2016/03/11 繁盛の法則

本格的なナポリピッツァを小商圏で定着させる手法とは

地域密着型の「ピッツェリア チーロ 桜新町店」(東京・桜新町) に学ぶ-イタリア産のピッツァ用小麦粉を100%使うピッツァは計31品目。ワインもイタリア産で、ピッツァと相性のよい微発泡性が充実。

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ピッツェリア チーロ 桜新町店

Key Point

  1. 薪窯で焼く本格的なナポリピッツァを提供
  2. 客層や利用動機に合わせてセットを工夫
  3. 季節の素材を活かしたメニューを開発

31種類ものピッツァを提供する専門店

「PIZZERIA」と大きく書かれた看板と、店頭の赤い薪窯が目を引く「ピッツェリア チーロ 桜新町店」は、地元で本格的なナポリピッツァの定着に努めている。オープンは2014年10月20日。東京・世田谷の東急線桜新町駅から徒歩3~4分、庶民的な商店街である「サザエさん通り」に面している。

イタリア・カプート社製のピッツァ用小麦粉を100%使い、店内で仕込む生地でつくるピッツァは、トマトベース13品目490~1650円、モッツァレラベース13品目1150~1650円、揚げピッツァなどのスペシャルピッツァ5品目850~1500円の計31品目を揃えている。モッツァレラ、リコッタなどのチーズ各種、生ハム、サラミなど、主要な食材もイタリア産を使用し、本場の味さながらのピッツァを提供している。ピッツァ以外では、前菜、サラダ、デザートなどを揃えるが、パスタや肉・魚料理は提供せず、ピッツァ専門店のスタイルをとっている。

経営元は、東京・千代田区に本社を置く三創産業株式会社で、同社では不動産賃貸・管理業と、飲食店経営という、2つの事業を行っている。飲食部門は、1950年の「ホテルサンバンチョウ」というホテルの創業から始まった。1978年に同ホテルは閉鎖したが、現在はアメリカンレストランの「トニーローマ」、焼肉店の「巨牛荘」、「ドトールコーヒー」のFC店などを経営している。ピッツェリアは2007年から手がけており、現在は自社ブランド「チーロ」として、2010年9月オープンの東中野店、2015年9月オープンの下北沢店と合わせ、計3店舗を有する。いずれも住宅街が近い商業地区にあり、地域密着型で常連客づくりに努めている。

31品目揃えたピッツァの中でも、抜群の人気を誇る「マルゲリータ」(780円)は、トマトソース、モッツァレラチーズ、バジリコをのせたもので、オーダーの約3分の1を占める。前菜の盛り合せ「アンティパストミスト」(1,180円)は、数人で取り分けられるようにボリュームを持たせている。

客層や利用動機に合わせた柔軟な対応を打ち出す

桜新町店は、新しい飲食店に敏感な住民が多いことから、開業前の工事中のときから店頭にパンフレットを出しておいたところ、オープン日は満席が続き、テイクアウトでも100枚のピッツァを販売したほどだった。しばらくして落ち着いてくると、ランチタイムは女性が9割を占め、特に幼稚園のお迎え時間の前に数人で来店する若い主婦が多いことがわかった。そこで、女性グループ限定の「レディースランチセット」(1人1389円、注文は2人~)を打ち出した。サラダ、前菜、2人で1枚をシェアするピッツァ、デザートに加え、食前用と食後用にドリンク2杯がつく。時間が許す限りゆっくりとランチと会話を楽しんでいく女性のグループに好評で、連日コンスタントにオーダーがある。また子供用に、2分の1サイズのピッツァ、ミニサラダ、タコウインナー、揚げものを盛り合わせた「キッズプレート」(880円)も用意した。ランチの客単価は1400円で、平日は20~30人、土日は約60人が来店している。

夜は、前菜とワインを楽しみ、ピッツァで締めるという利用シーンを訴求している。ワインはイタリア産で、ピッツァと相性のよい微発泡性の品揃えを充実させている。同時に、お客からの希望が多かったハイボールをメニューに加えるなど、柔軟な姿勢を見せている。また、家族連れを中心とするリピーターが多く、年齢層が幅広いことから、3店共通の前菜に加え、旬の素材を使って季節感を出した同店独自のおすすめメニューの提供を開始した。ピッツァも、本来であればナポリのように1人1枚オーダーしてもらい、切らずに提供し、ナイフとフォークで食べてほしいところだが、数人でシェアする場合やお客からの希望があれば、あらかじめカットしてから提供する。夜の客単価は2300円で、アルコール類の売上は昼夜合わせて全体の約3割になる。夜だけで平日は20~30人、土日は40~50人を集客している。

同店がナポリピッツァ専門店として、地元での常連客を増やしている要因は、以下のようになるだろう。

  1. メインの素材はイタリア産を使い、薪窯で焼き上げる本格的なナポリピッツァを提供している。
  2. 客層や利用動機に合わせたセットメニューを工夫している。
  3. リピーターを飽きさせないように、季節の素材を活かしたおすすめメニューに力を入れている。

「チーロ」3店には現在、計8人のピッツァ職人が勤務しており、その1人である新桜町店の堀江康伸店長は、2010年にナポリのピッツェリアでの修業を経験した。翌2011年にまず東中野店に入り、桜新町店の出店時に同店に異動した。

「桜新町は小さな街で、商圏が限られていますから、常連客もできやすいですね。小さなお子さま連れからシニア層まで、客層は幅広いと思います。いつも来てくださるお客様に感謝の気持ちを込めて営業するのが、いちばん大事だと思います」と堀江氏は真摯に語っている。

ピッツェリア チーロ 桜新町店
住所

東京都世田谷区桜新町1-8-9 丸新ビル 1F
TEL 03-5450-0301
営業時間
11:30~15:00(L.O.14:30)、17:00~23:00(L.O.22:30)、土11:30~23:00(L.O.22:30)日祝11:30~22:30(L.O.22:00)
定休日
無休(年末年始のみ休業日あり)