更新日:2022.6.16
目次
・被写体の「明るさ」「色」「形」を常に意識。斜め45度の位置から撮影
・ポイント1 明るくキレイに撮る
・ポイント2 色をキレイに撮る
・ポイント3 形をキレイに撮る
メニュー写真のクオリティーは、店の印象を決める重大ポイント。せっかくの自慢料理も、そのおいしさがビジュアルで伝わらないと、オーダーしてもらえない。そこで、プロのカメラマンに「コンパクトデジカメで簡単、きれいに撮影するコツ」を聞き、「明るさ」「色」「形」の3つのポイントについて解説してもらった。きれいに撮影するテクニックを専門知識がなくても、これさえ覚えれば、驚くほどの効果が得られるはず!
3つのポイントを常に意識。斜め45度の位置から撮影
「コンパクトデジカメの基本性能は、近年プロも驚くほど向上しています。高価な一眼レフを使わなくてもちょっとしたコツさえ覚えておけば、初心者でも手軽においしそうな料理写真が撮れますよ」。こう話すのは、料理関連の広告写真などで活躍する斎藤巧一郎カメラマン。気をつけたいのは、被写体の「明るさ」「色」「形」という3つのポイントだという。
「本体の電源をオンにしたら、まず撮影モードを『A(オート)』から『P(プログラムAE=自動露出)』に切り換えてください。撮影条件をカメラが自動判別してくれる『A』モードは、いわばスナップショット用。瞬間を切り取るには便利ですが、そのまま料理を撮ると少々フラットな仕上がりになりがちです。一方、『P』モードではカメラが決めた標準設定を、好みに応じて調整することが可能。これを使って的確な『明るさ』と『色』を再現すれば、さらに自然で瑞々しい存在感が出せます」。
ただ、メニュー写真の場合、あまり過剰なアレンジは逆効果。あれこれ悩むより、まずは見たままを素直に表現することを心がけたい。
「料理によっては、明るさや色を実際より多少強調した方が映えることもあります。その際はまず、標準的な画像を撮影してみる。それを基準に少しずつ数値を加減して、ベストな1枚を見つけてください。そして、カメラの位置は料理に対して斜め45度が基本。テーブルの料理を食べる時と同じような目線から撮ることで、見る人の食欲も刺激できます」。
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基本はプログラムモード
撮影はなるべく自然光、位置関係は逆光で
料理をきれいに撮るには、まず場所選びが重要だ。自然光が入るお店であれば、なるべく明るい場所で、明るい時間帯に撮影したい。撮影ポジションは、太陽などの光源が被写体の真後ろから差す「逆光」が基本になる。「後方から光が当たることで、食べ物に自然な陰影が付き、リアルな存在感を伝えられます」(斎藤氏)。逆に撮影者の後ろ側から被写体に光が当たる「順光」は、影が強く出すぎてしまい、奥行きのない感じになるのが欠点。
室内撮影の場合でもフラッシュは使わない
自然光がたっぷり入るお店はよいとして、太陽の光が入ってこない店、地下の店などはどうすればいいのだろう。「大丈夫! 今のコンパクトデジカメは性能がいいので、室内でも十分に撮影可能です。ただしフラッシュは使いません。カメラ付属の小型フラッシュは被写体の柔らかな濃淡を消し、フラットに見せてしまうからです。むしろ室内をなるべく明るくし、カメラをきちんと設定すれば、フラッシュなしでも十分きれいに撮影できます」(斎藤氏)。
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ポイント1 明るくキレイに撮る
「露出補正」の目盛りを動かして被写体をもっと明るく見せる
料理をおいしく見せるためには、画面を明るくすることがまず重要。被写体が暗くくすんでいては、食欲の沸く写真にはならない。白い部分ははっきりと白く打ち出し、素材のディテールをしっかり伝えてこそ、お客に訴えかける力が生まれる。
「そこで便利なのが『露出補正』機能です。『A』モードでは、カメラが画面の明るさを自動で調整していますが、『P』モードに切り換えると、ディスプレイに表示されるバー上の目盛りをプラスマイナスの方向に動かすだけで、写真を自由に明るくしたり暗くしたりできます」(斎藤氏)。
露出を「+」に補正して軽やかな白を再現しよう
まずは白っぽいメニューの場合。露出補正なしでショートケーキを撮影したのが写真下(±0)。この状態で白いものを撮ると、カメラが「明るすぎる場所だ」と誤認識することで、画面全体がどんよりとくすんでしまうケースが少なくない。
「その場合は『露出補正』を+方向に1目盛りずつ動かし、生クリームの輝きが出つつ、微妙な濃淡が消えない程度まで明るくしましょう」(斎藤氏)。
露出を「−」に補正して濃厚な黒を表現しよう
デミグラスハンバーグのようにダークな色合いの料理は、下の写真(±0)のように露出補正なしで撮影すると、明るくなって重厚感が伝わらないことがある。その場合はソースのコッテリ感、照りを伝えるため、目盛りを-方向に動かしてみるといい。
「この際、暗い部分を真っ黒にし過ぎてしまうと、肉の質感が消えてしまって逆効果。露出を-に微妙に調整して、見た目の黒を再現しましょう」(斎藤氏)
白い料理と暗めの食べ物一緒に見せたい場合は?
下のように、白と暗い色の食べ物、両方がある場合はどうしたらいいのか。 「±」両側に目盛りを動かして、試してみるのが一番だが、白に合わせて+に露出補正した方が美しく仕上がるケースが多い。(下の場合は+0.7がベストの色合い)
ポイント2 色をキレイに撮る
どんな場所でも正確な色合いが再現できる「ホワイトバランス」
透明感あふれる魚介類、色鮮やかな野菜類、肉汁がしたたるステーキ──。おいしさを100%伝えるには、食材の色味を正確に再現することが不可欠だ。しかし、実際にはそこを照らす光源によって、被写体の色が現実とまるで違って見えたりする。
「白熱灯の下に白身の刺身を置けば赤っぽく、蛍光灯の下に赤身のマグロを置けば寒々しい灰色に見えやすいですよね。このような照明の色を検知して、白い部分をきちんと白く写るようにしてくれるのが『ホワイトバランス』。料理の色を正しく再現するには、不可欠な機能です。使い方は簡単。『晴天』『曇天』『電球』『蛍光灯』などのモードを選ぶだけ。例えば、白熱灯の部屋で『電球』モードにしておけば、料理は赤っぽくならず、白身の刺身もちゃんと白く写すことができます」(斎藤氏)。
ホワイトバランスの調整で正確に色を再現しよう
以下の写真はすべて、「夜間・白熱灯の室内」という同一条件で撮影したもの。ホワイトバランスの設定を変えることで、刺身の色味が変わっているのが一目でわかる。「電球」モードでは新鮮な魚介の赤、白、ピンクなどが正確に再現されている。「オート」は白い部分がやや赤く、「晴天」「曇天」ではさらに赤身が強い印象。
ホワイトバランス機能で温かさ、冷たさを演出!
ホワイトバランスは本来、色を正しく再現するための機能。ただそれを上手く利用すれば、写真全体に温かい雰囲気やキリッと冷たいテイストを加えることも可能だ。下の写真を参考に、様々なモードで狙った印象を再現してみよう。
温かいスープ
冷たいビール
ポイント3 形をキレイに撮る
被写体からの距離が大切。離れて望遠ズームで歪みをなくす
明るさ(露出補正)と色合い(ホワイトバランス)の調整がいい感じで決まったら、最後は撮影位置を決めよう。そこで重要なのが、実は被写体からの距離感。
「コンパクトデジカメ内蔵のズームレンズは、電源を入れた状態では広角気味。広い範囲を写せる一方、近距離から撮ると画像に歪みが出ます。一つ一つの形状やサイズなどが大切な料理写真では、これは大問題。そこで、望遠へ『ズーム』しましょう。至近距離から広角で撮るのではなく、少し離れた場所から望遠寄りで撮れば、歪みの少ない画像が撮影できます」(斎藤氏)。
ズームと撮影位置に注意して撮ろう
複数のアイテムを1枚の写真に収める場合、一つ一つの形はもちろんだが、それぞれのサイズの対比も重要だ。例えばコース料理写真の場合、手前の前菜が大きく、奥の主菜が小さくては、お客はイメージが掴めないこともある。
広角で近寄る
広角のままで接近して撮影したため、パンもお皿も歪み、正確な形や、それぞれの大小がわからない失敗例。手前のパンがやたら大きく見える。
離れて望遠
同じパンを撮影する場合でも、被写体から少し離れて、そのうえで歪みの少ないズームレンズの望遠寄りを使えば、正確な形で美しく撮影できる
上からの俯瞰ショットは立体感を伝えにくい
「料理を真上から撮る俯瞰写真は、斜め上からの写真が続く中で変化を出すには便利ですが、立体感がなくなり、模様のように見えてしまう面も。初心者には向きません」(斎藤氏)。
「離れてズーム」手法は部分アップにも有効
「食パン上のチョコチップなど、料理のある部分だけを強調したいときはクローズアップもあり。この場合も少し離れた位置からズームで撮るときれいです」(斎藤氏)。
携帯電話のカメラでうまく撮影するには
進化する携帯電話のカメラ機能。最近はちょっとした撮影はこれですましてしまう人も増えてきた。
「注意したいのは、まず被写体に対して角度を付けすぎないこと。携帯電話はコンパクトデジカメ以上の広角レンズですので、少し上から撮っただけでも、歪んで写ってしまいます。よく『モノの臍(へそ)を探す』と言うのですが、撮影対象の重心を水平に見て撮影するといいでしょう」(斎藤氏)。
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