2015/12/21 繁盛の法則

昭和30年代の懐かしさと、低価格が魅力の大衆居酒屋とは

路地裏で健闘する「開運横町 東日本橋店」(東京・東日本橋)に学ぶ-昭和30年代がテーマの昔懐かしい居酒屋でやきとり、おでんなどを手頃な価格で提供。サラリーマンの憩いの場となっている。

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開運横町 東日本橋店

Key Point

  1. 雑穀入りのヘルシーなお粥を開発
  2. 時間帯ごとのニーズに合ったセットを提供
  3. 酒類を充実させパーティ利用を誘引

1階は立ち飲み、2階は着席。幅広い利用動機に対応

古くからの問屋街であり、ビジネス街でもある東日本橋の路地にある「開運横町東日本橋店」は、昭和30年代をテーマとする昔懐かしい雰囲気の居酒屋である。夜ともなると、人通りの少ない路地にある同店の一角だけが明るく、ワイワイガヤガヤと会話や笑い声が響き、サラリーマンの憩いの場となっている。

店舗規模は1、2階計20坪で、1階はカウンターとドラム缶を使ったテーブルでの立ち飲みで約25席、2階はビールケースの上に天板を載せた簡易なテーブル席8卓32席を設けている。

やきとり、おでん、揚げもの、もつ煮込み、サラダなど、居酒屋の王道たるフードメニュー約50品目140~600円を揃え、うち40品目が250~300円という手頃な価格帯で提供されている。炭火でこんがりと焼き上げる串もの以外は、家庭料理の延長的な、温もり感のある手作り料理を特徴とする。

経営元は株式会社ダビンチ・ワールドで、2005年5月オープンの同店のほか、同年7月オープンの「開運横町内神田店」、2006年7月オープンの池袋のアメリカンバー「TRUSS(トラス)」の計3店舗を経営している。いずれも、都心部で新たな形の立ち飲み業態が増え始めた頃の出店である。今では同店でも、2階席がまだ空いていても「立って飲みたい」とあえて1階を選ぶお客もいるほど、立ち飲みのスタイルが定着してきている。

「開運横町は、昭和30年代の路地裏の雰囲気を出した、現在、働き盛りのサラリーマンの方たちが子供の頃に見た原風景のような店舗です」と、創業当初から同店に勤務する五月女誠(そうとめまこと)店長は語る。ビール会社の古いポスターや、足踏みミシンなどの調度品に加え、BGMも最新の曲ではなく、昭和30年代以降の、やや古めの曲を流している。子供の頃、あるいは青春時代によく聞いた曲が流れてくると、お客も一緒に歌い出す光景もしばしば見られる。

シンプルで懐かしい、手作り料理の提供に徹している。写真は手前から、ボリューム感のある「ナポリタン」(300円)、「ポテトサラダ」(250円)、「もつ煮込み」(380円)

お通しの提供をなくし、好みの料理の注文を促進

フードメニューに関しても、流行の食材や料理をスポット的に入れることはあっても、トレンドを追うことはせず、懐かしい味をモットーとする。例えば、人気商品のナポリタン(300円)は、柔らかめに茹でて油をまぶしておいたスパゲティを、ケチャップ、タマネギのスライス、魚肉ソーセージの輪切りとともに炒めて提供する。先にケチャップを火にかけて酸味を飛ばすなどのひと工夫と、直径15センチほどの皿に山盛りに盛るボリュームも魅力となっている。「ポテトサラダ」(250円)も、小皿にこんもりと盛られ、リピーターの中には「量は少なめで」とリクエストする人もいるほどだ。

客単価は、平均すると1800円前後だが、毎日立ち寄る常連客は1000円強、滞席時間が長く、注文品目数も多いお客の場合は2000円台後半になり、フードとドリンクの売上げ比は6対4となっている。また、居酒屋業態の慣例であるお通しを廃しているのも特徴で、それよりもお客の好みの1品をオーダーしてもらったほうがいいという方針をとっている。

ドリンクは、「生ビール」(400円~)や「ホッピー」(380円)もよく出るが、店名に因んでセレクトしている日本酒の「開運」(1合700円)、「七笑」(同550円)や、焼酎、ハイボール、果実酒なども含め、まんべんなく出ている。

客層は、20~60代の幅広い年齢層のサラリーマンが中心だが、女性も約3割を占め、同店の開放的な雰囲気により、女性の1人客も珍しくない。近くのIT企業に勤める外国人の常連客も多く、浅草や秋葉原に近いことから、アジア各国からの観光客の来店も増加傾向にある。

同店が路地裏立地の個性派店として幅広く支持されている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 立ち飲みとテーブル席を用意し、気軽な来店を誘引している。
  2. フードは1品250~300円を中心価格とし、お通しをなくして、好みの料理を注文しやすくしている。
  3. 昭和30年代をテーマに、流行は追わず、昔懐かしい雰囲気や商品の提供に徹している。

来店客の約7割を占めているのが週に数回来店する常連であり、つかず離れずの接客も重要な要素になっている。「大切なのは、お客様1人ひとりに対して興味、関心を持つことですね。1人で黙って静かに飲みたい方。ひと声、ふた声かけてほしい方など、いろいろいらっしゃいます。また、中にはメニューにない料理をリクエストされる方もいて、例えば、玉子焼きではなく目玉焼きを食べたいというご要望があれば、できる限り対応しています」という五月女氏。特にオープンキッチンと立ち飲み席の距離が近い1階では、スタッフが声をかけたり、さりげなくアイコンタクトをとるなど、細やかな気遣いを心がけている。

開運横町 東日本橋店
住所

東京都中央区東日本橋3-8-5
TEL 03-3639-1188
営業時間
16:00~23:50(土曜日・祝日~22:50)
定休日
日曜日