繁盛店の人気メニュー20選（前編）アイデア光るおつまみで満足度アップ！

人を呼び込む＆ファンを生むこだわりのポイントを紹介！

忘年会シーズンを迎えるにあたってメニューのブラッシュアップを検討したい飲食店も多いはず。人気店の名物や注文率が高いメニューには、見た目はもちろん、食材や調理法、盛り付け、提供方法などに、さまざまなアイデアや工夫が凝縮されているもの。そこで、今回は前編と後編の2回に分けて、20件の店にインタビューし、集客力や満足度を高めるメニューの「こだわりポイント」を取材。

前編は、アルコールに合うお通しやおつまみを10品ピックアップ。開発のストーリーから食材や調理法などのこだわり、実際の来店客の反応などを紹介する。

目次：お通し・おつまみ
１「贅沢雲丹プリン」博多天ぷら ながおか（福岡・今泉）
２「とり軍艦」冠地鶏と日本酒 鳥ツバキ 神戸三宮店（兵庫・神戸）
３「エビカニ合戦」魚学マニア スシンジュク（東京・新宿）
４「本物のうなぎパイ」STAND BY Mi（東京・新橋）
５「海老味噌豆腐とパルメジャーノ」舩橋洋品店（福岡・薬院大通）
６「名物 にゅ～ばんざい盛り」カフェ＆ネオ大衆new‐mon（東京・赤羽）
７「ナスのオムレツ フィレンツェ風」アルベリーニ（東京・神楽坂、飯田橋）
８「かけ流し一丁麻婆豆腐」ひねり蛇口ハイ 大衆酒泉テルマエ 所沢泉（埼玉・所沢）
９「四神合体ゴッドシュウマイ」ヤキトリボーイシュウマイガール 梅田店（大阪・東梅田）
10「ラムモッツァレラ春巻」春巻のニューヨーク（東京・立川）

【後編・サラダ、肉魚、ごはんもの、麺より10選 もチェック！】
繁盛店の人気メニュー20選（後編）アイデア料理で集客アップ！

１「贅沢雲丹プリン」（550円／税込、以下同）

博多天ぷら ながおか（福岡・今泉）

ウニとイクラを使った、かわいいお通し。“女性が気軽に行ける店”というコンセプトに合わせて開発したところ、来店した女性の多くが写真を撮影。SNSで拡散されて集客の呼び水になっている。

牛乳を使ってクリーミーに仕上げた茶わん蒸しの上にウニとイクラを盛り付け、しょうゆとみりんで味を調えただしを注いだ一品。枡にクラッシュアイスを入れ、ショットグラスで提供している。最初の一品として、さっぱり食べてほしいという思いから、全体的にやさしい味付け。アルコールにも合うが、これから提供する料理への期待感を高める狙いの方が強いという。また、ウニが苦手な人のために、カニととびこを使った「贅沢蟹プリン」（550円）も用意している。

原価率50～80％（日によって100％を超えることも）というお得感もさることながら、注目したいのは計算されたビジュアルとネーミングだ。だしと茶わん蒸しできれいな2層を作り、枡やグラスを効果的に使って上品でかわいらしい見た目に。茶わん蒸しをプリンと表現することで、見た目とメニュー名がセットで印象に残りやすい。さらに、枡に店名ロゴを入れることで、SNSを通して店の認知度を上げることにも成功している。

２「とり軍艦盛り合わせ（とり白子、肝、卵黄醤油漬け）」（1,320円）

冠地鶏と日本酒 鳥ツバキ 神戸三宮店（兵庫県・神戸）

大分の「冠地鶏（かんむりじどり）」は、うま味の強さと身のやわらかさが特徴。新鮮な冠地鶏を店の看板食材とし、全国各地の地酒とともに味わう多彩な料理を展開しているが、酒のつまみにも、またメインとしても注文されるような面白いメニューはできないか、と考えたなかで店長が発案したのが「とり軍艦」だ。今では高注文率の名物として定着している。

軍艦には、シャリの代わりに細かくブロック状にカットし、だしで味付けをした冠地鶏のムネ肉が入っている。盛り合わせとして、“とり”を前面に押し出した「とり軍艦（とり白子、肝、卵黄醤油漬け）」と、海鮮ととりのコラボが味わい深い「海鮮とり軍艦（ウニ、いくら、かに身）」の2種を用意。トッピングはこの6種で、それぞれアラカルトで注文が可能だ。盛り合わせは少しお得なセット価格だが、オーダーとしては、好きな具材の軍艦をアラカルトで注文されるほうが多い。

味もさることながらビジュアルがとても良い。上にのっている”自家製の泡しょうゆ”が効果抜群。しょうゆの小鉢を使わずにそのまま箸で取り、一口で食べてもらうためのアイデアだったが、同時に見映えもアップしたという。

３「エビカニ合戦」（989円）

魚学マニア　スシンジュク（東京・新宿）

そのまま食べてよし、混ぜてよし、細巻きにのせてよし。店名にカタカナを使用したカジュアルなすし居酒屋“カタカナ寿司”のトレンドをけん引する株式会社スパイスワークスが生んだ名物。拡散されやすいビジュアルから集客の目的になる一品で、新規客は必ず注文する。しかし、驚くべきはリピーターの注文率も90％を超えるということ。「また食べたい」「一緒に来た人に食べさせたい」と思わせる背景には“おいしさへの追及心”がある。

カニの甲羅に、白だしを和えたズワイガニと赤エビの身、イクラ、卵黄（うずら）を入れ、土台の細巻き（6貫）にはカニみそとゆず皮を混ぜて、コクとさわやかな風味を加えている。グルタミン酸やイノシン酸など、うま味成分のトータルバランスや、食べる人の咀嚼（そしゃく）回数、細巻きの太さやのりの歯切れのよさなどを計算し、おいしく、食べやすく、食べ飽きないメニューになるように設計している。

店の看板だけあって、最初に注文する人がほとんどで、カニやイクラをそのまま酒のあてにしたり、細巻きと一緒に創作寿司として食べたりと、楽しみ方は人それぞれだ。

４「本物のうなぎパイ」（2個275円）

STAND BY Mi（東京・新橋）

フレンチの名店出身のシェフが、お土産にもらった「うなぎパイ」を見て、ふと「うなぎのかば焼きをパイにのっけたらどうだろう」というユニークな発想から生まれた一品。一口サイズのパイの上に、かば焼きのタレとマヨネーズで作ったクリーム、小さくカットしたうなぎのかば焼きをのせ、上から山椒をかけて木の芽をあしらっている。

口に入れると最初にうなぎのタレの甘じょっぱさが広がり、次にパイの甘味、マヨネーズの酸味、そして、ほのかに山椒のぴりっとしたアクセントも加わる。かば焼きは、バーナーで両面をあぶってパリッと仕上げているのもポイント。

見た目にもこだわり、かば焼きはパイの両サイドが空くようなサイズにして、つなぎのクリームが少しだけ顔を出すように調整。この「うなぎパイ」を含め、シェフのアイデアあふれる「ひと口おつまみ 」（各275円）を10種類ラインナップしており、気軽に最初のおつまみとしてオーダーする人が多く、「おすすめ三種盛り」やコースにも盛り込むことで、ファンを増やしている。

５「海老味噌豆腐とパルメジャーノ」（580円）

舩橋洋品店（福岡・薬院大通）

エビみそ風味の卵豆腐に、パルメジャーノがたっぷり。見た目は完全に洋風だが、実は“日本酒のおつまみ”として考案した一品。とある京都の蕎麦店で出合った感動のかにみそ豆腐からインスピレーションを受け、すぐに試作に取りかかり、エビ風味でオリジナルメニューを開発したという。昨年好評だったことから、秋以降の寒い季節の限定メニューとして、熱燗とともに今年も再登場する。

エビから取っただし汁に「エビみそ」もプラスし、卵とあわせて蒸しあげ、冷やす。提供時、表面にエビみそを塗りバーナーで炙って香りをたたせ、エビ感を強調するのがポイント。そこへパルメジャーノをたっぷり削りかける。日本酒との組み合わせを意識してコクと味のバランスを調整しながら削ったところ、このチーズの量に。結果、ビジュアルのインパクトにもつながったという。

名物が「土鍋ご飯」などラインナップは和食寄りなのだが、洋風のビジュアルの料理を多くそろえている。イタリアンの洋と和が融合した季節ごとに替わる創作料理の華やかさと味わいで、人気を呼んでいる。

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６「にゅ～ばんざい盛り」（1人前1,089円、注文は2人前～）

カフェ＆ネオ大衆new‐mon（東京・赤羽）

オーダー率90％超のおばんざい盛り合わせ。かつて、店長が恋人と食の好みの違いが原因で別れてしまった経験をもとに、「男性も女性も満足できる名物を」と開発した。

写真奥から時計回りに「レアカツサンド」「黒豆マスカルポーネ」「ガリしそ〆サバ」「アプリコットマト」「ポテトサラダ」「牛タンのデミグラス煮込み　バゲット付き」、中央が「季節の野菜の揚げ浸し」（写真は2人分）。店の前が「七福神広場」だったことから7種類にしたという。「レアカツサンド」はサーロインの芯だけを使うほか、「アプリコットマト」は湯むきしたトマトをアルコールを飛ばした杏露酒に漬けて、トマトの酸味とあんずの甘味が感じられる一品に。「ポテトサラダ」は自家製のおでんだしを隠し味に使っていぶりがっこ、とびっこ、カレー風味のフライドオニオンをのせて味や食感にアクセントを付けるなど、一品一品こだわったものばかり。

提供時には食べる順番として、まず「ガリしそ〆サバ」で口をさっぱりとさせ、次に「レカツサンド」を温かいうちに、そして「黒豆マスカルポーネ」はデザート感覚で最後に食べるのがおすすめと伝えている。

７「ナスのオムレツ フィレンツェ風」（1,210円）

アルベリーニ（Alberini）（東京・神楽坂、飯田橋）

鍋の上を滑らせて卵をクルリと巻き込みながら焼く、”魅せる”オムレツ。オープン当時から人気の名物料理であるが、このSNS映えする形と彩りで、近年さらに注目度が増したメニューといえる。店の看板としてコース料理に含めて提供。アラカルトでも注文可だ。

ルーツはイタリア・フィレンツェにあるトラットリアの「アーティチョークのオムレツ」。中村シェフがイタリア修業中に出合った一品で、具材のアーティチョークは、日本で入手しやすく油との相性もいいナスでアレンジし、見よう見まねで試作を重ねて完成したという。秋にはキノコなど、季節の素材を使ったスペシャルオムレツもオンメニューする。

食材は、卵・ナス・塩・コショウ・オリーブオイル、仕上げにイタリアンパセリ、レモンとパルミジャーノ。まずナスを5分ほどじっくり揚げ焼きし、とろっとした食感に仕上げる。次にナスの周りに卵を流し入れ、ナスを軸に菜箸でおさえつつ、火が入っていく卵を、鍋の側面を利用しながらくるくると巻きながら焼く。コツは、卵は短時間の火入れでひだを作りつつ半熟フワフワに仕上げることと、フライパンではなく小鍋の側面を利用して高さを出すこと。また、最後に絞るレモンもポイントで、味のまとまりを引き立てる重要なエッセンスだ。

８「かけ流し一丁麻婆豆腐」（877円）

ひねり蛇口ハイ 大衆酒泉テルマエ 所沢泉（埼玉・所沢）

おぼろ豆腐を丸々一丁使い、トッピングに食感の異なる食材を山盛りにした、インパクトある麻婆豆腐。スプーンで上から崩して、山椒が効いた自家製麻辣（マーラー）ダレと一緒に食べるがっつりタイプ。アルコールが進むおつまみの一つとして人気がある。

店の５大名物を開発したときに「麻婆豆腐」が候補にあがり、自由にアレンジしてみたのがきっかけ。テルマエ（温泉）という店のコンセプトにかけて付けられた“かけ流し”というメニュー名も印象付けに効果的だ。

かわいらしい器を起用しているが、実はオーブンにかけるために耐熱性を使用。おぼろ豆腐を丸ごと入れ、麻辣ダレをかけるタイミングに、豆腐全体を串で刺して穴を開ける。その後オーブンにかけることで、味を染みやすくするのがポイント。熱々の豆腐にゴロゴロとした味付けひき肉と薄くスライスし揚げたサツマイモ、小ネギ、山椒、調合ラー油、糸唐辛子をトッピング。彩りと食感をバランスよく構成している。

９「四神合体ゴッドシュウマイ」（850円）

ヤキトリボーイシュウマイガール 梅田店（大阪・東梅田）

店名の通り、焼き鳥と焼売を2大看板としているが、その中からぜいたくな具材が大集合している焼売セットを紹介する。せいろのふたをあけると、そこには「海老焼売」「うに焼売」「すき焼き焼売」、そして「カニ焼売」の4種が。珍しい具材が多いため、まずどんなものか見ていたいとお試しでこの焼売セットが注文され、食べてみて気に入った焼売が追加注文として入るケースが多いという。

豪華で彩りもよく楽しいメニューだが、見た目だけではない。種類ごとに仕込みを変えており、その味わい深いクオリティーの高さが人気の理由。「海老焼売」はベースにエビの風味を練り込ませ、「すき焼き焼売」には鴨肉を練り込んで、上から牛フレークをかける。そして専用の卵黄しょうゆのタレでいただくスタイル。「うに焼売」のベースにはウニソースを、そして「カニ焼売」にはカニみそとカニフレークが入っているというこだわりようだ。せいろで蒸したアツアツの状態で提供している。

20～30代の利用が多いなか、メニュー開発の中心人物は若手の店長。客層に近い目線から考案された料理がニーズに合致している点もヒットにつながるポイントなのだろう。

10「ラムモッツァレラ春巻／秋のきのこクリーム春巻～トリュフ風味～」（352円／418円）

春巻のニューヨーク（東京・立川）

「春巻は、おつまみとしてのポテンシャルが相当高い」、そう思わせるメニュー。数ある創作春巻の中でも高い人気を誇るのが、独特の乳臭さがあるラム肉とモッツァレラチーズの相性がよいことから発案された「ラムモッツァレラ春巻」（写真左）だ。

ラム肉とトマト、ニンニク、タマネギなどで作ったラグーソースを皮に敷き、棒状にカットしたモッツァレラチーズを巻いて揚げた一品。濃厚なラグーソースの中にトマトのほどよい酸味が感じられ、ビールやハイボールが進む味わい。皮は中華メーカー・富強食品のものを使用し、揚げ上がりがパリパリかつザクザクとなり、食べ応えのある食感に。かじるとチーズがピザのように伸びるのも楽しい。

また、季節によって限定メニューも用意。この秋は、エノキ、シメジ、マイタケをクリームソースやマッシュポテト、ベーコンとともに餡にして揚げ、仕上げにトリュフオイルとトリュフ塩をかけた「秋のきのこクリーム春巻～トリュフ風味～」が登場。次々とこれまでの概念を覆すような春巻を提案することで、女性を中心にファンを獲得している。

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