2023/12/12 特集

テイクアウトが強い居酒屋がやっている3つの必勝ノウハウ

広島・呉にある「柑橘酒家 檸々」はテイクアウトニーズが落ち着いた今も、売上の15%(最大で25%)をテイクアウトが占める成功店舗。その陰には「晩酌セット」など使い勝手のいい商品開発と、ターゲットを明確にしたSNS戦略があった。

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「晩酌セット」が好評!“おうち飲み”&“おかずだけほしい”ニーズを獲得

2023年はここ数年のテイクアウトニーズが落ち着いて、飲食店の多くがイートインに力を入れるようになった。その一方で、今でもしっかりテイクアウトニーズを獲得して成功している店がある。その一つが、広島・呉駅から徒歩10分弱の場所にある「柑橘酒家 檸々(ねね)」だ。

柑橘酒家 檸々(広島・呉)
広島県呉市中通2-4-2 赤ビル1F
https://r.gnavi.co.jp/etec85kb0000/
広島・呉の繁華街の外れに2020年10月オープン。呉の名産である「とびしまレモン」のほか、かぼすやミカンなどの柑橘系食材を料理やドリンクに活用し他店と差別化。30~40代の女性を中心に集客しており、20坪弱で月商400万を売り上げる。

目次
・①使い勝手のいい商品を開発
・②SNSごとに戦略を変えて認知拡大に成功!
・③顧客満足度を高めるちょっとした工夫&気遣い
今後もテイクアウトに注力。イベントごとの商品も強化予定

使い勝手のいい商品を開発

オープンは、2020年10月。古いレンガ造りのビル1階の居抜き物件を使い、カウンターとテーブル席を備える全20席の居酒屋としてスタートした。コロナ禍でのオープンだったこともあり、「最初からテイクアウトは強化しようと考えていました」と語るのは料理人の夫・森田谷勇樹氏とともに店を切り盛りする晃子氏。

テイクアウトの商材は大きく4つ。「弁当」「オードブル」「晩酌セット」「ドリンク」だ。まず弁当は、近くに病院があるため、製薬会社の会議弁当のニーズが高いと考えて必須アイテムに据えた。また、大学や市役所などもあるのでランチ弁当のニーズも取り込むことも想定。会議弁当や花見などでの利用を狙って、名物の「油淋鶏」を入れた「檸々の満喫弁当」(1,500円・要予約)など少し単価の高い弁当を2種類用意するほか、日常使いで購入しやすい「鶏の唐揚げレモン油淋鶏丼」(630円)や「ジンジャーレモンポーク弁当」(840円)などもラインナップ。弁当は当初は10種類でスタートし、人気などを分析しながら少しずつ絞り、現在は8種類を販売している。「2~3種類しかないと選ぶ楽しさに欠けますし、『次はあれを食べよう』というリピートにもつながりにくい。テイクアウトのファンを作るために、バリエーションをつけました」と晃子氏は語る。

特に人気は「鶏の唐揚げレモン油淋鶏弁当」(1,000円)や「レモン油淋鶏丼」。この油淋鶏は、お酢の代わりにレモンを使うことで、さわやかな酸味を引き立てつつ、酸味に角が無いことから子どもでも食べやすい一品に仕上げている。「満喫弁当」も好評で、製薬会社などからまとまった発注があり、上限の50個を受注することも珍しくないという。

「鶏の唐揚げレモン油淋鶏弁当」(1,000円)。副菜は、自家製レモンマヨを和えたマカロニサラダ、オレンジ果汁を隠し味に使ったニンジンの粒マスタードのラペ、柑橘の果汁で漬けたピクルス

次に「オードブル」は、クリスマスや正月、花見や行楽シーズン向けに、売りの油淋鶏と6種類の惣菜を組み合わせた「お任せオードブルセット」(3,000円)などを用意。当日注文にも対応しているのが特徴で、ボリュームは1つで3~4人分。組み合わせは要望に応じて変更可能で、「家にお客様が来た日に買う」など特別な日の利用も獲得している。

「お任せオードブル」(3,000円)。メイン料理に必ず「油淋鶏」(写真右)を入れて全7種類。この日の惣菜は、「レンコンの唐揚げ」「ニンジンと粒マスタードのラぺ」「三色豆とひじきのサラダ」「アサリのうま煮とキャベツのアンチョビマヨ和え」「セロリの金平」「ピクルス」の6種

3つ目のテイクアウト商品が「晩酌セット」(5種類、各1,080円)。これは、おかずにもお酒のつまみにもなる3品をまとめたもので、開発には大きく2つの狙いがあるという。

1つ目の狙いは、“家でのむ”というニーズを獲得するため。コロナ禍で宴会はもちろん、気軽な一人飲みもしにくくなったことから、家での一人飲み需要が増加すると考えた。もう1つの狙いは、「弁当」と「オードブル」では取れないニーズ獲得のため。「弁当を買うと無条件にご飯がついてくるので、ご飯を炊いているご家庭にとっては不要です。かといって、オードブルだと単価も高く、記念日などで使うイメージもあり、購入の心理的なハードルが高いです。そうした“弁当でもオードブルでも取れない『おかずだけほしい』というニーズ”を取ろうと考えて開発しました」(晃子氏)。

「プリプリ鶏マヨ和え 晩酌セット」(1,080円)。副菜は、「エノキダケとトマトの塩ナムル」(右)と「ちくわとやまくらげのピリ辛中華炒め」(左)。容器は保温性が高いものを使用している

最後に、ドリンクについては、「檸々のレモンサワー」(450円)などのアルコール類のほか、ソフトドリンクも含めてテイクアウトが可能。店名のロゴをあしらったカップに入れて提供しており、「蜂蜜レモンジンジャー」(450円)の人気が高い。

テイクアウトで人気の「蜂蜜レモンジンジャー」(450円)は、自家製のはちみつレモンとジンジャーエールを合わせた一品。ややレモンの比率が高めで、さわやかな酸味が楽しめる

これ以外にも、「海老とアボカドのレモンクリームサラダ」(890円)や「Smokyポテサラ」(570円)、「ご飯」(並100円、大150円)といった単品の持ち帰りにも対応しており、オードブルや晩酌セットと組み合わせて購入する人が多いという。

テイクアウトの客単価は、1回で2個以上は買う人が多いこともあって、およそ2,000~3,000円で推移している。イートインでの客単価が、ランチ800円~1,000円で夜3,800~4,000円だということを考えると、テイクアウトが売上アップに貢献していることもうなずける。

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SNSごとに戦略を変えて認知拡大に成功!

テイクアウトメニューを店頭に置いている

「檸々」がテイクアウトで成功したポイントは商品開発だけではない。もう一つのポイントが効果的な情報発信だ。まず、店頭にテイクアウトメニューの看板を設置するなど、来店客や店の前を歩く人にアピールを行った。ただ、「イートインとテイクアウトはお客様の層が全く別」と晃子氏が語るように、テイクアウトのために車などを使って遠方から来店する人も多く、エリアも年齢層も幅広く、店頭販促だけでは発信力が足りない。そこで効果を発揮したのがSNSだった。

アカウントを持っているSNSは、Instagram、X(旧Twitter)、Facebookの3つ。Instagramは、イートインの客層を含む20~40代の女性向けのツールとして捉えており、きれいでおいしそうな写真を投稿するのはもちろん、「目にとまる時間を長くするために、あえて少し長めの起承転結の文章を入れています。平成初期に流行った曲や芸人、テレビなどのエンタメを絡めて少しクスッとできる小ネタを入れて30~40代に響くようにしています」(晃子氏)。

それに対して、Xはターゲットも戦略も全く異なる。呉市はゲーム「艦隊コレクション」(艦コレ)の聖地と呼ばれ、イベントがあれば全国から2万人が集まる場所。「艦コレの公式SNSはXしかなく、プレイヤーはXを使って呉市の情報を集めたり店を探したりしているんじゃないかと予想しました。このゲームのプレイヤーは30~50代の男性なので、インスタとは対照的に映え要素は全く意識していません」(晃子氏)。ゲームに関する質問や、呉市の情報、日常の何気ない一コマを投稿することで、ゲームのファンが店に興味を持ってくれるようになり、呉市を訪れた際にテイクアウトやイートインで利用するようになったという。

Facebookは、Instagramと同期させて同じ内容を発信するほか、「呉って『いいね!』」という2万6千人のローカルコミュニティーにも投稿。ここには毎日5~8件の呉市の情報が更新されており、かなりアクティブで代謝のいい状態。オープン時からさまざまな情報を発信することで、地元シニア層などを中心に「檸々を応援したい」というフォロワーが増えて、テイクアウトの利用にもつながっているという。「呉への地域貢献のため、地元のミカン農家さんからみかんをもらってジュースを作っていたのですが、SDGsの取り組みとして『店にペットボトルを持ってきてくれたらそのジュースを配ります』という企画をFacebookで発信するなどして、認知度が上がったと感じています」(晃子氏)。

SNSは、20~40代女性をターゲットにInstagram、男性のゲームプレイヤーをターゲットにX、呉市の地元住民をターゲットにFacebookを活用し、それぞれテイクアウトなどの利用につなげている

【「柑橘酒家檸々」SNSアカウント】
Instagram
https://www.instagram.com/nene_kankitsu/
X
https://twitter.com/nene_kankitsu
Facebook
https://www.facebook.com/nenekankitsu/

顧客満足度を高めるちょっとした工夫&気遣い

こうした商品開発&情報発信でテイクアウトの認知度と売上を高めていった「檸々」。テイクアウト商品の販売に関して意識していることはあるのだろうか。

まず、「晩酌セット」や「オードブル」に入れる料理の組み合わせ、セレクトについて。「鶏まよ和えがメインの場合は、味のベースが近いマカロニサラダは選ばないなど、色味や味がかぶらないように気を付けています。お客様は30~40代の女性が中心なので、テイクアウト商品も写真を撮ってSNSにアップするはずだと考えています。過度な映えは必要ないと思いますが、色味のバランスや盛り付けの美しさは情報拡散に欠かせないと考えています」(晃子氏)。また、生もの以外に、「ふろ吹き大根の唐揚げ」「チーズ豆腐」など、時間が立つと劣化して本来食べてほしい状態とは程遠い状態になってしまう料理は、温め直してもクオリティーが下がるので、リクエストがあってもテイクアウト商品には入れていない。

さらに、弁当に巻く帯や、「晩酌セット」に付けているコースターなど、同封するあらゆるアイテムに店のロゴをデザインしているのもポイント。SNSなどで写真がアップされたときに、ロゴが少しでも入っていればそれだけで印象に残り、自然と店の認知度アップにつながるという仕組みだ。

加えて、購入者が「檸々」で働く人の温もりを感じられるような取り組みも行っている。オープン当初はテイクアウト商品を購入してくれた全ての人に、晃子氏やスタッフが感謝のメッセージをマスクに書いて渡していた。今もクリスマス限定商品など、一部の商品については手書きのメッセージカードを同封するなどしており、これがファンを作り、イートイン利用にもつながっている。

テイクアウト商品には、持ち帰りメニュー表やランチのメニュー表などを同梱。「晩酌セット」にはお酒を一緒に飲んでもらいたいという思いからコースターを付けており、これらのアイテムには晃子氏がデザインしたロゴをあしらっているのもポイント

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今後もテイクアウトに注力。イベントごとの商品も強化予定

現状、テイクアウトの売上比率は全体の15%で、イベントなどを行うと25%にまで上がる月もある。「コロナ禍が収まったらやめようと思っていましたが、引き続きニーズが高いのでこれからも続けたい」(晃子氏)と考えている。

テイクアウトを続けるメリットは売上だけではない。初めて来た人が入ろうかどうしようか迷って、「とりあえずテイクアウトでお試し」というパターンも多い。店の味を知ってもらって次はイートインという良いサイクルが生まれている。

また、イートインとは別の客層に知ってもらうことで、結果的にイートインの客層も広がっており、客層の幅の広さは自店で開発したポン酢のEC販売にも好影響をもたらしている。

テイクアウトが軌道にのったポイントを聞くと、「SNSの発信」とともに、試金石となったイベントの話もしてくれた。「コロナ禍で、飲食店には補助金が出ましたが、酒屋さんにはほとんどありませんでした。そこで、お世話になっている酒屋さんに恩返しがしたいと、コラボで『酒家めし』というイベントを何回か行ったんです」(晃子氏)。酒屋は飲食店や小売店との取り引きがメインで、消費者が利用するケースは少ない。そこで、一般の人にも酒屋を利用してもらうために、酒屋で1,000円以上の買い物をしたら「檸々」のテイクアウト商品を20%オフで販売するという企画を行ったのだ。これは、「檸々」にとってはほとんど利益にならない企画だったが、「檸々」がテイクアウト販売を行っていることを知ってもらい、「酒屋とともに『檸々』も応援したい」というファンの獲得にもつながったという。

「テイクアウトと向き合った1年半でした」と晃子氏。今後は、クリスマスや年末年始、バレンタインデー、お花見など、季節ごとのイベントに合わせた商品を打ち出して行きたいと考えており、節分にはレモンマヨを入れた「恵方巻」、花見の時期は桜の花をあしらった季節限定のドリンクを販売予定。「ニーズが高まる時期は、定休日返上でもテイクアウトに注力していきたい」(晃子氏)と考えている。

取締役 森田谷晃子氏
コロナ禍でそれまでの仕事が激減したことから、「定年後の夢」として温めていた飲食店経営に夫の森田谷勇樹氏とチャレンジ。自身の出身地である呉で出店し、デザインの勉強をした経験を生かし、販促物の制作やSNS販促に尽力してる。

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