更新日:2023.2.19
Vol.65
目次
・郊外のロードサイドで、テイクアウト需要がふくらんでいる
・注文に応じて作るところに、外食業のテイクアウトの強さがある
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郊外のロードサイドで、テイクアウト需要がふくらんでいる
近年、日本人の食行動が大きく変化しています。簡略にまとめると、以下の4つが挙げられます。
- 調理をしなくなった(食の外部化)。
- 食事時間が短くなった。
- お酒を(あまり)飲まなくなった。
- 家族での食事の場でも、各々の好きなものを、勝手に食べるようになった(個食化、混食化)。
商業施設のフードコートなどでは、その変化を目の当たりにすることができます。ひとつの家族なのに、テーブルの上にはラーメンあり、丼物あり、うどんあり、パンケーキありと、テンデンバラバラです。それぞれが好きなものを買ってシェアしながら、せわしなく食事をしている様子は、まさに「混食化」です。ランチだけでなく、夕食でも外部化、簡略化、混食化が進行しています。フードコートは、現在の日本人の食の縮図とも言えるでしょう。調理放棄→食の外部化が、あらゆる食事シーンに進行していることもわかります。
これを外食経営の観点から見ると、テイクアウトやデリバリーのお客が増え、その市場がボリュームを増しているということになります。それも、家庭の食事につながるテイクアウト、デリバリーです。これを「HMR市場」と言います。HMRとはHome Meal Replacement(家庭の食事の代行)の略で、スーパーのそうざい売り場や、外食業ならばテイクアウト、デリバリーが、この市場の“住人”ということになります。今、アメリカのみならず日本でもこの市場がふくれ上がっています。家庭の調理放棄が市場をふくらませたのです。そして、外食業と食品スーパー、コンビニが、この市場をめくって熾烈な争奪戦を繰り広げています。
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ここで、テイクアウトで売上を伸ばしている事例を紹介します。とんかつ業態最大のチェーン「かつや」を展開するアークランドサービスホールディングスが手がける、唐揚げ専門店「からやま」です。郊外ロードサイドの立地で独立店ですが、わずか44坪の規模で月商1,200万円以上を売り上げます。唐揚げだけでこれだけ売るのですから、スゴいですよね。
その売上の4割がテイクアウトです。イートインはいつ行っても満席で、ウエイティングの切れない状態が続きます。テイクアウトコーナーでもお客が切れません。ひっきりなしにお客が来ていて、テイクアウトの単価は1,000円を超えます。イートインの客単価は650円ですから、この店は高単価のテイクアウトで支えられていると言ってよいでしょう。
なぜこれほどにテイクアウトのニーズが高いのでしょうか。それは、この店が家庭の食事とつながっているからです。つまり、昼食や夕食のおかずになっているということです。だからこそ、郊外ロードサイドという立地が重要なのです。車で来店して、車に積んで家に持って帰る。HMRの市場がいちばん取れるのは郊外ロードサイドだということが、まず第一の結論になります。
注文に応じて作るところに、外食業のテイクアウトの強さがある
鶏の唐揚げならば、スーパーのそうざい売り場でもどこでも売っているのに、なぜ「からやま」にお客が集中したのでしょうか。ここを見極めることが、外食業がテイクアウト市場をとるポイントになります。簡潔に言うと「ほかで買うよりもおいしい」ということに尽きるのですが、言い換えれば外食業ならではの武器を駆使し、質の高い商品を開発したことが「からやま」の勝因です。
外食業は必ず調理場を持っていて、そこに調理人(素人の場合もありますが、一定のスキルを持った人です)が存在します。もっともコストがかかるところですが、ここがまさに外食業の心臓部です。いい食材を、注文に応じて、調理場で、調理人が作って、提供する。これは外食業でしかできないことです。スーパーのそうざい売り場にもキッチンがあって調理人がいますが、注文に応じて作るわけではありません。オーダーが入ってから作ることを「ツーオーダー」と言いますが、この「ツーオーダー」こそ外食の強みなのです。
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「からやま」の場合、あつあつのできたてをテイクアウトでも提供しているので、商品に歴然たる差が出ます。家庭に持ち帰って食べてみても、その差ははっきりと出ます。スーパーやコンビニでは手に入らないものを、提供できている。これが「からやま」の勝因です。もちろん、外食のテイクアウトだって時間が経てば味が落ちますが、作ってから食べるまでの時間が短い。ここが差を生むところです。
このようにテイクアウトは外食業の強力な武器となりますが、中途半端な気持ちで手がけると大やけどをすることになります。後編としてこちらの記事では、外食業がテイクアウトで成功するための「押さえ所」について、具体的な話をすることにしましょう。
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