2016/02/17 繁盛の法則

大根料理と旬の野菜で常連客をつかむ創作和食店とは

地元で愛される「きんはる」(東京・代々木上原) に学ぶ-大根と旬の野菜を使ったヘルシーな創作和食店。特別に太い大根を約6時間煮た後、チーズをかけて焼いた「焼きふろふき大根」が看板メニューだ。

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きんはる

Key Point

  1. 大根や旬の野菜を使った創作料理を提供
  2. 樽生ビールや希少な日本酒で差別化
  3. 常連客を飽きさせない努力を継続

飲食業での独立開業を目指し、共同経営の創作和食店を出店

大根と旬の野菜を駆使したヘルシーな創作和食店として、東京・代々木上原の「きんはる」は、地元のリピーターをしっかりと獲得している。オープンは2011年4月22日で、田中健一氏、風間塁(るい)氏の2人のオーナーと、料理長の井出泰浩氏が中核となって運営している。以前、同物件で15年ほど和食店を経営していたオーナーが、店舗を売却することにしたため、同店でアルバイトをしていた風間氏と、風間氏とともに飲食店の開業を目指していた田中氏が買い取ることにした。また、料理人として30年以上の経験を持つ井出氏が、経営者が変わっても、引き続き料理長として勤務してくれることになった。店名は、たまたま3人とも春の生まれで、「黄金のように輝きたい」という思いを込めて、「きんはる」と名付けた。

田中氏と風間氏は、ともに1980年生まれ。以前は同じ大手着物販売チェーンに勤務し、それぞれ店長を務めていた。30歳までに2人で飲食店を出店しようという夢を持つようになり、2人とも28歳で着物販売チェーンを辞めると、風間氏は前述の「きんはる」の前身店舗でアルバイトをし、田中氏は築地場内の青果市場で働いていた。「前のオーナーが店舗を手放すというのは、降って湧いたような話だったのですが、それならばと買い取りました」と田中氏は説明する。15坪の店内は、カウンター席を新設し、壁を塗り直して、大根のイラストやおすすめメニューなどを書き込める大きな黒板を設置した。テーブルや椅子などはそのまま使うことにし、通常は20席、テーブルの配置を変えると30席まで増やせるようになっている。

特大サイズの大根を6時間かけて煮た後、味噌とチーズをかけて焼いた看板メニューの「焼きふろふき大根」(写真左/980円)、今年1月の「旬菜」に選んだソラマメを使った「空豆豆腐の揚げ出しうすくず餡」(同右/780円)、「蒸し鶏の自家製ポン酢がけ」(同奥/580円)

大根料理からスタートし、1年後に旬菜料理を導入

代々木上原駅周辺には、フレンチやイタリアンの人気店が多いが、和食店は少ない。そこで、前店舗の流れを汲む創作和食店としながらも、何かメインの食材を打ち出そうと考えた。井出料理長のアイデアで、1年を通じて生産量も価格も比較的安定しており、料理のアレンジもしやすいことから、大根に着目。特別に太い大根を使い、約6時間煮た後、チーズをかけてオーブンで焼いた「焼きふろふき大根」(980円)は、創業当初からの看板メニューとなっている。

一方、1年ほどしてリピーターが増えてくると、大根料理だけでは飽きてしまうのではないかと考え、季節の野菜をテーマに選んだ月替りの料理「旬菜」を、もうひとつの柱として加えた。これにより、毎月来店する常連客を確実に増やしている。

また、オープン2カ月後に、代々木上原駅高架下に飲食店街を含む商業施設「アコルデ代々木上原」が開業し、駅周辺の飲食店は大きな影響を受けた。「きんはる」も例外ではなく、客数が大幅に落ち込んだ。そこで、「この周辺で、何か1番を取ろう」と考え、営業時間の長さで勝負することにした。7時~17時までを田中氏が、17時から翌朝4時までを風間氏が担当。ランチとディナータイムは井出料理長が加わり、モーニングと深夜は1人体制で営業した。それを約1年続けたところ、ランチの売上がグッと上がり、その半年後にはディナーの売上も上向いていった。

現在、ランチタイムはサラダバーつきのメニュー8品目(900~1700円)を提供しており、客単価は1050円。中でも人気が高いのは「きんはるランチ」(1100円)で、天ぷら、だし巻き玉子、ふろふき大根がつき、ご飯は、大根、大根の葉、油揚げ、鶏肉、ゴボウなどが入った大根飯か、白飯のどちらかを選べる。平日は30~40人を集客しており、そのうち9割を女性が占めている。

夜は、季節の野菜などを使った創作料理のほか、酒類にも力を入れており、客単価は4000円。フードとドリンクの比率はほぼ半々となっている。酒類は、「八海山泉ビール」(880円)の樽生ビールを年間通じて扱うほか、各地の希少な蔵元の日本酒を吟味して選び、1合680円~というリーズナブルな価格で提供している。今年2月からは、ワインもすべて有機ワインに一新するなど、さらなる進化を続けており、金~日曜日は夜だけで2~3回転する日もあるほどの集客力をつけている。

同店が女性を中心とする地元の人に支持されている要因は、以下のようになるだろう。

  1. べテランの料理人が考案する、大根や旬の野菜の創作料理を提供している。
  2. 希少な樽生ビールや日本酒を揃え、酒類でも個性を打ち出している。
  3. 地元の常連客を飽きさせない努力を続けている。

2015年3月には、東京・向島に2号店の「串揚げきんはる」を出店。「私たちは店舗数をどんどん増やしたいという考えはないのですが、せっかくの和食なので、海外に出店してみたいですね。40歳くらいまでに実現したいと、2人で話しています」と、田中氏は今後の抱負を語っている。

きんはる
住所

東京都渋谷区上原1-34-7 和田ビル1F
TEL 03-3469-1410
営業時間
11:30~L.O.14:45(日祝12:00~)、18:00~L.O.22:45(土17:00~、日祝17:00~L.O.21:45)
定休日
年末年始