清潔で快適な空間を! トイレのお掃除大作戦 - 特集 -

2018/11/27

清潔で快適な空間を! トイレのお掃除大作戦 忘年会前に店のトイレを見直そう!

飲食店に必ずあり、来店客の多くが利用する場所…それは「トイレ」。忘年会シーズンは数多くの人が訪れるからこそ、美しくキープして、店全体の好印象につなげたい。掃除などのコツを“トイレのプロ”のインタビューと、トイレの清潔感に気を遣っている2店舗の事例で紹介する。

Part 1 汚れや臭いを元から除去 HOW TO お掃除 Part 2 すぐできる小さな気遣い 利用者目線で「おもてなし」 Part 3 CASE STUDY すてきな店の、いけてるトイレ 余裕を持ったゆったり空間。担当による巡回制で除菌を徹底 Part 3 CASE STUDY すてきな店の、いけてるトイレ 目、鼻、耳でも楽しめる。スタイリッシュな書斎風トイレ

洋式トイレ・男性用小便器・和式トイレの汚れポイント

Part 1 汚れや臭いを元から除去 HOW TO お掃除

“トイレでおもてなし”
成田空港も大改修中!

 年末の繁忙期を目前に控え、準備に大忙しの時期。忘れがちだが、新規客が数多く訪れるシーズンだからこそ、トイレにもあらためて注目したい。

 “トイレ研究家”の白倉正子氏は、「現在の日本では、トイレはきれいで当たり前。一歩先の快適なトイレで“おもてなし”を表す時代になった」と指摘する。実際、成田国際空港では、50億円をかけた大幅なトイレのリニューアルが進行中。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えた整備の一環で、すべてのトイレがユニバーサルデザインになるという。白倉氏はその様子を取材したこともあり、「そもそも日本のトイレは“ハイテクでキレイ”と、海外からの関心はとても高い。だからこそ、玄関口である成田空港のトイレのキレイさや最新機能によって、日本の印象は確実にアップすると思います」と語る。トイレはただ“用をたす”だけの場所ではなく、「文化のバロメーター」(白倉氏)の1つになっているのだ。

 飲食店も事情は似ている。トイレが快適な飲食店は、間違いなく好印象だ。ただし、「空港や商業施設などと違って、飲食店のトイレには固有の難しさもある」(白倉氏)。商業施設では、ビルメンテナンスの一環として、トイレもプロが清掃するのに対して、多くの飲食店のトイレ清掃は店のスタッフの仕事である点だ。トイレの数が少なく、狭いという構造上の制約も大きい。

 そうした事情があるにもかかわらず、「多くの飲食店はトイレについて、かなり努力をしていると感じます」と、白倉氏はエールを送る。「20年以上前には衛生的に避けたくなるトイレも多かったですが、現在は、どの飲食店のトイレもそこそこキレイ。温水洗浄便座があり、アメニティが充実している店もあるし、チェック表を貼って小まめに掃除している店、内装や調度品にこだわった美しいトイレがある店も。飲食店のトイレレベルは確実に上がっています。だからこそ、掃除にしてもデザインにしても、もう一歩踏み込んだ“いいトイレ”が必要なのでは」と白倉氏は問題提起をする。

「清潔であること」と
「デザインがいいこと」

 では、飲食店にとって「いいトイレ」とはどんなトイレだろうか。白倉氏は2つの方向性を提示する。1つは「掃除が行き届いていること」、もう1つは「デザイン性が高いこと」だ。

 「飲食店は夢を売る面もあるので、非日常的なデザインのトイレがあっても楽しい」と白倉氏。「でも、いくらかっこいいトイレでも、汚れていれば、かえって興ざめ。逆に、普通のトイレでも掃除が行き届いていれば、十分に気持ちがいい」とも。事実、様々な調査でトイレに期待することを聞くと、上位に入るのは「清潔感」だ。清潔という前提がなければ、美しいデザインも活きてこない。「やはり、いいトイレは掃除に始まり掃除に終わる」と、白倉氏は断言する。

 ただし、トイレに期待されている清潔感のレベルが昔より格段にアップしていることを、忘れてはいけない。飲食店でも、ちょっとリラックスしたかったり、気分をリセットしたいときに、トイレに立つことはよくあり、女性は化粧直しをすることも多い。その期待に応えられる「清潔感」のあるトイレにするためには、「ただ、トイレブラシで擦るだけの掃除では十分ではありません」(白倉氏)。「どこにどんな汚れがついているのか」「取れないにおいのもとは何か」などを掘り下げて、汚れをもとから断つ、質の高い掃除が求められているのだ。

 飲食店の場合、それらを中心的に担うのは、清掃のプロではない店のスタッフ。では、どうしたらよいのだろうか。

お話を伺ったのは…アントイレプランナー 代表 白倉正子氏
群馬県生まれ。多摩大学在学時、卒業論文「トイレ空間をめぐる企業の経営戦略~トイレベンチャー論~」の執筆がきっかけで、トイレの大切さを実感し、トイレの専門家になろうと決意。1996年4月、トイレ専門企画会社「アントイレプランナー」創業。トイレ掃除の修業からスタートし、トイレ全般のコンサルティング・研究などのほか、イベント企画、執筆・講演、テレビ出演(TBS「マツコの知らない世界」〔2012.11.2放送〕出演ほか多数)・取材協力、商品開発・販売、教育など幅広く活動。(一社)日本トイレ協会運営委員、(一社)日本トイレ協会 メンテナンス研究会企画担当幹事、世界トイレ協会 会員。著書に「私の人生は『トイレ』から始まった!」(ポプラ社)がある。夢はトイレのデパートを作り、世界のトイレ問題を解決すること。自宅の「トイレ工房」(トイレの博物館)には様々な便器型グッズや書籍のコレクションが並ぶ。耳のトイレピアスがトレードマークだ。
トイレ用のブラシは大小そろえて、場所によって使い分けると便利
トイレ用のブラシは大小そろえて、場所によって使い分けると便利
汚れがひどいときは、トイレットペーパーに洗剤を含ませ、しばらく放置
汚れがひどいときは、トイレットペーパーに洗剤を含ませ、しばらく放置
便器の脇や裏側のホコリはにおいのもと。面倒がらずに一拭きしよう
便器の脇や裏側のホコリはにおいのもと。面倒がらずに一拭きしよう
便器の内側は、リムの裏側までブラシでしっかりと擦ろう
便器の内側は、リムの裏側までブラシでしっかりと擦ろう
リムの裏側は見落としがち。鏡でチェックし、その日のうちに汚れを撃退
リムの裏側は見落としがち。鏡でチェックし、その日のうちに汚れを撃退
便座の裏は汚れがめだつ。毎日、忘れずに点検し、こまめに拭き掃除を
便座の裏は汚れがめだつ。毎日、忘れずに点検し、こまめに拭き掃除を

くさいのは「大」ではなく、「小」の集積・尿石だった

 まず、トイレはなぜくさくなるのかを知る必要がある。目につく汚れはなくても、油断するとすぐに独特の異臭が漂うのがトイレ。「汲み取り式のトイレのときは“大”の残臭でくさかったのですが、水洗トイレになって“大”が消えてもにおいは残りました」と白倉氏。このにおいの正体が「尿石」。尿の成分が空気や水と反応して、次第に石化したもので、放っておくと菌が増殖し、さらににおうようになる。壁や床に飛び散った尿も同様だ。

 「尿石になってしまうと、市販の中性トイレ洗浄剤では落ちにくくなってしまいます」と白倉氏。効果のない方法で掃除をしても、時間の無駄というほかはない。つまり、「トイレ掃除の鉄則は、汚れをすぐに取り除くこと」(白倉氏)なのだ。また、トイレに限らないが、汚れには「付着」と「固着」がある。付着はついたばかりで、市販の洗浄剤で落ちる。一方、「尿石のように、汚れが取れなくなってしまうと固着。だから固着になる前に、市販のトイレ用酸性洗剤で早めに除去してください。それでも取れない場合には、プロに徹底的に洗浄してもらってリセットするとよいでしょう。その後は、汚れる前(固着する前)に、小まめに清掃するようにしましょう」と白倉氏。プロにリセットしてもらってから、「汚れる前(固着する前に)に取り除くトイレ掃除」を実践すれば、効率的で効果も高い。

短期と中期に分け、ポイントを押さえる

 では、「汚れる前に取り除くトイレ掃除」の極意を見ていこう。まずは、短期と中期に分けて、掃除内容を整理することが大切だ。短期とは日常的な掃除。中期は1週間~1ヵ月に1回の徹底的な清掃。短期の日常清掃で大切なのは、「便器とその周囲のポイントを意識しながらしっかり掃除すること」と、「便器周りだけでなく、床や壁、換気扇、ハンドドライヤーなども忘れないこと」の2つだ。

 まず、便器とその周囲。洋式便器、和式便器、小便器にはそれぞれ汚れやすいポイントがある。上のイラストを参照し、そこを特に念入りに清掃する。「そのときは、道具選びも重要」(白倉氏)だ。市販のトイレブラシは、どれも似たような大きさだが、洋式便器のリム(縁)の奥などはより細いブラシでないと、触れることができない部分もある。白倉氏自身は「ゴルフクラブを選ぶように、掃除する場所によってブラシを変るとよいでしょう」とアドバイス。また、汚物が流れていくトラップ部分は、形状が複雑なので、ブラシが触れない箇所ができてしまいがち。「確かに難しいけれど、ブラシで触れる努力はしてほしい」と白倉氏は言う。さらに、温水洗浄便座は、フタと便座、便器との接合部分に汚れが溜りやすいし、脱臭フィルターは存在を知らず、埃が詰まっていることも多い。取扱説明書を見て、ぜひ行き届いた掃除をしてほしい。

 次は便器以外だ。飲食店では、洋式便器を立位で使用する男性も多いので、床と壁には広範囲に尿が飛び散っていると考えるのが妥当。たとえ汚れが見えなくても、しっかりと拭きとる必要がある。また、見落としがちなのが、換気扇やハンドドライヤー。特に女性用トイレは身繕いのためにほこりが舞いやすく、換気扇に付着しやすい。換気扇が詰まれば消臭効果が下がるし、においを吸ったほこりがにおう。一方、ハンドドライヤーは構造にもよるが、水滴が飛び散ったり、水が溜まったりすると不衛生で見苦しくなる。快適さのために導入した機器によって清潔感が損なわれたら、元も子もない。「導入したら管理する責任が生じることも、忘れてはいけない」と白倉氏は釘をさす。こうした日常的な掃除を、営業前と営業後に行うのが基本。営業中は小まめに巡回して、ペーパーの補充、付着汚れの点検、ゴミの回収を組み合わせるとよいだろう。

 そのほか、洗剤のチョイスも心がけたいことの1つ。汚れの性質によって、効果的な洗剤が違うからだ。例えば、尿はアルカリ性なので酸性系の洗剤が有効。一方、手垢は酸性なのでアルカリ剤で中和するのが基本だ。「酸性剤もアルカリ剤も、弱いものから強いものまで幅広くあるので、使い分けには知識が必要。最近は便器の表面をコーティングする技術もあるので、ご検討ください」と白倉氏は語る。

 以上が短期の日常清掃。「さらに長期として、年1回程度のプロによる点検と清掃、アドバイスを受けると理想的」と白倉氏。プロの目は、長年のトイレの悩みを一瞬で解決することも少なくないという。「近頃は『汚れがつきにくい』と謳う新素材の便器が開発され、飲食店にも広がっています。なお、特にノロウイルスの時期は嘔吐物から感染が広がり、食中毒並みの大問題に発展しかねません。塩素系洗浄剤やゴム手袋・マスク等を常備し、発見時に素早く安全に対処するよう、常に準備をしておきましょう」(白倉氏)。この機会にトイレ清掃を見直し、多くの来店客に好印象を残してほしい。

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