2017/03/30 繁盛の法則

鶏と野菜類のポタージュ風スープが特徴のラーメン店とは

商品力と接客が武器の「鶏ポタラーメンTHANK お茶の水店」(東京・お茶の水)に学ぶ-鶏と9種の野菜を使ったポタージュ風のスープが特徴。13坪18席の店舗で、1日平均240人が訪れる人気店となっている。

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鶏ポタラーメンTHANK お茶の水店

Key Point

  1. 鶏と野菜で独自の「鶏ポタ」スープを開発
  2. 路地裏立地を逆手にファンを増やす
  3. 柔軟な発想の限定商品を次々と発売

オフィス街の路地裏で2店舗を展開

鶏と9種の野菜を使ったポタージュ風のスープが特徴の「鶏ポタラーメンTHANK お茶の水店」は、路地裏にある10.5坪17席の小規模店でありながら、リピートや口コミで着実にファンを増やしている。

1号店は2012年1月5日にオープンした港区・大門の13坪18席の店舗で、1日平均240人が訪れる人気店である。1号店から比較的近距離のオフィス街を狙い、2号店のお茶の水店を2015年7月7日にオープンした。「オンリーワンの商品と、オンリーワンのサービス、心地いい空間の提供に力を入れています」と、店主の田邉雄二氏は語る。独自性の高い商品に加え、ナチュラルで清潔感のある店舗、ていねいな接客も特徴で、店頭で足を止めているお客がいればすぐに外に出て声をかけ、入店を促す努力を続けている。

田邉氏は1980年生まれ。19~22歳のときにアメリカ・ニューヨークに留学し、大学で国際ビジネスを学んだ。そのままニューヨークで起業し、日本の文化を紹介したいと考え、自分の好きなものをリストアップし、最終的にラーメンを選択。自身でラーメンの試作を重ねながら、永住権を取るために寿司店に勤務したが、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロの後だったこともあり、取得は困難だった。そんな折、東京・駒沢に本店がある人気ラーメン店「せたが屋」がニューヨークに進出するという話を聞き、田邉氏は2006年にいったん日本に帰国。せたが屋本店に8カ月勤務し、念願通り、せたが屋ニューヨーク店出店時にマネージャーとして赴任した。しかし、ビザの取得がネックとなり、3カ月で帰国。その後せたが屋のグループ店に2010年まで勤務し、まずは日本で自身の基盤をつくろうと、独立に向けて動き始めた。

「スペシャルラーメン」(奥 980円)は塩玉、手羽先3枚入りで、スープは「ぽてり」「とろり」「さらり」から選べる。手前は夜のおつまみメニューで、左が「貝柱のバター醤油」(210円)、右が「ローストトマトのステーキ」(350円)。ワイン(赤 550円)はピッコロサイズ(187ml)のミニボトルで提供する

海外進出を前提にオリジナルスープを開発

せたが屋グループ勤務中に、スープに力を入れたラーメンづくりを学んだ田邉氏は、自分もスープで特徴を出すことにした。鶏ベースにしたのは、将来的な海外進出を前提に、できるだけ多くの人たちに食べてほしいと、宗教上の禁忌を避ける意味もあった。また野菜の栄養素もたっぷり摂れるように、“鶏と野菜のポタージュ”の意の「鶏ポタ」スープを作り出した。鶏のスープは、全体がしっかり乳化した白濁タイプの白湯(パイタン)スープと、あっさりと澄んだ清湯(チンタン)スープの2種類を取る。白湯スープは、鶏ガラ、モミジ、丸鶏などを7時間以上煮込み、一晩寝かせて翌日に使う。清湯スープは、同様の鶏素材に玉ネギ、ニンニク、ショウガを加えて3時間半ほど煮込んで取り、野菜類の煮込みと、濃度調整に使用する。

野菜は、ジャガイモ、玉ネギ、ニンジン、トウモロコシ、白菜、キャベツ、ニンニク、セロリ、ショウガの9種を使い、清湯スープで茹でてからミキサーにかけてペースト状にし、白湯スープと合わせる。これが一番濃度の濃い「ぽてり」用のスープで、1人前に360mlを使用する。中間の濃度の「とろり」は、「ぽてり」用260mlに清湯スープ100mlを加えたもの、あっさりした「さらり」は、「ぽてり」用100mlに清湯スープ260mlを加える。オーダー比率は、「ぽてり」と「とろり」が各4割、「さらり」が2割となっている。麺は特注品で、ラーメンには低加水の細麺、つけめんにはローストした小麦粉を使った香ばしい中太麺を合わせている。さらに、2016年12月からは、試験的に低カロリーのコンニャク麺の使用を開始した。

また、常連を飽きさせないようにと、年間5~6種の限定商品を登場させる。その中から定番に昇格する商品もあり、特にパルミジャーノレッジャーノチーズ、卵黄などをトッピングした「トリポターナ」(820円)は、女性を中心に好評を得ている。今春は、東日本大震災の被災地支援の意味を込め、岩手・一関産のゴボウを使ったゴボウ尽くしの商品を販売している。

同店が独自の鶏ポタラーメンを核に、支持を広げている要因は以下のようになるだろう。

  1. 鶏と野菜類で取る独自の「鶏ポタ」スープで特徴を出している。
  2. 路地裏立地を逆手に、商品力と接客でファンを増やしている。
  3. 柔軟な発想の限定商品で常連を飽きさせない工夫をしている。

夜も90~100人を集客する大門店と異なり、夜間の人通りがかなり少なくなるお茶の水店では、2016年9月20日より、夜はアルコールメニューや酒肴の提供を開始し、“チョイ呑み”需要の喚起に取り組んでいる。これにより、昼は客単価860円で平均80人を集客しているのに対し、夜の客数は40人ほどだが、客単価は1100円に上がり、効果を出し始めている。

「国内での店舗展開は、直営で多くても5店舗まで。42歳くらいまでにはニューヨーク出店を実現したいです」と、田邉氏は力強く語っている。

鶏ポタラーメンTHANK お茶の水店
住所

東京都千代田区神田錦町1-14-7 紅雪ビル 1F
TEL 03-5244-5739
営業時間
11:30~15:00(月~土)、18:00~22:00(月~金)
定休日
日祝、土曜夜