2016/07/04 繁盛の法則

13坪27席の規模ながら夜だけで2~3回転する餃子バルとは

餃子とワインの「KITCHEN TACHIKICHI 渋谷本店」(東京・渋谷) に学ぶ-ニンニクを使わずにおいしさを追求した餃子をワインとともに楽しむ店として、昼は1日40~50人、夜は平均60~70人が来店する。

URLコピー

KITCHEN TACHIKICHI 渋谷本店

Key Point

  1. 素材の持ち味を活かした独自の餃子を開発
  2. 餃子に合うワインをセレクト
  3. 系列店の熟成肉レストランの商品を導入

豚肉の部位の選択と配合で旨みを出した餃子を開発

ニンニクに頼らずにおいしさを追求した餃子を、ワインとともに楽しむ東京・渋谷の「KITCHEN TACHIKICHI(キッチン タチキチ)渋谷本店」は、女性が1人でも気軽に立ち寄れる「餃子バル」の人気店である。

渋谷駅東口から徒歩3分ほどの、明治通り沿いにある1階7坪、地下6坪、計27席という小規模店でありながら、ランチタイムは1日40~50人、夜は平均60~70人、金曜日には100人近くが来店している。店内に入りきれなくなると、店頭に置いたワイン樽や小さいテーブルを囲み、立ち飲みで楽しんでいくお客も出るほどだ。

オープンは2009年12月9日。経営者である株式会社フードイズムの跡部美樹雄代表取締役は、ニンニクを使わずにおいしい餃子を作ろうと、試行錯誤を繰り返した。ニンニクが入ると画一的な味になりがちであることと、ビジネス街に出店し、ランチも営業するなら、午後の仕事や面会などに差し障りがなく、安心して食べてもらえる餃子にしたいという意図からだった。

特に工夫したのは、豚肉の部位の選定と配合である。現在は、山形産の豚肉を使用し、旨みが強いカシラ肉と、歯応えのある腕肉を粗めの挽肉にし、1.5対2の割合で配合している。カシラ肉は、脂肪の多い首の部分のトントロを含み、ジューシーな味わいに特徴がある。腕肉は、運動量が多い筋肉の部分なので、挽肉にしてもしっかりとした歯応えが残る。この2種の挽肉に、白菜、ニラ、ショウガを加えてあんをつくる。皮は、米粉を入れてモチモチ感を出し、現在は製麺業者にオリジナルレシピで製造してもらっている。餃子は1個45gと大きめに包み、そのボリューム感も魅力となっている。また、品質の安定と、将来的な多店舗展開を見据え、当初から特注成形機での機械包みとした。

「手包みと機械包みでは仕上がり具合が違ってきます。そのため、機械で包んでもおいしい餃子に仕上げるために工夫し、さらに年間通して安定するレシピを構築しました」と、杉本晃店長は説明する。

夜のメニューより、「立吉餃子」の焼き餃子(5個540円)、木綿豆腐、豚バラ肉、玉ネギを甘辛く煮た「豪快!肉豆腐」(590円)、辛さと酸味が特徴のスープに、カレー風味の餃子を入れた「トムヤムクンスープ餃子」(3個730円)

店舗改装、ワインの導入、弁当販売で軌道に乗せる

この独自の「立吉餃子」を武器にオープンした同店だったが、その味を知ってもらい、経営を軌道に乗せるまでは苦労の連続だった。当初は、鉄骨などがむき出しとなった男性的な内装で、女性には敬遠されがちだった。そこで、オープンから約2年後の2011年秋に、オフホワイトを基調にした内装に変更した。また、バル業態が注目され始めた頃だったので、ワインを取り入れ、ワインに合う料理を増やし、女性にも利用しやすい雰囲気やメニュー構成に変えていった。また、昼は餃子弁当や日替わり弁当を作って近隣のオフィスに販売に行き、店の存在や味を知ってもらうように努めた。弁当は一時、1日200食を販売するまでになり、その効果で次第に来店してくれる人が増えていった。現在はイートインが中心だが、弁当も店頭で注文を受けた場合には対応している。

昼は、基本の立吉餃子の焼き餃子、水餃子、揚げ餃子を、ライスや麺類と組み合わせたセットメニューを提供している。客単価は770円で、30代前後のサラリーマンやOLを中心に集客し、男性が6割を占める。夜は、立吉餃子のほか、「ガーリック餃子」(3個420円)、「プリプリ芝海老餃子」(3個500円)などの変わり種餃子や、ワインを意識した料理約40品目(320~1980円)を揃えている。さらに、同社が「旬熟成」の店名で2店舗出店している熟成肉レストランの商品の中から、同店でもソーセージやハンバーグ、パテなどを提供。ワインは、同店の餃子に合うタイプを優先して選び、赤5種、白6種、スパークリング4種を揃える。赤と白は全種、スパークリング1種はグラスでも提供し、気軽なオーダーにつなげている。夜の客単価は2000円で、フードとドリンクの比率は約半々。夜は女性客が6割を占めるようになってきた。

同店が餃子バルという業態を徐々に確立してきた要因は、以下のようになるだろう。

  1. ニンニクを使わず、素材のおいしさをストレートに出した独自の餃子を開発している。
  2. 餃子に合うワインをセレクトし、餃子バルとしての認知度を高めている。
  3. 系列店の熟成肉業態の商品を取り入れ、夜のメニューを充実させている。

ここ数年は熟成肉業態に注力してきた同社だが、今後は餃子店の多店舗展開にも取り組む考えで、2016年3月24日に、東京・表参道のビルの地階に18坪36席の青山店をオープンした。ワイン以外は渋谷本店と同じメニュー構成で、着々とリピーターを増やしている。「まずは都内を中心に、直営およびフランチャイズで50店舗体制を目指したい」と、杉本氏は意欲的に語っている。

KITCHEN TACHIKICHI 渋谷本店
住所

東京都渋谷区渋谷3-18-8 よしむらビル1F
TEL 03-3486-1269
営業時間
11:30~15:00、17:00~翌1:00(L.O. 翌0:30)
定休日
日曜日(月曜日が祝日の場合は日曜日営業、月休)