思い入れのある小松菜が結ぶ、生産者とシェフのおいしい縁
西明石駅に近い神戸市の西端で、祖父の代から農業を営む池上義貴氏。各種葉物野菜の大半を有機栽培で生産し、その味の良さに注目が集まっている。
「おいしくするために大事なのは土。ある時から土の中の微生物に意識を向けて、環境を整えたら、味が一層よくなりました」と話す池上氏。2000年頃から新たに導入したのが、土中に炭を埋設する電子技法だ。畑の定点に直径・深さともに約1メートルの穴を掘り、そこに粉末状の炭を大量に入れてから水と混ぜ合わせ、乾燥後に土を覆う。大掛かりな作業だが、「はじめは粉末状の炭を撒くところから試してみました。そうしたら結果が出たので、本格的に導入したんです」と、確かな手応えを感じている。電子技法の炭素埋設だけでなく、サンゴなどの自然由来の肥料も使用。石灰は土を固くするが、カルシウムからできているサンゴにはそれがないという。
また、池上氏は有機栽培の葉物野菜によくある、虫食いの軽減にも取り組む。土中のよい菌を残し、紛れ込んだ虫などを除去するスチーム農法を、蒸気消毒器を使って行っている。「これだと発芽率もよく、根だしもいい。栽培期間後半の虫対策にも効果が見られます。虫食いのない見た目の良さにもこだわりたいです」と話す。
そんな池上氏の野菜をひと口食べて、すぐに違いがわかったのが、“野菜の美食”で名を馳せる唐渡 泰シェフだ。「普通の栽培法ではないとすぐにわかりました。実は、毎朝小松菜のスムージーを飲んでいるため、小松菜には敏感だったんです。小松菜には特有のえぐみがありますから違いが明確に出ます。池上さんの小松菜には、鮮度、旨味、甘味のすべてがそろっていました」。
唐渡氏が池上氏の野菜と出合ったのは、今年4月に行った、姉妹店「リュミエール大阪KARATO」の一周年記念イベントだった。当日使う食材を探していた時に、ぐるなびの担当営業から紹介を受け、イベントではもちろんのこと、通常メニューにも積極的に取り入れることを決めたという。唐渡氏のレストランは、「ミシュランガイド関西」で5年連続星を獲得している。それほどの腕があっても、料理のクオリティを左右するのは素材だと断言する。「例えば小松菜を使ったデザートなら、加糖はせず、甘味は小松菜本来のもので感じてもらいたいので、いい素材が手に入らないことには始まりません」(唐渡氏)。池上氏の小松菜を使うようになってから味が安定し、そして小松菜のデザートは、ディナーの定番メニューとなった。
これまでも創意に富んだ料理を世に送り出してきた唐渡氏。すばらしい野菜との出合いが、また新たな一皿につながるに違いない。
兵庫県神戸市西区玉津町出合377-2
JR西明石駅から車で約10分の住宅街にあり、約900世帯が暮らす地域で、唯一専業農家を営んでいる。小型タイプを中心に約30棟のハウスを有し、小松菜などのほかにも、季節限定の空芯菜や菊菜など、有機栽培の葉物野菜を生産。
大阪府大阪市中央区東心斎橋1-19-15 UNAGIDANI-BLOCK3F
http://r.gnavi.co.jp/kb5y700/
繁華街のビルの3階に店を構えるフレンチレストラン。シックな雰囲気でまとめられ、オリジナルで発注したガラスオブジェの器で提供する料理もあるなど、細部にまでこだわりが。ヘルシーランチコースなど体に優しいメニューもある。
ぐるなびPRO厳選食材マーケット
http://pro.gnavi.co.jp/market/
2013年秋に開設。食材や生産者情報を探す飲食店と、こだわりを持つ生産者を直接つなげるサイト。カテゴリーから食材を探すことができ、購入や問い合わせのほか、サンプルの取り寄せ(一部商品)もできる。
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