた人が、まず目にするのがメニューブック。「どんな店なのか?」「看板メニューは何なのか?」。注文を増やすには、コンセプトや売りを伝えることが大切だ。そこで、売上アップにつながるメニューブックを大研究。飲食店コンサルタントの河野祐治氏にノウハウを伺いつつ、思わずオーダーしたくなるポイントを、実例から検証する。
SPECIAL INTERVIEW分析に基づいたメニューブックは、売上アップにつながるメディア!
大切なのは、初来店でも困らないわかりやすさ
飲食店の販促ツールの1つとして、近年、ますますその重要性が高くなっているメニューブック。従来のように店内に置くだけでなく、最近ではホームページからダウンロードできる店もあるなど、新たな形も登場している。
そんななか、「メニューブック次第で売上は伸びる」と明言するのは、飲食店コンサルタントで中小企業診断士の河野祐治氏。年間300件を超えるメニューブックのリニューアルサポートを踏まえ、大切なことは、「初めて来店する人でも困らない表現と構成にすること」とアドバイスする。
「この店ではどのような料理がいくらで提供され、そこにどんな価値があるのかを、整理してわかりやすく伝えることがメニューブックの大きな役割」と河野氏。このわかりやすさは、客の心理を考えてのことだ。「一般的なお客様は、店が思っている以上に外食慣れしていませんから、メニューを選ぶ際、少しでもわからないことがあると、それを恥ずかしく思い、ストレスを感じます。そうなると食べてもらいたいメニューも注文されません。そうならないためにも、メニューブックにはわかりやすさが不可欠なのです」と、その理由を説明する。
つまり、来店客にとってわかりやすく、注文しやすいものが優れたメニューブック。例えば、日本酒やワインにこだわる店なら、銘柄ごとの風味や特徴などの情報は、できる限りメニューブックに記載する。こうすることで、どれを飲んだらいいか選びやすくなるだけでなく、店側にはオペレーションが軽減するというメリットもある。「お客様が注文しやすいメニューブックがあれば、スタッフはメニューに関する説明のために、長い時間を取られることもなくなります。メニューブックは販促の道具。『道具で済むことは道具で済ませ、人にしかできないことは人がする』という考え方は、人材不足が叫ばれる現在の外食業界にとっても、大事なことだと思います」(河野氏)。
次ページからは、わかりやすく、注文が増えるメニューブックの具体的なポイントを見ていこう。
店のコンセプトを伝えるメディアとして位置付け
メニューブックを作る際、まず念頭に置くべきことは、店のコンセプトを明確にすること。他店との違いや、何が売りなのかなど、店の価値をしっかりアピールする必要がある。
「繁盛店に共通しているのは、コンセプトがメニューブックからしっかり伝わってくること。ポテトサラダを1皿1000円で売っている店なら、価格だけでなく、その価格を納得させるストーリーが載っているはずです」と河野氏。店のコンセプトを明確にするにあたってのポイントは、①誰の ②どんな利用動機に対して ③何を ④どのように提供するか、の4つ。
①は、ターゲットの年齢、性別、職業のほか、住んでいるエリアなど。②は、どんな目的で店に来るのか。③は、どんな料理を出すか。④は、提供方法。この4つの要素を洗い出し、例えば「近隣で働く20~30代の女性が中心の、グループでワイワイと肉料理やワインを楽しむ店」など、4つの要素の組み合わせを一言で伝えられるようにすることが、コンセプトの明確化なのだ。
また河野氏は、「コンセプトは店の場所も考慮するべき」と指摘する。最近は食材やメニューなど、1つのものに特化した専門店も増えているが、こういった業態が成り立つのは、いわゆる「都会」。遠くからでも人が集まる「都会」なら、とがった店でも集客が可能だ。加えて、競合店がひしめく中で勝ち抜くための、はっきりしたカラーが重要になる。一方、都会に比べて人口の少ない「地方」では、より幅広い客層と利用動機を獲得することが大事になる。
こうしてコンセプトをしっかり定めたら、そこからブレないように進めていくのが、失敗しないメニューブック作りの基本。コンセプトが伝わり、メニューブックを見れば、その店のすべてがわかるのが理想だと河野氏は語る。「メニューブックは、いわば店一番の営業マンであり、影響力のあるメディア。ただ注文を受けるためだけのツールではなく、何でも答えられる優秀な接客担当として作り上げてください。そうすれば、自然と満足度が高まり、注文数も伸びるはずです」。
メニューブック次第で注文数を伸ばしたり、逆に抑えることもできるのは、作り方ひとつでオーダーコントロールが可能だからだ。「繁盛店のメニューブックは、最初に食べてほしい料理、いちばんの看板料理、シメの一品などが、理想の流れで選ばれるように作られています。メニューブックをガイド役に、店が思い描くストーリーでオーダーをコントロールできれば、店の価値を最適なかたちでお客様に体験してもらえます。その結果、その価値に共感する人が増え、高い確率でリピーターへとつなげることができるのです」と、河野氏は話す。
さらに、「優れたメニューブックは、スタイルやデザイン、掲載するメニュー数、使用する文字の種類や大きさ、写真掲載の有無など、すべて論理的に作られています」と、河野氏は断言する。避けなければいけないのは、経営者の感覚で作ること。なぜなら、店がうまく回っている時はいいが、売上が伸び悩んだ時に対処法が見つからない、という事態に陥るからだ。メニューブックの内容は、先述したコンセプトに沿って、何を、どこに、どう載せるのか、明確な理由があることが重要だという。
では、具体的にどう作っていけばいいのか。まず大切なのは、カテゴリー分け。このカテゴリー分けには、3つの種類がある。「1つは、店が売りたい『売りのカテゴリー』。2つ目は、ニーズを汲み取った『お客様視点のカテゴリー』。3つ目が、食べるタイミングや調理法で分けた『一般的なカテゴリー』です」(河野氏)。最初に「一般的なカテゴリー」で商品を分類し、その中から「売りのカテゴリー」「お客様視点のカテゴリー」を抜き出す、という順番がいいだろう。
カテゴリー分けができたら、その中のメニューに強弱をつける。「繁盛店には必ず名物がありますが、各カテゴリーの中でも主役である名物メニューと、脇役であるその他のメニューにメリハリをつけましょう」と河野氏。例えば写真であれば、主役は脇役より30%ほど大きくするのが目安だ。また、写真の大小だけでなく、名物メニューのページ数を増やしたり、デザインや色を変えることで、何が売りかをよりはっきりと伝えることができる。
文字のフォントや大きさについては、年配の方が多い店ならば、落ち着いた印象の明朝体を大きめに使うことなども考慮したい。また、あえて写真ではなく、イラストを使用するというのも一案。ここでも、コンセプトに沿った選択が大切になってくる。
見直しの際は数字で分析。各ページの役割も重要
すでにあるメニューブックにおいて、掲載商品の見直しをする際は、どの商品が売れているのか、どの商品が利益に貢献しているのかを、数字で分析する必要がある、その場合、商品を売上順にA、B、Cに分ける「売上のABC分析」と、商品単品の粗利額を同様に分ける「粗利のABC分析」を合わせた「クロスABC分析」を、河野氏は推奨する。そして、「その数字はあくまで、今のメニューブックがもたらした結果であることを忘れないでください」とも語る。現状、店が売りたい商品がCランクであっても、紹介方法を変えるだけで、Aランクに昇格することもある。メニューブックのリニューアルは、現状のABCを、店の理想のABCへ近づける作業といえるのだ。
具体例として、オペレーションに時間のかかる商品を考えてみよう。「提供までの時間が長く、思うように注文数が伸びない商品なら、リニューアル後はメニューブックに待ち時間を記載することも必要。さらに、時間のかかるメニューというカテゴリーを設けることも有効です。そうすることでお客様の不満は軽減され、注文数も伸びる可能性が出てきます」と河野氏。なぜ時間がかかるのか、おいしく提供するためにどういった調理をして、どんな工夫をしているのか。ストーリーとともに紹介することで、待つことにさえ、価値を見出すようになる。時間がかかるマイナス面を、プラスに変えられるのがメニューブックの上手な活用法だ。また、メニューの削除と追加に関しては、総量規制を定め、コンセプトに沿った売りたいメニューだけに絞りつつ、全体のバランスを考えることも重要なポイントだという。
そのほか、リニューアルする際は、①今のメニューブックの良い点、改善したい点 ②メニューブックを見たお客様からよく聞かれる質問 ③お客様に人気の商品 ④自信がある商品、売りたい商品 ⑤忙しい時に注文されるとオペレーションが乱れる商品 ⑥新しいメニューブックへの要望 ⑦リニューアルする目的、以上の7つの角度から見直すと、「対応すべき課題が浮かび上がります」と、河野氏は語る。
コンセプトやカテゴリー、掲載商品が決定したら、具体的なページ構成へ。冊子の場合は、表紙、最初の見開き、裏表紙が特に重要だと河野氏は指摘する。「メニューブックを手に取らないお客様にも、見てもらえる可能性があるのが表紙。そこを店名ロゴなどだけに使うのはもったいない。表紙には、店の特徴が伝わる写真や文章を入れたり、看板商品の写真を打ち出して、店からのメッセージを発信すべきです」。
また裏表紙は、ついで買いに活用したいところ。例えば、居酒屋や和食店では、デザートは来店動機になりづらい。そういったメニューの写真などを、裏表紙でアピールして注文率を高めることもできるという。
さらに、最初の見開きページは、店を印象付ける重要なポジション。ここでは、必ず食べてほしい売りの商品や、コンセプトが伝わるメニューを掲載し、アルコールが飲める店ならば、その情報も紹介。さらに、注文方法やセット内容など、初めての人に向けた店の使い方も案内する。「ABC分析の結果、コースがよく出ているのであれば、思い切って最初の見開きページでコースを紹介するという手もあります。この見開きは、表紙に匹敵する重要なページ。掲載する内容次第で、売上も変わってくるのです」と、河野氏はアドバイスする。また、最初の見開きで陥りがちな失敗は、経営者の想いや食材へのこだわりだけを掲載してしまうケース。「どんなに熱い想いがあっても、肝心なメニューが載っていなければ、読み飛ばされてしまうことも多い」と、河野氏は注意を促す。
メニューブックが完成したら、これを最大限に活かせる使用方法や、接客にも力を入れたい。「それにはまず、スタッフ自身が店のファンになることが大事」と河野氏。コンセプトからすべて論理的に考え、完成したメニューブックと人の力が合わさってこそ、注文数と売上アップにつながるのだ。
CASE1男性用と女性用のページを用意。1人に1冊渡して客単価アップ!
【東京・三越前】VINOSITY maxime コレド室町2
女性向けページのカギは、イラスト&客目線コメント
ラテン語で“ワイン好き”を意味する「VINOSITY」を店名に掲げ、日本でワインのファンを増やすことをコンセプトにしたワイン居酒屋。メニューブックは「VINOSITY」系列3店舗で共通のものを使用している。
運営会社である株式会社シャルパンテ代表取締役・藤森真氏は「メニューブックには店のコンセプトを含めて、いろいろな情報を詰め込もうと思いました」と語る。フルカラー、全32ページの冊子には、料理はもちろん、使用する食材の生産者情報や、ワインに関するQ&A、スタッフ募集の告知など盛りだくさんの内容。情報誌と呼んでも過言ではないボリュームだ。
このメニューブックは、来店客全員に1冊ずつ渡している。「1卓1冊ではなく、1人1冊メニューを提示したほうが、客単価が上がると考えているからです」と藤森氏。メニュー選びを人任せにせず、各自が食べたいものをオーダーすれば、注文数は確実にアップする。仮にそのときオーダーしなくても、気になる料理を発見する確率が上がるので、自然と再来店につながるのだ。さらに、このメニューブックは持ち帰りも可能にしている。これは友人や家族、同僚の目に触れさせることで、店を知らない人に存在をアピールする狙いがあるという。
メニューブックで料理を掲載しているのは、32ページのうち6ページのみ。その6ページ中2ページは男性、4ページは女性に見てもらうイメージで制作(掲載料理は共通の30品)している。男性向けの見開きでは、一度にいろいろ注文できるように前菜からメイン、デザートまでを写真付きで紹介。一方女性向けの4ページでは、イラストや補足コメントで料理を紹介するほか、相性のよいワイン(赤・白・ロゼ)をアイコンで表記するなど、興味を引いてオーダーを促す。さらに「シェフのこだわり」などカテゴリー分けもされており、複数のカテゴリーで紹介しているメニューもある。これにより、1つのカテゴリーが読み飛ばされても、ほかで目に止まる可能性を高めている。
料理以外のページで目を引くのが、生産者情報だ。「ヴィノシティ食材の旅」と題し、食材作りに真摯に取り組む生産者を紹介。食材にまつわるストーリーを伝えることが、来店客の満足度アップにもつながる。このメニューブックは生産者にも送付しており、店との信頼関係を深める役割も果たしている。
ほかにも、ワイン初心者向けのQ&Aなど、ワインの楽しみ方を幅広く伝えるページを用意。後半にはスタッフ募集のページも入れた。「このメニューブックはリクルーティングツールでもあります。お客様のなかには同業者も少なくないですし、来店を機に当店に興味を持ち、スタッフとなる可能性もあると考えています」と藤森氏。社内イベントや社員旅行、生産地見学などの様子を写真入りで紹介し、職場やスタッフの雰囲気を伝えることで、人材獲得にも役立てているという。
「当店のメニューブックは優秀な営業ツール」と言う藤森氏。同社のホームページでダウンロードできるようにするなど、店の売りやコンセプトを伝えるアイテムとして活用している。
藤森 真氏都内ホテル、レストランでの勤務を経て2010年に独立。ワインを軸に、バル業態、レストラン、スクールを経営している。
東京都中央区日本橋室町2-3 コレド室町2-1F
http://r.gnavi.co.jp/1u9s5yxp0000/ 地下鉄三越前駅から徒歩3分。商業施設「コレド室町2」の1階に2014年3月オープン。明るく開放感のある空間で、食材にこだわった料理とワインを提供している。客層の中心は30~40代の女性。買物帰りなどに立ち寄る人も多い。
CASE2持ち帰り可能にして、店を思い出すきっかけに
【福岡・南福岡駅】竹丘町 海晴れ
価格の値上げに合わせて、全体に高級感を打ち出す
2012年7月のリニューアルを機に、居酒屋業態からより鮮魚と寿司を売りにした店へ一新した「竹丘町 海晴れ」。心が晴れるおもてなしをコンセプトに、地域密着の店を目指して、店名に地域名も冠した。現在、特に力を入れている企業の宴会では、予約をしてくれた会社のロゴや理念などを、敷紙に印刷するサービスを実施。事業部マネージャーの神尾秀和氏は、「当日までお客様もご存知ないので、とても驚き、喜んでもらえます。宴会のリピートにもつながりました」と語る。
リニューアルと同時に変えたのは、メニューブックだ。「お客様の生活の中に入り込みたい」(神尾氏)と、自宅や会社で店のことを思い出すきっかけとなるよう、持ち帰り可能なメニューブックを導入。裏表紙には来店ごとにシールを貼る、ポイントカード機能も設けた。「ポイントを貯めるスペースは、すぐに捨てられないために考えたアイデア。シールも時節ごとに絵柄を変え、これを見れば来店頻度が確認できます」と、神尾氏は胸を張る。
メニューブックの制作は社内のデザイン部が担当。春夏版と秋冬版の年2回、各4000部ほど印刷する。当初は、見た目のワクワク感を打ち出そうと写真を多用。料理は、カテゴリーごとに屋号をつける遊び心でアピールしていたが、昨年10月に完成した最新版からは、スタイルも内容も大きく変更。持ち帰り可能はそのままに、厚みのある上質の紙を使い、白を基調にしたデザインに。屋号は取りやめ、写真を掲載するメニューも、数点に絞り込んだ。変更の大きな理由は、同時に行ったメニュー価格の値上げだ。「料理のクオリティとともに価格を上げ、それに伴い、それまで使っていたメニューブックよりも、高級感があるものに変えました」と、神尾氏は話す。
3つ折りの最新版は、表紙でコース料理を紹介。中を開くと、まず目がいく左上に売りの刺身、その下に寿司を掲載している。刺身は、「板さんおまかせ七種」(1人前1058円※2人前より)、「選べる刺身 三品盛」(2160円)、「選べる刺身 五品盛」(3240円)の3種に絞り、わかりやすさを強調。自社に水産部門があるため、毎日豊富に仕入れる鮮魚は、グランドメニューとは別に、日替わりのおすすめに集約する。「その日の魚を楽しんでもらえるよう、接客の際におすすめのシートで案内しています」と、副店長の廣瀬実氏。また、魚を前面に打ち出してからは、それに合う日本酒の注文も増えたため、おすすめシートの裏面には、日本酒を中心にドリンクメニューを掲載。そのほか、コース料理のみを掲載したメニューブックも作り、こちらはポスティングにも使用している。
「高級感を持たせたことで、商品の値上げについてもすんなり受け入れていただけました」と話す神尾氏。また、持ち帰りの意外なメリットとして、電話での予約時に注文する料理が先に確定し、当日のオペレーションがスムーズになることもあるという。さらに、来店した人が友人や同僚にメニューブックを渡し、新規客の獲得にもつながっている。メニューブックというツールの大切さを実感する毎日だ。
廣瀬 実氏30代でエンジニアから飲食業界に転身。利き酒師の資格も取得し、和酒ソムリエとして活躍。日本酒は直接蔵へ行って仕入れることも。
福岡県福岡市博多区竹丘町1-5-32
http://r.gnavi.co.jp/f457402/ 貯水池に面した眺めのいい立地で、九州産の新鮮な野菜や魚、肉料理が楽しめ、職人が握る寿司も好評。客層は30 代後半の男女が中心で、週末はファミリーの利用も多い。今年5 月には、同じ博多区に真鯛料理を看板に据えた「店屋町 海晴れ」がオープンする。
CASE3おいしく食べるための「食べ方指南書」を接客時の説明でも活用!
【大阪・天王寺】やきにく 萬野 本店
「肉のプロ」としての知識と想いを伝える構成
食肉卸業などを営む株式会社萬野屋が運営する「やきにく萬野本店」。JR大阪環状線の高架下にあり、周辺の地元住民や天王寺などで働くビジネス層を中心に愛されている。同店のコンセプトは「本当においしいお肉の味や食べ方を伝え、お客様のお腹と心を満たす食事を提供すること」。現在のメニューブックにも、この想いが随所に表現されている。同店は昨年10月、牛肉の高騰を受けて価格を変更。また、盛り合わせメニューの数を増やすのに伴い、メニューブックをリニューアルした。その際、ABC分析を行い、追加や削除するメニューを検討。人気が高かった「盛り合わせ」などのメニューは、以前より写真を大きく使って目立たせるほか、各ページの内容がわかるインデックスタブを作った。
そんな同店のメニューブックで目を引く工夫が「食べ方指南書」。店がおすすめする食べ方をはじめ、焼き時間や焼き方などを掲載しており、ここに書いてある内容を接客時に説明することでより関心を引き、オーダーにもつながっているという。ホール主任の萬野敏輝氏は「例えば『赤身』のページに掲載している『食べ方指南書』では、味付けせずに焼く『素焼き』と『塩焼き』『たれ焼き』という3つの焼き方について紹介しています。当店では、肉ごとに焼き方を選んでいただいているので、ファーストドリンク提供後に3つの焼き方についてメユーブックを見せながら説明をするようにしています」と話す。「素焼き」した肉をオリジナルのだし醤油で食べるのがいちばんのおすすめだが、「塩焼き」や「たれ焼き」が合う部位もあるので、オーダーのたびに来店客の好みを聞いたり、各スタッフのおすすめの焼き方を伝えて、よりおいしく食べてもらえるように工夫している。
一方、メニューブックの構成やレイアウトにも、食肉卸業を基盤とする同店ならではのこだわりが感じられる。表紙を開いた最初のページには「萬野和牛」の言葉とともに、同店で扱う肉のコンセプトを提示。「未経産牛で30カ月以上の長期飼育をしたもの」など、牛肉へのこだわりをアピールしている。次の見開きでは、店が「もっとも食べてほしい」と考えている「盛り合わせ」メニューを掲載。その後、人気が高い「赤身」「塊焼き/焼しゃぶ」のページへと続く。「赤身」を目に止まりやすい前半に掲載しているのは、写真の色鮮やかさとインパクトで期待感を高める狙いもある。
また、「ホルモン」のページには豊富な種類が伝わるよう、各部位を写真と文章で紹介。「日替わりホルモン盛り合わせ」(45g×4種/1000円)には“お得です”の表示を付け、コストパフォーマンスの高さをアピールし、高い注文率を誇っている。「お客様にお得感を感じてもらえると自信を持っているので、お得マークをつけました」と萬野氏は笑顔を見せる。
そのほか、紙や黒板にその日のおすすめ部位などを書いており、こちらも接客時に会話のなかでお得感をアピールし、オーダー数をアップ。牛肉の知識を凝縮した「牛図鑑」も制作するなど、こだわりを伝える取り組みで多くのファンを生んでいる。
萬野 敏輝氏接客や人材管理などのマネジメント業務に従事。父である株式会社萬野屋代表取締役・萬野和成氏の店づくりをサポート。
大阪府大阪市天王寺区勝山4-10-25
http://r.gnavi.co.jp/kbmc200/ 客層は30~40代がメインだが、20代やシニア層も少なくない。土・日曜日はファミリーを中心に賑わい、平日は仕事帰りのサラリーマンのグループなどが来店。掘りごたつの座敷席のほか、カウンター席もあり1人でも気軽に入れる。