2013/02/08 繁盛の法則

「究極の親子丼」や「絶品素揚げ」で差別化する焼鳥店とは

隠れ家的な鶏味座青山本店に学ぶ‐地下鉄表参道駅から徒歩5分ほどにある焼鳥店。「究極の親子丼」と銘打つ東京軍鶏の炭焼き親子丼と朝締めの東京軍鶏「大山地鶏」で専門性を打ち出している。

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鶏味座青山本店

青山通りから路地に入った場所にあり、ふと人目を引く外観

Key Point

  1. 東京軍鶏や大山地鶏のやきとりで専門性を出す
  2. ランチや夜の締めに「究極の親子丼」を提供
  3. 路地にある民家風の店舗で落ち着いた空間を創出

あえて路地に出店し、民家風の店構えで存在感を訴求

「当店の前を通りながら“どういう店かな、値段が高いのかな”と何回かやり過ごした後、ようやく入ってみたというお客様も多いですね」と、東京・青山の「鶏味座(とりみくら)青山本店」の店長、萩野大直氏は語る。地下鉄表参道駅から徒歩5分ほどだが、青山通りから路地に入った場所にある同店は、店前の植込みや民家風の落ち着いた造りが目を引くが、初めて入店する際には、少々の勇気と決断を要するようだ。とはいっても、実際の客単価はランチは1,000円弱、夜は4,500円の焼鳥店であり、2回目以降は気軽に来店するリピーターが多い。

経営元は株式会社ウイル・インターナショナルで、同社では焼鳥の鶏味座としては、青山本店のほか恵比寿店、中目黒店、お台場のダイバーシティ東京プラザ店、軽井沢店、鶏味座屋台渋谷店を出店している。そのほか、ジンギスカンの「鐡玄(てつげん)」、ラーメン居酒屋の「框堂(かまちどう)」、「框家(かまちや)」などを展開している。関連会社として、デザインや商業施設プロデュースの株式会社インカスがあり、独特の雰囲気の店舗作りでも個性を発揮している。

鶏味座の旗艦店である青山本店は、以前は至近距離にあった「青山鶏味座」と「鶏味座茶屋」を集約し、旧鶏味座茶屋の場所で2012年4月にオープンした。1~3階が店舗で計30坪62席の規模がある。1階はカウンターとテーブル席、2~3階はすだれで仕切って半個室として使えるテーブル席とし、接待利用にも対応している。

ランチタイムは11時30分~16時までと長く取っており、「究極の親子丼」と銘打つ東京軍鶏の炭焼き親子丼、山椒親子丼、炭火焼鳥丼を各1,000円、地鶏の唐揚げとろろご飯900円の4品目を、それぞれお新香、鶏スープ付きで提供している。なかでも人気の高い炭焼き親子丼は、東京軍鶏を紀州備長炭で香ばしく焼き、カツオ、サバ、アゴなどで出汁を取った特製の割下で煮込み、卵2個でトロトロにとじ、さらに中央に卵黄を落とした濃厚な味わいが特徴である。新メニューの山椒親子丼は、東京軍鶏に和歌山産の大粒のサンショウ「ぶどう山椒」と、京野菜の九条ネギを加え、京風のあっさりしたつゆで仕上げた親子丼で、しっかりした甘味を持つ炭焼き親子丼との違いを明確にしている。また、ご飯は1人前210gで、女性客でもすんなりと食べ切れる量にしているが、ご飯300gの大盛りも同価格で提供しており、男性客には「追加料金なしで大盛りにもできます」と声をかけている。

夜のメニューより、(手前左から)串焼きのささみ260円、せせり260円、ぼんじり290円、手羽先210円、レバー320円、(右上)こだわりの絶品素揚げのとりから盛り合わせ1,480円、(左上)東京軍鶏の炭焼き親子丼1,280円

3種の鶏肉を使い分け、シンプルな料理にも専門性を出す

夜のメインは焼鳥で、朝締めの東京軍鶏、大山地鶏を炭火でていねいに焼き上げる。さらに、各テーブルは囲炉裏風になっており、客が自分で骨付き鶏肉などを炭火で焼く囲炉裏焼きも楽しめる。また、一度食べるとファンになる客が多いのが「絶品素揚げ」で、皮はバリッとし、中はジューシーな独特の食感を持つ。衣をつけずに揚げるので油っぽくなく、味付けも揚げた後に塩をふるだけというシンプルなメニューだが、さっぱりと食べられるので、シニア層にも好評を得ている。素揚げ用には、揚げても固くなり過ぎないように、ひな鶏の肉を使用している。

炭焼き親子丼、山椒親子丼は、夜も各1,280円で提供しており、締めのメニューとして1人前を数人でシェアして味わっていく客が多い。また、夜も親子丼を目当てに食事目的で来店する客もいるほか、まず親子丼を食べてから、焼鳥をオーダーする若い客もおり、それぞれのスタイルで利用している。

昼、夜ともに約70人が来店し、30~40代を中心に、20代後半~50代まで幅広く集客している。また、焼鳥店でありながら女性客の比率が高く、ランチは約6割、夜も約5割を占めている。「焼鳥は1本210円~と、やや高めなのですが、丸鶏を仕入れて店内で捌いていますし、提供する順番やタイミングもお客様の希望を聞きながらきめ細かく対応し、サービス面でも満足していただけるように努めています」と萩野氏は述べる。

同店が隠れ家的な焼鳥店として地元のリピーターに支持されている要因は、以下のようになるだろう。

1朝締めの東京軍鶏、大山地鶏を、紀州備長炭で焼く質の高い焼鳥で専門性を出している。
2素材や味付けにこだわった「究極の親子丼」が、ランチの主力商品および夜の締めの一品として人気を得ている。
3路地にある民家風の店舗が、隠れ家のような面白さや落ち着ける空間を提供している。

昨年4月にオープンしたダイバーシティ東京プラザ店をはじめ、最近は大型商業施設からの出店依頼も少なくない。今年5月頃には、横浜の港北ニュータウンのショピングセンター内への出店を予定している。

住所
東京都港区南青山3-12-4
TEL
03-5770-5039
営業時間
月~金:11:30~16:00、18:00~23:30(L.O.22:30)、
土日祝:11:30~16:00、17:00~22:30(L.O.21:30)
定休日
無休