2012/10/10 繁盛の法則

注文ごとに鉄鍋で仕上げる野菜を食べるカレーとは

野菜が主役のcamp代々木本店に学ぶ‐「野菜を食べるカレー」と銘打つ「camp代々木本店」。看板メニューは1人前に野菜12品目以上、計350g以上を使う「一日分の野菜カレー」で客の60%が注文している。

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camp代々木本店

JR代々木駅から徒歩3分ほどのビルの地階にあり、女性客が約7割を占めている。

Key Point

  1. 看板商品「一日分の野菜カレー」を開発
  2. 注文ごとに調理し、ライブ感を演出
  3. アウトドアをテーマに雰囲気作りを工夫

自動車メーカー勤務から転身。ヘルシーで活気のあるカレー店を企画

「野菜を食べるカレー」と銘打ち、2007年3月14日にオープンしたcamp(キャンプ)代々木本店の看板メニューは、1人前に野菜12品目以上、計350g以上を使う「一日分の野菜カレー」990円である。トマト、オクラ、シシトウ、ナス、タマネギ、ジャガイモ、カボチャなど、季節の野菜をオーダーごとに炒め、炒めダレと呼ぶ独自のスパイシーなペーストを加える。さらに野菜スープを入れてひと煮立ちさせ、1品1品仕上げている。この一日分の野菜カレーは、同店の常連客とのやり取りから2008年末に生まれた商品で、今や注文の60~65%を占めている。

「野菜を中心とするインドカレーは本来的にヘルシーですし、クローブやターメリックなどのスパイスは漢方薬としても使われています。また、オーダーごとに調理するところを見せれば、ライブ感も出る。ヘルシーで、エンターテインメント性がある、楽しいカレーショップというのは、もともとアメリカ向けの商品企画的な切口で作り上げたコンセプトでもあったのです」と、経営者である株式会社バックパッカーズの佐藤卓代表は語る。佐藤氏は1967年、埼玉・浦和生まれで、大学卒業後の1991年~2005年は日産自動車に勤務し、1998年から2002年はアメリカ・ロサンゼルスに駐在した。その際にアメリカの日本食市場にも興味を持ち、寿司に続く有望なアイテムとしてカレーに注目するようになった。帰国後は、アメリカ向けのオフロードカーなどの商品企画に携わったが、サラリーマン生活が長くなるにつれ、佐藤氏はこの辺で一区切りをつけ、今まで一度も経験したことがなく、かつ自分が好きなことにチャレンジしたいと一念発起し、食の世界に飛び込んだ。

とはいえ、調理経験のなかった佐藤さんは、まず、「スープストックトーキョー」を展開する株式会社スマイルズが当時経営していたカレー店「トーキョールー」で約2年修業した。その間、日本のカレー専門店も市場調査し、とろみのあるカレーをご飯にかけ、さっと食べるカレーショップは、女性には敬遠されがちだと気づいた。

「ヘルシーでライブ感があるカレー店にすれば、女性が来てくれるのではと思いました。しかもそれは、まったく別な発想から考えていた、アメリカでカレー店をやったらおもしろいのではないかというコンセプトとも合致していたのです」と佐藤氏。トーキョールーを退社後、3カ月間と決めて物件を探し、その中でベストと見た10坪24席の現物件で独立開業を果たした。

「一日分の野菜カレー」990円。350g以上の野菜類を使ったカレーが鉄製の小型フライパンに盛られて提供され、ライス(普通盛り200g)と、薬味としてトマト風味のサルサがつく。スコップ型のスプーン、ステンレスカップ、飯ごうなど、食器類でもキャンプの雰囲気を演出。

常連客とのやり取りで誕生した「一日分の野菜カレー」でブレーク

自信満々でオープンした佐藤氏は、ナスのカレー、ジャガイモのカレーなどを提供し始めたが、当初のお客の反応は「これは炒めものだろう、カレーじゃない」と冷ややかだった。売上げも伸び悩んだが、熱烈な常連客がポツポツとでき、なかでも「このカレーはうまい。考え方もおもしろい」と、夫婦で毎日来店してくれるKさんに励まされた。ある日、農家から多種類の野菜をもらった佐藤氏は、Kさんにいつもと違うカレーを食べてもらおうと、鍋に入るだけの野菜を入れてカレーを作った。Kさんは「これは絶対に看板メニューになる」とほめてくれ、野菜の重量を量ると、厚生労働省が1日の野菜摂取量として推奨する350gもあり、「一日分の野菜カレー」が誕生した。以来、すべての歯車がかみ合うようになり、現在は客単価1,050円で平均月商400~450万円を上げている。

同店がヘルシーさとエンターテイメント性のあるユニークなカレー店として認知度を上げてきた要因は、以下のようになるだろう。

1一日分の野菜カレーという、ヘルシーさを強力に訴求する看板商品を開発している。
21品1品調理し、ライブ感を演出している。
3アウトドアをテーマに、店内の装飾や器使いにも独自性を出している。

また、同店のカレーのユニークさに注目したJR東日本グループから声がかかり、同グループとの業務提携による「camp express(キャンプエキスプレス)」池袋店を2010年に、品川店を2011年に、いずれも駅構内に出店している。池袋店は山手線のホームの真下、品川店は構内商業施設のエキュート品川サウスの一角にあり、さすがに商品の提供スピードも求められる。そこで、商品内容や調理方法、価格は変えることなく、提供の仕方を工夫し、campとロゴを入れたオリジナルフライパンをつくり、カレーとライスをいっしょに盛って提供するスタイルとしている。さらに今年10月31日にはJR西日本グループとの提携で大阪駅構内に出店予定で、その後もJRや私鉄とのタイアップで5店ほどの出店計画が進んでいる。同時に、佐藤氏自身が当初に描いた、いずれチャンスがあればアメリカにカレーショップを出したいという大きな夢も、心の中でしっかりと持ち続けている。

住所
東京都渋谷区千駄ケ谷4-29-11、B1F
TEL
03-5411-0070
営業時間
11:00~23:00(L.O.22:30)
定休日
日曜