テイクアウト商法は、ここで失敗する~ 「家庭」につながるテイクアウトにチャンスあり【後編】~ - 繁盛の黄金律 -

2017/03/03

神山 泉の繁盛の黄金律

Vol.66
今回の黄金律
テイクアウト商法は、ここで失敗する
~「家庭」につながるテイクアウトにチャンスあり【後編】~

食べる「時」と「場所」と「食べ方」が想定されていなければならない

 前号に続き、テイクアウトの話です。テイクアウトで売上アップができれば、こんなにうれしいことはありません。しかし、たいていは失敗します。当たり前の話ですが、テイクアウトに向く商売と向かない商売があります。そして、外食業のほとんどが「向かない」のです。「できたて」を「その場で」食べていただいて、はじめて価値が生まれるメニューが多いからです。

 ハンバーガーやフライドチキンなどのファストフードチェーンは、売上の半分以上がテイクアウトで占められています。こういう商売は、本業がテイクアウトなのです。イートインはおまけです。「店でも食べられます」という商売です。ですから、商品の開発、設計からパッケージングまで、とことんテイクアウト用に追求されています。

 その追求のカナメは、①経時劣化に耐えられること、②外で食べやすいこと(ハンバーガーもフライドチキンも、片手で食べられます)。この2点です。つまり、この2点をクリアできなければ、“本物のテイクアウト商品”にはならない、ということです。もっとも、家に持ち帰ってから食べるというテイクアウト商品もあるわけですから(この需要が膨らんでいます)、この場合は②の「外で食べやすい」はさほど決定的な条件になりません。①の「時間が経っても、(あまり)味が落ちない」というのが、テイクアウトの絶対条件なのです。

 例えば京都に行くと、料理屋とは別に「仕出し屋」という存在があります。仕出し専門で、店では食べさせません。料理屋と同じようなものを作っているのに、その工程は全然違います。全体に味が濃く作られているのです。つまり、もともと経時劣化に耐えられるように、個々の料理が商品設計されているのです。

 そうざい屋もそうですね。基本的にその場で食べるものではありませんから、飲食店で出される料理の調理法とはまったく違う作り方になっています。

イートインのお客に逃げられたら、立ち直れない

 テイクアウト商品は、「いつ」「どのようなかたちで」食べられるのか、そのフィギュア(像)が想定されていなければなりません。そうなると、おのずとテイクアウトに向く商品と、向かない商品に分けられます。

 ラーメンやうどん、パスタなどのほか、「汁もの」は向きません。汁ものでも、おでんは向きます。また、ピザ、天丼、カツ丼、うな丼、牛丼、すし、おにぎり、弁当なども向いています。フライドチキンはもちろん、ロティサリーチキンなども、パッケージにこだわればテイクアウト商品になります。とはいえ、「じゃあ、うちもやってみるか」と、安易に考えないでください。「テイクアウト向きの商品」はたいてい他の店でもやっていて、すでに競争が激しくなっています。

 また、飲食店が販売するたいていのテイクアウト商品は、コンビニの売れ筋商品という事実があります。コンビニは特に強敵です。コンビニの商品に勝てるのか。まずは、その徹底検証がなされなければいけません。とりわけ価格力ですね。あの低価格を跳ね返すだけの価値あるテイクアウト商品を作れる、という確信が持てなければ、テイクアウトに手を出してはいけません。

 繰り返しますが、もともとテイクアウトに主軸を置き、イートインはおまけの店ではない場合、イートインとテイクアウト用の商品は同じであってはならないのです。喫食の時間差を考えれば、当然、イートイン用とは別の商品設計が必要です。また、保温(もしくは保冷)のための独自のパッケージが開発されていなければなりません。

 そして、いつ、何個売れるのか。それも想定されていなければなりません。一定の作り置きは仕方がありませんが、物販店やコンビニの商品との違いは、「作りたて」あるいは「作りたてに近い」ところにあること。できあがりに近いことが、外食のテイクアウトの商品価値なのです。

 そうなると、イートインとテイクアウトの作業のピークが重なってしまうこともあります。キッチンは大混乱をきたし、客席(イートイン)のお客様に大迷惑をかけてしまします。「急いでいるんだ」「いつまで待たせるのか」というクレームが続出して、お店の人気は急落してしまいます。慣れていないテイクアウトに手を出したばっかりに、あぶはち取らずで、店の人気が急落するケースがしばしば起こるものです。隣の芝生は青く見えますが、ゆめゆめ慣れぬ仕事に手を染めてはいけません。

 それから、テイクアウトのお客には、「待つストレス」がかかります。それは予想以上のものです。いくらできたてを出すといっても、時間がかかりすぎるテイクアウトは「NG」です。また、ウエイティングのお客がいることで、イートインのお客に不快感を与えるようであったら、これも「NG」です。できれば、テイクアウトはイートインと別の作業同線と売り場、窓口を持つべきでしょう。

 生兵法(なまびょうほう=中途半端な知識や技術)はケガの元です。「作りたて(に近い)」にこそ、外食業のテイクアウトのアドバンテージがあること、経時劣化が最大の敵であること、この2点を頭に叩き込んでおきましょう。

 中途半端な気持ちでテイクアウトを始めると、大やけどをします。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
株式会社エフビー 代表取締役
神山 泉
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。
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