ブームではなく業態の確立へ サムギョプサル革命の道を邁進!
“サムギョプサル革命”を目標に掲げ、専門店「ベジテジや」を展開する株式会社ゴリップ。サムギョプサルならではの包むおいしさを追求して確かな支持を集め、昨年は5店舗を出店した。勝山 昭社長は「目指すは2015年50店舗体制」と意気込む。成功の秘訣は、熱き理念に基づく強固なビジネスモデルだ。
――サムギョプサル革命を掲げています。「革命」が意味するところを教えてください
私は2003年、中古ゴルフクラブの輸出事業で起業し、韓国で会社を経営していました。そのときによく食べていたのがサムギョプサルです。しかし、2005年にその会社を譲渡して帰国したとき、まだサムギョプサルは日本にまったく浸透していませんでした。気軽においしいサムギョプサルを食べることができない。だったら自分でお店を作ろう、そう思い、株式会社ゴリップを設立。2006年にはサムギョプサル専門店「ベジテジや」1号店をオープンしました。
ただ、豚の焼肉であるサムギョプサルを焼肉店の派生型業態として打ち出しても、勝機は少ないことはすぐにわかりました。日本では昔から、「焼肉といえば牛肉」というイメージが強いからです。必要なのは、これまでの焼肉店にはできないこと、サムギョプサルにしかできないことを追求することでした。つまり、日本におけるサムギョプサルを新たに定義しようと考えたのです。そのときに思い至ったのが”包む”ことでした。包むおいしさと楽しさを追求したサムギョプサル専門店を、日本における外食業態として定着させること。そして、サムギョプサル専門店のリーディングカンパニーになること。これが私たちの掲げる「サムギョプサル革命」に込めた意味です。
――目標が実に明解ですね。具体的にはどういう方法でサムギョプサルを浸透させようと?
1号店の出店当初から考えていたのは、初体験で確実においしいと感じていただくことです。
サムギョプサルは、様々なトッピングの組み合わせが可能で、また肉の部位や大きさ、焼き加減などで印象は大きく変化します。加えて、お客様の多くはサムギョプサル未体験です。確実においしいと感じていただくためには、ハード・ソフトの両面から店舗の基盤を整えていく必要がありました。
ハード面で言えば、まずこだわったのは食材です。包んで最高においしい豚肉を吟味するとともに、サンチュもメインターゲットである女性が包みやすいよう、芯が細くて柔らかく、かつ女性の手のひらサイズの品種を契約農家の方と一緒に開発しました。また、サムギョプサルならではの包む楽しさを打ち出すため、トッピングも本場韓国のスタイルにとらわれず、多彩に取りそろえています。現在では、豚肉は約20種、トッピングは約30種で、組み合わせのバリエーションは1000通り以上にもなります。
客席にも工夫を凝らしました。傾斜のついた鉄板は特注品で、溜まった油はシメの「済州ご飯」を作るときに使うことを想定しています。また、煙を吸い込むクリアーフードは食事の会話の妨げにならないよう、テーブルの横に配置しました。
――包むおいしさへの工夫が満載ですが、ソフト面ではどんな取り組みを考えましたか?
ソフト面と言えば人材教育、人材教育と言えば、外食業界ではホスピタリティが第一に挙げられることが多いですよね。しかし、当社においてまずスタッフに求められるものは、知識です。
「ベジテジや」では、スタッフが各テーブルにつき、メニューの解説から肉の調理・カットまですべてを担当します。これもお客様に確実に、「おいしい!」と言っていただくためです。そこで私たちは、店舗スタッフを「サムギョプサルの伝道師」と位置づけています。すべてのメニューを熟知することはもちろん、おいしいトッピングの組み合わせや肉の焼き加減、カットの仕方までしっかりと身に付けてもらうよう教育するのです。
ホスピタリティはもちろん重要ですが、まずは確実な知識を身に付けてこそ、顧客満足につながるサービスが提供できると考えています。
――昨年は5店舗を新規出店し、多店舗化を進めています。基盤構築は一層重要になりますね。
その通りです。すでに、そのための取り組みもスタートしています。具体的には2009年にセントラルキッチンを、2011年には人材育成部門として、「ベジテジカレッジ」を立ち上げました。組織の規模が拡大するなかで、味もサービスもブレないようにすることが、その目的です。
セントラルキッチンでは、サムギョプサルの仕込みやタレ、一品料理などの仕込みを行ないます。主力商品の味の標準化が狙いであり、スケールメリットによるコスト削減は、まったく考えていません。また、ベジテジカレッジにおける人材教育で特に重要なのは、私たちの理念をしっかり理解してもらうこと。例えば、学生のアルバイトスタッフに、どれだけ「肉のカット幅は女性が2センチ、男性は2.5センチ!」とだけ伝えても、行動は伴いにくい。なぜそこまでこだわるのか、根底にある理念に共感してもらわなければなりません。
そこで、私たちは約1年かけて作成したオリジナルの教材をもとに、教育プログラムを組み、入門編として1カ月16時間、さらに、サムギョプサルの伝道師として必要な知識や技能を身に付けるために、3カ月39時間の研修を実施しています。プログラムの初回は、「サムギョプサル革命」について。加えて研修後も、OJT(店舗での実地訓練)でリマインドを行なうための手帳や、講義の理解度を確かめるための5段階のテストも設けています。
こうして育む”店舗力”には自信があります。今ではたとえ隣に異なるサムギョプサル専門店がオープンしても、まったく怖くないですね。
――確固たるビジネスモデルを基盤にした御社の、今後の展開についてお聞かせください。
これからは確固たる業態として育て、新たな魅力を発信して成長していく時期だと考えています。
「ベジテジや」の内装が各店舗で異なるのは、そのためでもあります。居抜きで工費を抑えることはもちろんですが、店舗ごとのコンセプトを設けることで、味やサービスの標準化だけでは生まれない魅力を届けたい。例えば、今年3月にオープンしたばかりの大阪・東心斎橋店は、「和カフェ」がテーマ。お腹いっぱいになって店を出た後、専門店でコーヒーを買うのではなく、「ベジテジや」のマークの入った容器でおいしいコーヒーを飲みながら帰ってほしいと、退店時にテイクアウトのコーヒーをサービスしています。
また、中期的目標は2015年までに50店舗出店です。現在は京都、大阪、滋賀、愛知に出店していますが、今年は東京にも進出し、将来的には都内で15店舗ほど展開したい。これに伴い、エリアを統括する幹部の育成にも力を入れています。
さらに、直営店とは別に、フランチャイズ展開も行なっていきます。ただし、こちらは出店を急がず、「この人ならサムギョプサルを世界に伝えていける」という方とのみ、パートナーシップを組み、最大で20店舗ほどを考えています。
そして、長期的な目標はあくまでサムギョプサル革命です。私たちが作りたいのはブームではなく、50年、100年と続く業態。まずは東京、そしてアジアへの進出です。最終的には、私たちのサムギョプサルを持って韓国で勝負したい。そしてヘルシーでおいしいサムギョプサルを通じて、世界に元気を届けたい。今、この夢に共感してくれる多くの仲間がいます。挑戦あるのみです。
Profile
かつやま あきら
1976年
京都府京都市生まれ
2002年
サッカー日韓W杯を観戦するために行った韓国で、多くの韓国人の仲間をつくり、そのまま韓国で事業を興すことを目指す
2003年
韓国にて東アジアを中心とした中古ゴルフクラブの輸出事業を開始
2004年
韓国・ソウルに中古ゴルフクラブ販売店「GOLF KING」をオープン
2005年
日本に帰国。株式会社ゴリップ設立
2006年
1号店となる「ベジテジや」深草店を出店
Company Data
会 社 名
株式会社ゴリップ
所 在 地
京都府京都市中京区壬生淵田町12
レジデンス大倉1F
店 舗 名
「ベジテジや深草本店」「ベジテジや四条烏丸店」「ベジテジや四条木屋町店」「ベジテジや天満橋店」「ベジテジや三条KYOUEN店」「ベジテジや堺筋本町店」「ベジテジや草津」「ベジテジやOHANA」「ベジテジや東心斎橋店」「VEGETEJI FACTORY」