トライ&エラーを繰り返しながら、スタッフ全員で成長したい
「子供時代を過ごした戸田に“いい店”を作りたかった」。その思いから、埼玉・戸田エリアに幅広い業態を展開する株式会社ロット。代表取締役の田子英城氏の視線の先には、「埼玉県ナンバーワンのレストランチェーン」がある。2001年の会社設立から現在までに15店舗を出店。この業界に入ったきっかけから、今までの道のりを伺った。
――大学を卒業したら、すぐに起業しようと子供のころから決めていたそうですね。
母子家庭で育って、母親が苦労している姿をずっと近くで見ていたので、子供のころからとにかく早く、自分でお金を稼げるようになりたいと思っていました。それに、高校生のときから様々なアルバイトを経験するなかで、人に使われることがあまり好きになれなかったのと、サラリーマンには向いていないことを自分自身で感じていたので、起業して経営者になるしか道はないと漠然と考えていました。
また、高校に入ってすぐに始めたコンビニエンスストアのアルバイトでは、一緒に働くメンバーとともに、「どうしたらお店の売上が上がるか」と、試行錯誤しながら店作りをする楽しさを実感することができました。コンビニの場合、どの店舗でも扱っている商品は基本的に同じなので、他の店に対して差別化を図るポイントは、接客ぐらいしかないのです。そこで、とにかくお客様と積極的にコミュニケーション取るなど、接客サービスを強化しました。また、お世話になったそのコンビニのオーナーからは、経営や店作りの基本を学ばせていただきました。それが、経営者になりたいという気持ちをさらに後押ししたのだと思います。そのオーナーの方とは、現在でもプライベートでお付き合いをさせていただいています。
その後、大学在学中に別のアルバイト先で現在の弊社の専務と出会いました。店を任せてもらい、2人である程度の利益も上げられるようになったころ、起業を真剣に考えるようになりました。
――なぜ、地元である埼玉・戸田で飲食ビジネスを展開しようと思ったのですか?
当初は飲食店ではなく、スポーツ施設や不動産業での起業も考えていたのですが、融資がうまく受けられなくて、代わりに飲食店経営に目を付けました。その理由は当時、戸田駅周辺には自分たちが行きたいと思える飲食店が、ほとんどなかったからです。友人たちと都内で遊んで、地元である戸田に帰ってくると、「なんか田舎くさいなあ」といつも思っていました。そこでおしゃれな店をオープンさせることで、戸田を少しでも“イケてる”街にしたいと思ったのです。また、カフェを作ろうと決めたのは、敷居が高過ぎないから。戸田という場所で店舗を構えるのに、バーのような業態でおしゃれ過ぎると、かえってお客様が入らなくなってしまうと思いました。
店を立ち上げることを決めたら、自然と仲間が7、8人集まりました。みんな同じ思いを持っていた昔からの地元の仲間です。その後、間もなくコンセプトも決まりました。それは、「ほどよくおしゃれであること」「ワンコインで飲み食いできること」「どこにも負けない接客」の3つでした。
――その「Cafe& Dining SUN」が、御社の経営の基礎を作ったそうですね。
今でこそ15店舗を運営していますが、当時は飲食店の経営者としてはまったくの素人だったので、もちろん何のノウハウもなく、店の立ち上げには相当苦労しました。特に大変だったのは、内装工事の業者が手配できずに自分たちだけで工事を行ったことですね。ホームセンターに行って、様々な部材を調達するところからのスタートでした。正直、今思うと、無謀にもほどがありますが、右も左もわかっていなかった当時だからこそできたのでしょうね。
ただ、あの時の「夢中になる気持ち」は、その後の店舗経営においても、大きな原点になりました。やはり自分たちで必死に店を作れば、それだけ店に対しての愛情も深まりますし、何より身をもってビジネスの仕組みを知ることができます。3店舗目の立ち上げまで、内装工事は自分たちで行っていたのですが、その次の店舗を立ち上げる際に、初めて外部の設計事務所にお願いしました。もちろん、打ち合わせのなかでこちらの想いはしっかり伝えたのですが、できあがった店舗を見た時、少しズレを感じました。また、椅子やテーブルなどの価格にも納得がいかず、だったら飲食店の内装を請け負う会社を自分たちで作ればいいと考え、ディライト株式会社を立ち上げました。こういった反省を常に次に活かしながら、成功につなげていった10年間だったように思います。
夢中という意味では、昔も今もまったく変わらないですね。例えば、新たに焼鳥業態を立ち上げる場合には、徹底的に焼鳥について学びます。数カ月間にわたって繁盛店を回り、焼鳥以外は食べないくらいの覚悟です。特に弊社が経営する店舗はすべて違うブランドなので、店長を含め、メンバーには徹底的に勉強するように伝えています。
――会社経営をしていくうえで、ご自身が一番重要だと思われていることは何ですか?
人材ですね。どんなによい業態や立地、メニューがあったとしても、そこで働く人がイキイキとしていなければ、その店舗を継続して運営していくことは難しい。それくらい人材は重要だと思います。そのため、弊社では人材教育に大きな力を注いでいます。そして、社内研修機関として「ロット大学」を設け、一般的なビジネスの基礎を一から学べるようにしました。PCのスキルアップや会社のビジョンを共有する講座など、内容は実に様々です。基本的には社員全員に受講してもらい、単位を取得すると今度は講師として後輩の指導にもあたります。教える立場になると、さらに学ぶ意識も強くなると考えています。
もう一つ、人材育成という点で力を入れているのが、月に一度の社員面談です。すべての店舗の社員スタッフと、必ず直接話すようにし、店舗の状況やスタッフが日々考えていることを共有しています。と言うのも、店舗は常にスタッフにとっての成長の場でなければならないと考えているからです。現場で働くスタッフの成長がなければ、店舗の成長もありませんので、まず一人ひとりと向き合うことを大切にしています。ちなみに、全店舗で働くスタッフの顔写真をPCで共有できるようになっており、店舗に出向いた際に名前で呼べるようにしています。
――ここまで着実に成長していらっしゃいます。今後の目標について教えてください。
私たちが掲げる目標は、「埼玉県ナンバーワンのレストランチェーンの達成」です。2016年度までの中期計画では、30店舗の出店を具体的な目標としています。決して簡単な目標ではありませんが、2002年に最初の店舗を出店してからこれまでの10年間のように、たとえ失敗をしたとしても、次の成功につなげていくことができれば、必ずや達成できると信じています。
会社がスタートした時にも、私が30歳になる時には10店舗まで拡大したいという目標を掲げていました。その目標を達成するまでには本当にいろいろなことがありましたが、無事に達成し、次の目標にチャレンジできる今があります。これまで通り、挑戦できる幸せを噛み締めながら、日々トライ&エラーを繰り返し、これからもスタッフ全員で成長していきたいと思います。
Profile
たご ひでき
1978年
東京都板橋区生まれ
2001年
大学卒業後、学生時代をともにした仲間を中心に有限会社ロットを設立
2002年
1号店となる「Cafe&Dining SUN」を戸田公園駅前にオープン
2006年
有限会社ロットから株式会社ロットに組織を変更する
2007年
ディライト株式会社を設立
2008年
設立当初に掲げた目標「30歳で10店舗出店」を達成する
Company Data
会 社 名
株式会社ロット
所 在 地
埼玉県戸田市新曽1974-1 VINOⅢ2F
店 舗 名
「CAFE&Dining SUN」「お好み・鉄板焼き じゅうじゅう」「居炉居炉」「鮮魚浜焼 田子商店」「浜焼酒場 磯野くん」「鮮魚と炉ばた 魚吉鳥吉」「魚貝と串焼き 魚吉鳥吉」「RISA! RISA!」「バンザイミート!」「こばとん屋」「和食居酒屋 ミツル」「全力つけ麺 多万吉屋」「sozai食堂10」など